高齢化のスピードが止まらない。
敬老の日(9月16日)にあわせて総務省が発表した「統計からみた我が国の高齢者」によると、総人口に占める65歳以上の高齢者人口は3588万人と、前年に比べ32万人増加、総人口(1億2617万人)に占める割合は28.4%となった。
ポイントは約800万人とされる「団塊の世代」(1947年から49年生まれ)である。この世代を含む70歳以上人口は2715万人。前年比0.8%増で総人口の21.5%を占める。5人に1人が70歳以上なのである。
問題は団塊の世代が後期高齢者(75歳)となる2025年である。65歳以上の割合がついに30%に達し、75歳以上は17.8%、80歳以上が10.9%となっていくとみられる(日本の将来推計人口=国立社会保障・人口問題研究所)。国民のほぼ3人に1人が高齢者、5.6人に1人が後期高齢者という超高齢社会となる。
一方で、年金だけでは暮らしていけないから、高齢者になっても働かざるを得ない現実が待ち構えている。65歳以上の高齢就業者は15年連続で増加し、2018年には過去最多の862万人となった(労働力調査=総務省)。
約24%の高齢者がなんらかのかたちで働いているのだ。年齢階層別にみると65~69歳は46.6%、70~74歳は30.2%、75歳以上で9.8%となっている。
高齢化が急ピッチで進む中で心配なのが医療である。先日も都内の知り合いがこんなことを話していた。
「近所のかかりつけのお医者さまが高齢で亡くなって、娘さんが後を継いだのはいいんだけど、開業していた医院が借地で、しばらくたって地主が明け渡しを求めてきて、ほかの街に転出せざるを得なくなってしまった。医院の跡地にはマンションが建ったけどクリニックはなし。新たなホームドクターを探さなければならない」
別の知人は、かかりつけの歯科医が亡くなり、息子に代替わりしたものの、治療技術が拙いのでほかの歯科医院に替えたと言っていた。
医療の現場にも高齢化の波が押し寄せている。厚労省の「医師・歯科医・薬剤師調査」によると、医療施設に従事する医師数は30万4759人(2016年)。平均年齢は49.6歳である。身近な診療所の医師数は10万2457人で平均年齢は59.6歳。全体の平均よりも10歳も年長だ。
全国の診療所データを見ると、65歳以上の医師は3万2624人。高齢医師の比率は31.84%となる。驚いたことに80歳以上の医師が7149人(6.98%)もいる。超高齢医師がおじいちゃん、おばあちゃんの患者を診ているシーンが浮かんでくる。
65歳以上の医師割合が高いのは長崎県の41%診療所医師の高齢化ぶりを都道府県別に見てみよう。
65歳以上の医師が占める割合が高かった県は以下のとおり。
・長崎県41.29%
・徳島県39.86%
・岩手県37.78%
・京都府37.20%
・富山県37.07%
また、高齢医師の比率が低い県は以下のとおり。
・神奈川県27.14%
・東京都27.21%
・沖縄県27.26%
・宮崎県27.40%
・埼玉県29.25%
高齢医師の割合が最も高かった長崎県は、診療所の医師が1395人いるが、そのうち576人が65歳以上だ。しかも後期高齢者である75歳以上の医師が192人で県全体の診療所医師の13.8%を占める。厚労省が医師の偏在ぶりを示す指標として公表した「医師偏在指標」(全国平均は238.3)によると、長崎県は259.4で全国9位。人口10万人当たりの医師数も295.7人で全国でトップクラス。医療の充実ぶりを支えているのが実は、高齢医師なのである。
5年後、10年後はどうなっているのか、不安になる方も多いだろう。団塊世代が後期高齢者となる2025年には、医療費や社会保障費の増加、病院・診療所の減少や医師不足が指摘されている。もちろん介護現場も大変だ。
2025年まであと6年しかない。バラ色の夢や希望がばらまかれている2020年の東京五輪が終わったとたん、日本社会はかつてない試練の時を迎えることになりそうだ。
(文=山田稔/ジャーナリスト)