人口は減り続け、誰もが洗濯機を所有しているにもかかわらず、街角の「コインランドリー」の数は、ここ20年間で増え続けている。
厚生労働省が発表した「コインオペレーションクリーニング営業施設に関する調査」によれば、2013年のコインランドリー店舗数は1万6693となっている。
なぜ、今もコインランドリーが増え続けているのか。同誌編集長の中澤孝治さんは、次のように語る。
「13~14年頃から、コインランドリーは投資ビジネスとして注目を集めるようになりました。当初は利回り20%とも言われていましたが、競合店の増加に店舗経営の難しさも相まって、今は10%あるかないか、といったところです。設備投資に2000万~3000万円かかるため、『人件費をかけずに簡単に儲けよう』という発想だけでは、なかなか難しいものがあります」(中澤さん)
投資ビジネスとしてだけでなく、近年は本業のリスクヘッジ、つまり企業が“副業”としてコインランドリーを始めるケースが増えているという。コインランドリーのチェーンと手を組み、書店やカー用品などの既存店舗の駐車場の空きスペースに開業するという併設タイプも目立っているそうだ。
「本業の店のユニフォームをコインランドリーで洗濯し、空いた時間に客に利用してもらえるという側面もあります。また、コインランドリー単体では人件費の問題で常時人を置くのは難しいですが、併設型であれば必要に応じて人員を配置し、コインランドリーを利用するのが初めてという人に使い方を案内することも可能になるのです」(同)
主婦など女性客をターゲットに特に客足を集めているのが、需要の変化を敏感に捉えたコインランドリーだ。
「アレルギー対策として寝具のケアに注目が集まっており、布団などの大物洗いの需要が増えています。高層マンションでは、景観や安全性の問題で外干し禁止になっているケースもあるようです。
かつてコインランドリーといえば銭湯の横に併設され、主に単身男性が暗い顔で洗濯が終わるのを待っている施設……というイメージがあった。それが、近年では共働き世帯の増加も相まって、主婦などの女性客をターゲットにした店舗が増えているそうだ。
「店内の掃除が行き届いていることは、入りやすさの重要なポイントです。また、大物洗いの場合はクルマでの利用がメインになるので、特に郊外型店舗では駐車場の広さや停めやすさも店に通う決め手になっています」(同)
特徴的な「進化系ランドリー」も最近、特に増えているのはカフェ併設型店舗。というのも、最新の設備は洗濯機単体よりも洗濯乾燥機がメインで、洗濯から乾燥まで利用すると小1時間かかるため、その間にカフェでゆっくりしてもらおうというわけだ。
なかでも「進化系ランドリー」と呼ばれる、特色を打ち出したコインランドリーが人気を博している。東京都目黒区の「フレディレック・ウォッシュサロン」は、ドイツ発祥のサロン2号店だ。店内のおしゃれな世界観もさることながら、オリジナルのランドリーグッズを販売するショップコーナーがあり、コーヒーをゆっくり楽しめるカフェラウンジも備えている。単に洗濯する場所以上の、地域のコミュニティとしての機能も持っているようだ。
新たな広がりを見せているコインランドリー市場について、「まだ伸びる下地はあると思います」と中澤さんは言う。
「ほとんどのコインランドリーでは熱源にガスを使用しているため、タオルや毛布は家で洗うよりもふんわりと気持ち良く仕上がりますし、『干したり、取り込んだりするのがつらい』という高齢者の方の受け皿になれる可能性は十分にあります。店内が明るく利用しやすい店が増えたことを、もっと広く知ってもらいたいですね」(同)
これまではクリーニングに出すのが当たり前だった布団や靴などを安く洗うことができ、一度に大量の洗濯と乾燥ができるため、まとめ洗いで家事時間が短縮されてゆとりも生まれる。
(文=松嶋千春/清談社)