『同期のサクラ』
日本テレビ/毎週水曜 夜10時放送
“2009年、春。「故郷に橋をかけたい」という夢を掲げた北野桜(高畑充希)は大手ゼネコンに入社。希望の土木課にはいけず、思ったことをところ構わず口にしてしまう実直な性格ゆえ、関連会社に出向させられてしまう。そんなサクラの同期は、月村百合(橋本愛)、木島葵(新田真剣佑)、清水菊夫(竜星涼)、土井蓮太郎(岡山天音)。サクラを中心とした社会人の葛藤や歓喜が描かれていくのだが、2019年の現在。サクラは病院の意識のないまま、病院のベッドに寝ている−−−”
このドラマは設定、演出が特徴的であることがスタート前に話題になった。第一話は2009年、第二話は2010年……と、新卒入社から32歳まで、5人の同期やその周辺の人々を一年一話でさかのぼっていく。今夜放送の第七話では2015年のサクラたちが登場する。普通のテレビドラマであれば、少しずつ歳を重ねていく様子が描かれていく、逆バージョンであるわけだ。
テレビドラマは深夜ドラマやウエブ配信、CS放送も含めて数多の作品が日々放映されている。私はそのすべてを追っているオタクなのだけど、普通の人はそこまで見るわけがない。何かギミックがなければ視聴者は離れていく。今回の内容を聞いたときに、この演出も仕掛けの一環なのかと構えていた。
それが視聴を始めると、毎週エンディング10分くらい前で泣いている。わりと泣き上戸だけど、それでも1作品で泣くのも珍しい。これは共有したい。グッとくるポイントを伝えたい。そんな気持ちでこの原稿を書き始めた。あなたは最近、泣いたことを覚えていますか?
まずはこの作品の大テーマである“サクラの真っ直ぐさ”。社長、国家公務員、著名人でも臆することはない。そうやって社内でも一切、忖度をしないで発言を続けていたら、いつの間にか子会社に飛ばされている。
そしてマイペースと真っすぐさの間に揺れるサクラ。彼女が正しいのかどうか分からなくなってくる。彼女は、故郷に橋を掛けたいという夢を会社に賭けただけなのに。夢を叶えたいなら、自分を偽れしかないのは物悲しい。
サクラの気持ちがすごくわかる。私も親の教育が良かったのか悪かったのかは謎だけれど、
「はっきりとモノを言いますよね」
「すごく気持ちよく発言しますね、小林さん」
「はっきりモノを言いすぎるから敵を作りやすいんだよ!」
そんな風に言われてきた。さすがに40代なので手加減はできるようになったけれど、団体行動が向いていないと気づき、フリーランスの道を選んで『真っ直ぐにモノを言う』ことは、自らの防御策になった。
真っ直ぐすぎてしまうサクラを支えているのは、また涙腺が緩むポイントの“同期”である。同期とは特別な存在で、学生時代の馴れ合いも家庭環境も、文化も違う。未来永劫、ライバルであり、仲間。そして愛おしい人たち。
「一生、信じ合える仲間を作ることです」
入社時にサクラが掲げていた夢のひとつだ。この仲間となった4名が、仕事に悩み、恋愛にほだされる様子が楽しい。いや、自分の社会人デビューの頃と照らし合わせて懐かしくなってしまう。そしていつの間にか応援している。
出会った当初は言いたいこと……いや、本当は言うべきことをズバズバと発言していくサクラに辟易する4人。時間が経つに連れて、真っすぐさに惹かれ、本音を口にしていく。ああ、だから第一話で4人が
「通行の邪魔なんで人のいないところでやってもらえますか?」(百合)
「みんな仲間なんだし、写真を撮りませんか?」(菊夫)
「まずいです、ひじょ~にまずい」(蓮太郎)
「私には夢があります!」(葵)
とサクラの口癖を言っていたのか。
そして涙の最終兵器は“じいちゃんからサクラに届く格言”である。耳が悪いことを理由に毎日、FAXでやりとりを続ける二人。サクラの性格の原点、ここにありと思わせるほど、心撃つ言葉が流れてくる。
『自分の弱さを認めることだ』
『勝ちより価値だ』
『辛い時こそ、自分の長所を見失うな』
これ名言集にして出版した方がいいと思う。どんな生き方がいいのか、人は一生迷う。立ち止まったときに、振り返って何かがあるのならこんな言葉に寄り添いたくなる。そういう涙腺崩壊ポイントが詰まったドラマなのだ。子供からお父さんたちまで、何か胸に伝わるものがどこかに潜んでいる。
ちなみに私は第六話で公開された
『人生で一番辛いのは自分にウソをつくことだ』
に、感化された。なので、今夜も飲みに行こうと思う。