仕事の出来不出来に学歴は関係ないと断言する林先生。では、林先生の考える仕事に必要な能力とは?
自分にない能力を持つ人と「チーム」を組むのもアリ

 様々な仕事があるので簡単には言えませんが、多くの仕事において、少なくとも以下に述べる二つの能力は重要だと思います。

1つは、論理的思考力。もう1つはコミュニケーション能力。

 まず、論理的思考力ですが、論理的思考力、特に数学的な能力が高ければ、複雑に見える事象を、単純な要素に還元して、的確に整理することができます。こういう能力が不足していると、どうしても「情緒」に流されがちです。最近アメリカで数学者が特に優遇されているのも当然でしょうね。それだけではありません。
 昨年末に「林先生が驚く初耳学」という番組に、高校の先輩でもある世界的な数学者の森重文先生に出ていただきました。先生は、日本でたった三人しか受賞していない、数学のノーベル賞と言われているフィールズ賞を受賞されていて、現在は国際数学連合の総裁も務められています。その際に先生は「変化の激しい現代では、経験が役に立たたない。だから、論理しかない」という趣旨のことをおっしゃいました。論理的思考力は、こういう時代においては未来を切り開く創造につながることを、改めて認識しましたね。

林修が重要視する、仕事に必要な“二つの能力”とは?の画像はこちら >>
写真/花井智子

 もう一方のコミュニケーション能力ですが、人と「つながる力」はやはり重要です。

芸能界で活躍されている方々は、この能力が高い方が多いですね。たとえば、出川哲朗さんはその典型でしょう。上手に自分を抑えつつ、すーっと相手の懐に飛び込む。本当にすごいなぁって思います。

 両方を兼ね備えていることが理想ですが、なかなかそうはいかない。より適性が高いのはどちらかを見極めて、それを磨き上げていく一方で、自分にない能力を持つ人と「チーム」を組むのも一つの方法です。

 さらに考えておかねばならないのは、周知のとおり、AI(人工知能)がとんでもないスピードで進歩しているという事実です。自分が一生懸命訓練していることが、数年後にはAIがごく簡単にやってしまうかもしれません。そうなったら、自分のスキルは社会では必要とされないということも起こります。たとえば将棋や囲碁は、もはやAIがプロさえもしのいでいると言われているではありませんか。
 そんなAIでも東大入試には白旗を揚げたそうです。つまり、まだまだ弱いところがある。

その弱点を見つけていく目を持つことも、これからの時代は必須と言えるでしょうね。もっとも、人間がAIを進歩させているから、この程度なのであって、AIにAIの改善をさせるようにしたら、あっという間に東大にも受かるようになるとも思えるのですが。
 

明日の第二十二回の質問は「Q22.座右の銘は何ですか?」です。
※この記事は2月15日(水)までの限定公開です
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