今やなんでもネット通販で済ませることができる時代だが、商品が届くまで実物を手に取れないという点はデメリットだ。特に洋服はパソコンなどの画面上では素材感や色味がわかりづらく、届いてから「イメージと違う……」と落胆することも。

そんな失敗を避けるため、洋服だけは通販で買わずに必ず店頭で試着してから購入するという人も多い。

 そんななか、ネット通販のデメリットを補完するような“試着専門”の店舗が生まれた。ファストファッションと安価なベーシック衣料を中心とするジーユーの次世代型店舗「GU STYLE STUDIO」(以下、スタイルスタジオ)だ。2018年11月に東京・原宿にオープンした。

 買い物の流れは、まずジーユーの公式アプリをスマートフォンにダウンロードする。そして、気に入った商品についているQRコードを読み込み、オンラインストアで購入。商品は自宅や指定のセブン-イレブン、最寄りのジーユー店舗で受け取ることができるというシステムだ。要は、店舗で商品を選んでネットで買うという流れである。

 また、店内では従来の試着に加え、デジタルサイネージを利用した「バーチャルフィッティング」も行えるという。ジーユーがうたう「新しいファッション体験」とは、どのようなものか。リアルとネットの融合ともいえるスタイルスタジオに足を運んでみた。

●自分のアバターに着せ替え可能

 スタイルスタジオがあるのはJR原宿駅から徒歩1分、複合商業施設「原宿クエスト」の2階だ。
入り口を背に右側がメンズ、左側がレディースと分かれており、商品が1点ずつハンガーにかけられている。「試着のみ」のため、商品の在庫を並べる必要がなく、ゆとりを持った陳列になっている。それが逆に閑散とした印象も与えているが、確かに“次世代感”は漂っているといえそうだ。

 店内の柱には大きなデジタルサイネージ「GU STYLE CREATOR STAND」が設置されており、自分のオリジナルアバターをつくってバーチャルフィッティングを楽しむことができる。タッチパネルで性別を選び、画面に現れたカメラで顔写真を撮影するとアバターが出現、さまざまなコーディネートを試すことができるのだ。しかし、客はわざわざ試着するために店舗に来ているわけだから、仮想で試すというのは本末転倒な気がする。

 スタイルスタジオの強みは、商品を直接確認し試着できるという点だ。スウェットの上下セットなど通常店では梱包されているものも、同店では実際に袖を通すことが可能である。ただし、発熱機能を備えた「あったかインナー」などは取り扱っていないようだ。

 一通り商品を選び、いよいよ試着へ。フィッティングルームの壁にはタッチパネルが設置されており、持ち込んだ商品を壁にかけると自動でQRコードを読み取り、商品情報が表示される。確かに次世代的だが、その読み取り可能距離の関係なのか、室内はなかなかに狭い。
通常店のフィッティングルームは両手を広げても余裕があるが、ここは両手を広げると壁にぶつかってしまう。肝心の「試着」の快適性は高いとはいえないようだ。

 商品を気に入ったら、タッチパネルに表示された商品情報のQRコードをアプリで読み取れば、オンラインストアで検索する手間なく購入画面に移動できる。ただ、色やサイズまでは読み取られないため、それらはアプリ上で選択する必要があり、ワンステップとはいかなかった。注文後、代金は店頭支払いやクレジットカード決済が可能で、商品は後日届くという仕組みだ。

●メリットは「手ぶらで帰れる」ことぐらい?

 スタイルスタジオを訪れた後で判明したのだが、通常店では「ショーツ類を除いて、すべての商品が試着できる」とのこと。「あったかインナー」もパッケージされたスウェットも、店員に申し出れば試着可能だそうだ。

 そうなると、スタイルスタジオのメリットは「試着した商品をその場で買えて、手ぶらで帰れる」ということくらいだ。すでに荷物を抱えているのに買い物をしたいときなどは便利かもしれないが、そんな局地的なニーズに対応したところで「利便性が高い」とはいいがたい。

 また、セール品の少なさも目についた。通常店ではシーズンずれの格安セール品が積まれていることが多いが、スタイルスタジオはあくまで通販のための店舗なので売れ残りの現物がなく、お得な商品を見つけることはできないのだ。

 ちなみに、筆者の場合は商品が到着するまで3日かかった。
ジーユーのベーシック衣料は毎日着るようなものが多いので、このタイムラグはデメリットといえる。野心的な試みのスタイルスタジオだが、ジーユーでなければ、もっと親和性が高かったのかもしれない。
(文=鶉野珠子/清談社)

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