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在庫取り崩し、制裁代替原油、需要減退

本稿では、ホルムズ海峡を通過する原油輸送の混乱がもたらす影響と、供給不足への対応策について検証する。(2026年4月14日発行)


米国とイランは週末の協議で合意に至らず、米国はイランの港湾を全面封鎖すると発表した。

これにより、2026年4月8日から開始された2週間の停戦はさらに不安定化している。(2026年4月14日時点)仮にこの措置が実行されれば、ホルムズ海峡の航行は完全に停止する可能性があり、イラン自身も他国船舶の通航を阻止する動きに出ることが想定される。情勢は依然として流動的であり、多くの船舶オペレーターは様子見姿勢を取り、中東湾岸への入域を遅らせると見られる。


紛争開始以降、ホルムズ海峡は大半の期間で実質的に通航が大きく制限されている状態が続いており、2025年平均ベースで日量約1,770万バレル(イラン産を除く)の主要な海上輸送原油が市場から失われている。さらに、米軍によってイラン産原油の供給も遮断された場合、追加で日量180万バレルの供給減となり、主に中国の輸入に影響が及ぶ見込みである。世界は前例のない規模の供給喪失に直面しており、他地域からの追加供給ではこの不足分を十分に補うことはできない。


ここ数週間、ホルムズ海峡外からの海上原油積み出しは、海峡内の供給不足を補う目的で急増している。4月12日までの週では、2025年水準を日量1,100万バレル上回る水準に達したが、それでもパイプラインによる迂回輸送や、大西洋圏における精製稼働増加に伴う製品輸出の増加を加味しても、依然として日量約770万バレル、すなわち世界需要の約7%に相当する純減が発生している。この水準が持続可能かどうかは不透明であり、補填の多くが増産ではなく在庫取り崩しによるものである点にも留意が必要である。日本では、備蓄から製油所への原油移送といった国内フローの増加がその一例として確認されている。


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左図: 2025 seaborne oil exports (excluding from Iran) via the Strait of Hormuz by product (mbd) | 右図: Seaborne weekly oil liftings from outside the Strait of Hormuz (mbd)


供給不足には複合的な対応が必要

今回の供給不足は、ホルムズ海峡経由の主要輸出品である原油、LPG、ナフサの大半がアジアの製油所および石油化学プラント向けであることから、特にアジアに大きな影響を及ぼしている。これらの原料供給が途絶した場合、アジア各国は製油所の稼働率を引き下げるか、在庫の取り崩しによって対応する可能性が高い。


供給不足への対応策としては、石油在庫および戦略石油備蓄の取り崩し、大西洋圏からの代替供給の確保、制裁対象原油の海上在庫の吸収、石油製品の代替利用、そして石油製品需要の減退といった手段が考えられる。アジア各国の政策当局は、週4日勤務や在宅勤務の導入など、石油消費を抑制する施策を打ち出しており、これによりガソリンおよび軽油需要の減少が加速している。また、特にベトナムなどでは燃料価格の高騰が長距離移動需要を抑制している。


さらに、各国政府はエタノール混合ガソリンやバイオディーゼルの導入比率引き上げといったバイオ燃料の活用を進める可能性があり、加えて発電分野では石油に代わるエネルギー源の活用も検討されている。


海上にある制裁対象原油の吸収は数年ぶりの高水準に

ロシアおよびイラン産原油に対する最近の制裁免除/猶予を受けて、中国およびインドの製油所は中質・高硫黄原油の不足を補うため、ロシア産原油およびコンデンセートの調達を拡大している。この調達拡大により、ロシア産原油の海上在庫は3月1日以降で約6,000万バレル減少し、ロシア・ウクライナ戦争開始時の流通再編期以来の3年平均水準まで低下している。これは日量約150万バレルの追加供給に相当し、ロスネフチおよびルクオイルに対する米国による二次関税および制裁リスクによって生じていた供給余剰は、3月の輸入が過去最高水準に達したことで市場に吸収される見通しである。


イラン産原油の海上在庫についても、市場の需給逼迫を背景に4月以降取り崩しが進む見込みである。VLCC「JAYA」はインドのパラディップ港でイラン産原油を荷揚げすると見られ、これはインド製油所による原油調達再開(2019年5月以来)を示唆する動きである。中国もまた、中小規模製油所に対して約6,000万トンの追加輸入枠を付与しており、これによりこれら原油の中国港湾での荷揚げが加速する可能性がある。イラン産原油もロシア産と同様に、4月以降はインドおよび中国の製油所によって吸収が進む見込みであり、中質・重質原油の供給逼迫が一層強まる中でその傾向は顕著となると考えられる。


一方、主要な海上原油については、中東での積み出し減少により3月に大幅に減少したが、大西洋圏から太平洋圏への長距離輸送の増加により、足元ではやや回復している。


今後は、アジアおよびその他地域において、戦略石油備蓄の放出や商業在庫・民間在庫の取り崩しによって不足分を補う必要がある。これまでに32カ国による協調的な約4億バレルのSPR放出が実施されているが、現在の供給不足規模を踏まえると、この量はわずか1カ月強しか持続しない計算となる。


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左図: Crude/condensate on water by selected origin (mb) – Russia and Iran (LHS) and the rest of the world (RHS) | 右図: Global (excluding China) onshore crude inventories (mb)


アジアの在庫取り崩しは4月に加速する見込み

アジアの主要な原油・コンデンセート輸入国上位10カ国はいずれも供給減少の影響を受けており、特にインドと日本では3月の輸入量が前年比で大きく減少している。ただしインドは、陸上原油在庫の取り崩しによって輸入減少の一部を補い、製油所稼働率の低下を一定程度抑制している。


韓国および中国では3月に在庫積み増しが見られ、これは長期的な供給混乱を見据えた製油所稼働率の大幅引き下げを示唆している。また、両国はいずれも国内需要を優先するため、石油製品の輸出制限措置を早期に導入した国でもある。


4月には、中国を除く北東アジア諸国において原油輸入が前年比で約50~70%減少すると見込まれており、日本では約70%の減少が予想されている。日本、韓国、台湾におけるホルムズ海峡経由の原油・コンデンセート輸入は、2025年平均の日量390万バレルから、直近2週間では80万~110万バレルへと急減している。


原油・コンデンセートの輸出入動向を2025年平均と比較し、さらに陸上在庫の取り崩しを加味することで、アジアにおける原油処理量の変化を推計することが可能である。中国は3月に大規模な在庫積み増しを行った結果、製油所稼働率の減少幅が最大となったが、ホルムズ海峡以西(イランを除く)で約310日分に相当する原油備蓄を有しており、長期的な供給混乱にも対応可能な体制にある。


一方、中国を除く北東アジア諸国では、輸入不足を補うため今後数週間で在庫取り崩しが加速する可能性が高い。日本では主要備蓄拠点から製油所への原油移送が進んでおり、国内輸送量は週次ベースで過去最高の145万バレル/日に達している。

韓国では、戦略石油備蓄から原油を一時的に借り入れ、後日返却する「原油スワップ」が認められている。


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左図: Asia implied crude throughput change based on crude import/export changes vs 2025 baseline and onshore crude stocks (mbd) in Mar and onshore crude inventory changes in Mar (mbd) 右図: Top 10 Asian countries crude/condensate imports in Apr-26, Mar-26 and 2025 average (mbd)


最終的に、世界の石油市場は前述の複数の手段を組み合わせることで需給均衡の回復を図る必要がある。短期的には、各国が物々交換やイランとの関係強化といった柔軟な手法を通じて供給確保を模索する動きも見られている。

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