スルガ銀行は、不正が発覚して金融庁から業務停止を命じられていた投資用不動産融資を5月中旬に再開する。
2018年は投資用不動産を扱う広範な業界にとって、連続パンチをくらった1年だった。
スルガ銀行の不正発覚を機に、他行も慎重な融資姿勢に転じた。日本銀行によると、投資用不動産向け融資(アパート融資)は18年、新規実行額が前年比16%減った。投資マネーが主導する不動産の値上がりも限界が見えてきた。国内不動産の大口購入者である上場不動産投資信託(REIT)の今年1~3月の不動産取得額は、前年同期に比べ3割強も減った。物件の年間賃貸収入を取得価格で割った投資利回りは過去最低を更新し続けており、「市況はピーク」との流れが定着してきた。
●異次元金融緩和により都心でバブルが発生
首都圏を中心に不動産価格は高騰を続け、「局地バブル」「ミニ・バブル」の様相を呈してきた。不動産価格の高騰が始まったのは、2013年のアベノミクス開始以降のことだ。特に14年10月末に異次元金融緩和の第2弾が発表されてからは、東京都心でバブルが鮮明になった。
不動産経済研究所がまとめた「首都圏のマンション市場動向」調査によると、東京23区の新築マンション価格は、リーマン・ショックで大暴落。09年は5190万円だった。
18年の年間の初月契約率は月間平均で62.1%と前年比6.0ポイントダウン。3年連続で60%台となった。初月契約率は、その月に売り出した物件がどれくらい売れたかを示す指標。契約率が70%を下回ると、マンション市況は下り坂と見なされる。
初月契約率は18年1月から10月まで60~70%台で推移していたが、11月に50%台に低下。12月には49.4%と1991年8月の49.7%以来、およそ27年ぶりに50%を割り込んだ。あの平成大バブルの崩壊以来の低水準となった。その後、19年1月は67.5%、2月も65.6%と昨秋までの契約率の水準に戻ったものの、依然として節目の70%に届いていない。
東京23区で新築マンションの価格が高騰し始めたのは13年から。
その後、高止まりの状態が続いたが、「かぼちゃの馬車」の不正融資事件を機に、金融機関が個人向け不動産融資にブレーキをかけたため、新築マンションも売れなくなった。
●「令和」とともに始まる不動産バブルの崩壊
不動産業は市況産業だ。ブームと不況を繰り返してきた。1973年は日本列島改造論のブームのなかで不動産価格は高騰したが、オイルショックが起きると急落した。90年にピークを迎えた不動産バブルは、大蔵省(当時)が金融機関に総量規制を通達。不動産向け融資の伸び率を全体の伸び率以下に抑えるよう指導した結果、平成の不動産バブルは崩壊した。
2005年からの不動産市場は「ファンドバブル」と呼ばれた。最初は海外、その後は国内勢も加わり不動産を買い漁った。しかし、そのファンドバブルは08年のリーマン・ショックにより一気に崩壊。
日銀は4月17日に公表した「金融システムリポート」で銀行による不動産業向け融資がバブル期の1990年末以来、28年ぶりに「過熱状態」に転じたとの分析結果をまとめた。不動産向けの融資残高は2018年末で78兆9370億円。4年連続で過去最高を更新中だ。不動産向け融資の対国内総生産(GDP)比率が18年10~12月に14.1%に達し、基準値の上限の13.0%を上回った。地方銀行の残高の伸びが目立ったという。
新規融資は減少傾向が続いているが、期間の長い貸し出しが多いともいう。増加が目立ったのは、個人が賃貸用不動産を取得するためのアパートローン。相続税の節約対策としての利用が増えた。
日銀は「不動産向け貸し出しに積極的な金融機関ほど自己資本比率が低い傾向にある」と指摘。
「平成」は、不動産バブルの崩壊とともに始まった。「令和」は再び現在の不動産バブルの崩壊とともに始まる。
(文=編集部)