写真:ZUMA Press/アフロ

 ベッキー・川谷絵音の「ゲス不倫」騒動から、まる4年が過ぎた。スクープしたのは16年1月7日発売の「週刊文春」だが、それを察知したベッキーが前日に記者会見で「お付き合いということはなく、友人関係」と弁明。

しかし、翌週の同誌には川谷の妻のインタビューが載り、さらにその翌週号であのLINEのやりとりが公開された。

ベッキー「友達で押し通す予定!笑」
川谷「逆に堂々とできるキッカケになるかも」
ベッキー「 私はそう思ってるよ!」
川谷「ありがとう文春!」
ベッキー「センテンス スプリング!」

 会見前日に交わされていたこの会話が致命的なイメージダウンをもたらし、ベッキーは翌月から休業。ふたりは破局する。また、川谷は離婚を経て、同年10月、未成年タレントとの飲酒デート発覚により活動を休止した。

 とはいえ、4年も過ぎればある程度ほとぼりも冷める。この年末年始はテレビで、ふたりの姿をちょくちょく見かけた。

 まず、川谷はゴーストライター騒動の新垣隆らと組んでいるバンド・ジェニーハイとして「FNS歌謡祭」第2夜(12月11日)などに登場。さらに、役者業にも挑戦して「ドクターX~外科医・大門未知子」9話(12月12日)にゲスト出演した。米津玄師と川谷自身をモデルにしたような人気ミュージシャンで、痔の患者でもあるマヌケな役だ。「週刊誌とかに入院してるとこ撮られたら、すっげえ嫌なんですけど」などと自虐的な台詞を言わされていた。

 一方、ベッキーは1月4日の夜「クイズ!ドレミファドン!2020」と連ドラ「悪魔の弁護人 御子柴礼司」(これはレギュラー)に出演。翌朝のNHK「あなたも挑戦しませんか 新絶景タイムスケイプ」ではサブMCを務め、この10数時間についてはまるで全盛期のような露出ぶりだった。

昨年11月には、騒動によって発生したCM違約金5億円を自腹で返済していたことも報じられたし、同年1月にプロ野球・巨人の片岡治大コーチと結婚して今春には子供も生まれる予定だ。

 しかし、これでめでたしめでたしとはいかないところがこの騒動のややこしさである。川谷もそうだが、ベッキーがテレビに出ると必ず一定数のアンチの声がツイッターなどで沸きあがる。「ドレミファドン」でも、象徴的なシーンがあった。イントロクイズでB'zの「ultra soul」が流れた際、他のゲストに正解されてしまい、こう悔しがったのだ。

「(現役時代の)登場曲なんですよ、旦那さんの。

当てたかったぁ。(片岡にひとことと言われ)ごめーんね!」

 これに対し、ネットでは「何が旦那だよ」「川谷の元嫁と同じ苦しみを味わえよ」といったツッコミがもはや条件反射のように入れられていた。

 これならいっそ、川谷の曲(ゲスの極み乙女。の「私以外私じゃないの」とか)が出題されて、彼女が答えるかどうか、などといういじり方をされたほうが、ネタとして消化できるかもしれない。ただ、彼女サイドがNGなのか、テレビ局が忖度したのか、川谷の曲は一度も流れることはなかった。とまあ、この番組に限らず、不倫騒動以降のベッキーは何かともやもやさせる存在なのだ。

 それもこれも、あの騒動のインパクトが大きすぎたからだ。「ゲス不倫」「ゲスノート」「ゲスの呪い」といった、キャッチーなワードと展開の数々。そして、ここから「文春砲」の進撃が始まり、数多の有名人が不倫の名のもとに公開処刑された。いわば、歴史を作った騒動であり、世間に忘れろといっても無理な話なのである。

 そういえば、騒動の前の年だったか「世界の果てまでイッテQ!」でベッキーが自分には代表作がないという悩みを語り、デヴィ夫人に「あなた、眼鏡のCMがあるじゃないの」と慰められたりしていた。幸か不幸か、今では「ゲス不倫」という代表作ができてしまったわけだ。

 もっとも、自分が世間をもやもやさせる存在だということは本人だってわかっている。11月に「ごごナマ」に出演した際、阿部渉アナに「ベッキーさんといえば、このイメージではないでしょうか。元気!」と話を振られると、

「ほんとですか? もう、そんなイメージないかなと思ってたんですけど」

 正直、戸惑いを見せていた。そこで、船越英一郎が「今日もずっと僕ら、元気もらってますよ」とフォローしたところ「お優しい」と、頭を下げながらひとこと。その流れで、かつて有吉弘行がつけた「元気の押し売り」というあだ名の話も出たが、もはや押し売りする「元気」もない状態だ。

 ちなみに、有吉の数年前、ギター侍こと波田陽区は彼女のことをこう斬った。

アンタは元気とウザイのハーフですから」

 その「元気」が消えて「ウザイ」だけになったのが、騒動後のベッキーなのかもしれない。

 では、彼女はいつになったら全面的に許されるのか。いや、そもそも、許されるときは来るのか。その答は、限りなくNOだ。不倫をした有名人は主婦に嫌われるが、いまやそれだけではない。恋愛も結婚もままならない「おひとりさま」系の女性にも憎まれる。つまり、世の女性のほとんどから敵視される対象なのである。

 同じことが、矢口真里にもいえる。こちらは不倫騒動から3年後にカップヌードルのCMに出て自虐ネタをやったところ、クレームが殺到。そのCMはわずか8日で打ち切りとなった。不倫相手と再婚して出産もしたが、ママタレの枠にも入れそうにない。

 ベッキーの場合は、別の相手との結婚とはいえ、自由奔放にやっている印象を抱く人は多いから、幸せのアピールはやはりマイナスでしかないだろう。また、最近はSNSの発達で、アンチの反応もどんどん示され、可視化されてしまう。これにより、世間はスキャンダルを起こした有名人に対し「消す」快感に加え「叩き続ける」快感を得やすくなった。そこに味をしめたのだ。

 とはいえ、ここから大逆転をするチャンスもなくはない。羽生弓弦クラスの優秀なイケメンを産み、育てるというウルトラCだ。最低でも10年以上かかるが、名誉回復にはそれくらいしかないだろう。

 それにしても、ベッキーはかつて、もっぱら好感度という漠然としたものだけでバラエティやCMの世界に君臨していた。それゆえに転落の幅も大きかったわけだが、人気という尺度で生きる芸能人の儚さも感じられ、趣き深い。

 儚さといえば、18年に主演したBSテレ東の時代劇『くノ一忍法帖 蛍火』では、江戸時代を舞台に混血の女忍びという宿命を抱えて戦う姿が意外とよかった。お約束の入浴シーンでは「また穢れてしまった」という意味シンな台詞を言わされていたものだ。そんなことなど、しみじみと思い出すゲス不倫騒動4周年である。