清水 大阪も辛坊治郎氏のような極端な主張をする人がテレビに出ていて、残念ながら影響力が小さくない。『そこまで言って委員会』もそうですが。作家の百田尚樹氏は大阪ではあまりウケていないですね。大阪の人もテレビに出ているから見ているだけで、『永遠の0』を書いた人というたら、ああというくらいではないですか。
適菜 最近はネトウヨに毛が生えたくらいの物書きが多いでしょう。某メルヘン作家に関しては毛さえ生えていませんが。
っちにしても外人や」と。百田は『日本国紀』に書かれていることはすべて事実と言っていましたが、こんな感覚で書かれた事故本を読んだら、日本史の試験は赤点です。
清水 受験生にとってはいい迷惑ですね。
適菜 私は言論の自由は絶対に守るべきだと思っています。百田の思想がどれだけ歪んでいたとしても、その言論活動は守らなければいけない。それを阻害する動きがあれば、私は百田の側に立って戦います。しかし、世の中にデマを垂れ流す自由はありません。あれだけデタラメな本を市場にばらまいておいて回収もしないのはテロに等しい。
清水 安倍の歴史観も歪んでいます。安倍は、あの戦争が侵略戦争だったかどうかは、後世の歴史家が判断すると言いますが、「戦後、何年たってんねん」と思います。敗戦直後にそのセリフを言うなら許容範囲ですが、戦後七〇年以上たって、戦争の性格について彼は答えないわけです。外務省や内閣府が編纂した資料には、侵略戦争だったと書いてありますし、そもそも、ポツダム宣言に世界征服のための戦争だったと記述されているわけです。それを受諾しているわけですからね。
適菜 二つの論点があります。第一点はそもそも安倍は歴史を知らないんです。安倍は「ポツダム宣言というのは、米国が原子爆弾を二発も落として日本に大変な惨状を与えた後、『どうだ』とばかり(に)たたきつけたものだ」という言葉を残していますが、ポツダム宣言は七月二六日。広島と長崎の原爆投下の日付は小学生でも知っているでしょう。要するに、義務教育レベルの知識がすっぽり抜け落ちている。国会でポツダム宣言に書かれた歴史認識について質問されると、安倍は「その部分は、つまびらかに読んでいない」と答えています。
清水 戦後レジームからの脱却とか言いながら、戦争に関する重要文書さえ読まないんです。
適菜 第二点は安倍の「歴史は歴史家が判断すべき」という発言は正しいと思います。
清水 そうですね。
適菜 ただ、河野談話が作られた経緯はかなり怪しい。要するに、自民党と韓国政府が政治的判断で歴史を確定させたという経緯があります。慰安婦の強制連行はなかったとネトウヨみたいなことを言いたいわけではないですよ。ないことの証明はできませんし。もっと違う次元の話です。当時河野洋平は韓国側とのすりあわせはしていないと大嘘をついていた。自民党が調査した結果、証拠は出てこなかった。証拠がないということと、強制がなかったことは別の話ですから、それこそ検証を続ければいいだけの話です。しかし、証拠がないのに河野談話を通してしまったわけです。これは政治の越権です。歴史に対する罪です。歴史修正主義がどうこうと騒ぐ左翼に限って、こうした歴史の修正には口をつぐんだりする。日韓合意で一〇億円を韓国に流した件についても、時の政権が不可逆的に歴史を確定させようとしたわけで、強い違和感があります。
清水 一九六五年に日韓基本条約を締結して、当時のカネで一八〇〇億円くらいを経済支援して、それで韓国経済もよくなった。ただ、その時点で判明していない問題が将来発生したら、解決するためにお互いに努力するという取り決めがあった。元慰安婦だった人たちも、家族や子供の手前、自分が慰安婦だったと言えないということで、条約を結ぶときには、俎上に上らなかった。だから、日韓両国が向き合うのは正しいと思っています。ただ、朴槿恵が当事者の意見を聞かずに、日本政府と合意して一〇億円の基金を受け取ることを決めてしまった。
適菜 国連事務総長だった韓国の潘基文は「日本に一〇億円を返せ」と言いましたが、私はそれに賛成したんです。文在寅もあれは間違いだったと認めています。