『花束みたいな恋をした』ってタイトルそのものが、何よりもの名言説。

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「これ、パンケーキ食べてるけど、した後のふたり。」


「これ、タピオカ飲んでるけど、すでに別れてるふたり。」

これ、映画『花束みたいな恋をした』(21)に登場する台詞の一部。

コミカルさもありつつ容赦なく現実を突きつけるコントラストが秀逸な台詞たちを生み出すのは、『東京ラブストーリー』、『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』、『カルテット』など、観る人の心をこれでもかという程にえぐる鬼才・坂元裕二。

『最高の離婚』を越える坂元裕二作品はもう出てこないだろう、なんて思っていたのに、2021年4月クールに放送された『大豆田とわ子と三人の元夫』でまさかの逆転ホームラン。坂元裕二節はとどまることを知らない。

未だに「これ、歩いている大豆田とわ子。」の伊藤沙莉によるナレーションが耳から離れないのは私だけ?

坂元裕二脚本作品はとにかく台詞が多い。情報量が多い。それがまた、癖になる。

ジェットコースター級の感情の起伏に襲われる『花束みたいな恋をした』

【予告編】


2021年1月29日に公開され、”既視感”があるそのストーリーに共感の嵐が巻き起こった『花束みたいな恋をした』。心の傷が癒えるどころか再びチクチクと痛み出してしまう、とんでもない映画だ(褒めてる)。

かくいう私もその一人で、鑑賞後すぐトイレに駆け込み個室からしばらく出られなかった。トイレ、空いててよかった。

菅田将暉×有村架純というキャスティングもまた、アラサー世代に会心の一撃を食らわせたポイントである。

さすがは名言の宝庫、坂元裕二作品、『花束みたいな恋をした』でも数々の名言が登場する。

ここからは、絞りに絞った私的推し名言を6つ、紹介していく。

1.「社会に出るってことは、お風呂に入るってことなの。」

『花束みたいな恋をした』ってタイトルそのものが、何よりもの名言説。


広告代理店でバリバリ働く絹の両親・早智子(戸田恵子)と芳明(岩松了)が、就職もせずフリーターのまま同棲生活を続ける絹(有村架純)と麦(菅田将暉)に言い放ったこの一言。

いかにも”広告代理店感”溢れる絹の両親と、共感はできないけど話を合わせる麦と相変わらずな両親に冷めた目線を向ける絹。一緒に食卓を囲んでいるとは思えない空気の分断の対比、なんともシュール。

世の中の大半の人は「社会に一度出てみたところで”入ってよかった~”とは思わないだろ」と感じるであろう中で、「入って見ると”あ~入ってよかったな~”って思うの」と熱弁する早智子の姿は傑作。にしても、こんな例えを思いつく坂元裕二はやはり天才。

2.「カラオケやに見えない工夫をしたカラオケやでカラオケするIT業界人はたいていヤンキーに見えない工夫をしたヤンキーで、”結局、やるかやらないかなのよ”、この言葉がなにより好き。」

『花束みたいな恋をした』ってタイトルそのものが、何よりもの名言説。


絹が人数合わせで呼ばれた西麻布で、合コンなのか異業種交流会なのか”よくわからない飲み会”が開催されていた。この台詞は、会場にたどり着いた瞬間の絹の心情。

普段IT界隈に生息する私は思わず吹き出してしまった。だって、本当にそうなんだもん。

”よくわからない飲み会”の情景がものの見事に頭の中に広がるこの一言、実に素晴らしい。

3.「ほぼうちの本棚じゃん」

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明大前から自宅までの終電を逃し、運命的な出会いを果たした麦と絹。
とは言っても、二人きりだったら"花束みたいな恋"は生まれていなかったかもしれない。同じく終電を逃した男(小久保寿人)と女(瀧内公美)に声をかけられ、4人でカフェバーで時間を潰すことになる。

映画好きと言いつつ「好きな映画はショーシャンクの空に」とか言っちゃう男と「去年観た中で一番よかったのは実写版 魔女の宅急便」とか返しちゃう女。サブカル好きな麦と絹とはまるで正反対。
早々に解散し意味ありげな雰囲気でタクシーに乗り込む男女を脇目に、何事もなく終わると思いきやカフェバーに居合わせた押井守の話で盛り上がり、居酒屋、ひと悶着あってからのカラオケやさんに見えるカラオケやさん、缶ビールを飲みながら散歩している内に大雨に振られ、麦の部屋に駆け込む二人。

部屋に入るなり絹が言った、この一言。麦と絹の嗜好性が98%一致していることを如実に表現している。

好きな台詞ではありつつも、私だったらちょっと嫌かもとも思ったりする。だって、多くの時間を過ごす人と”ほぼ”インプットするモノが同じだったら、つまらないもの。好きな領域は同じでありつつ、自分が知らない世界に導いてくれるような人と一緒にいられたら、もっともっと”好き”を深堀りできるもの。

…という自論は置いておいて、共感できるかできないかはどうであれ、運命的な出会いということがわかるこの一言、痺れる。

4.「こういうコミュニケーションは頻繁にしたい方です。」

『花束みたいな恋をした』ってタイトルそのものが、何よりもの名言説。


3回目のデートの後、タイミングを逃しながらもようやく彼氏彼女の関係性になった麦と絹。帰り道、お互いの苦手なタイプを(まだ)敬語で話しながらそれぞれの自宅に向かって分かれようとする二人。もどかしいなぁと思いきや、押しボタン式に気付かない赤信号で、手を絡め、キスをした後に絹がつぶやいたこの一言。

……有村架純は全男子を殺す気なの?!

“こういうコミュニケーション”って、恋愛関係である二人にとってすごくすごく大事な部分なのに、日本人特有の恥ずかしさが勝ってしまい、どうしてもすり合わせが難しいところ。付き合いはじめた直後に自身の価値観を伝えられる絹は強い。

直接的ではなく、間接的な言い方でふんわりと表現するあたり、坂元裕二様様。

5.「女の子に花の名前を教わると、男の子はその花を見るたびに一生その子のことを思い出しちゃうんだって。」

『花束みたいな恋をした』ってタイトルそのものが、何よりもの名言説。


旅行先で撮った写真を見返しながら、「この花ってさ、よく見るけどなんて言う花なの?」と絹に問いかける麦。答えようとした絹が言ったのが、この一言。
まるで自分の言葉かのように発した台詞は、絹が愛読していた『恋愛生存率』というブログを書いていたメイさんが言っていたことらしい。

よくよく考えると、『花束みたいな恋をした』とニアリーイコールな一言と思えてくる。恋愛全盛期で”終わり”について考える余地もない二人のはずなのに、絹はなぜこの言葉を伝えたのだろうか。絹が麦の隣にいない未来で、その花を見るたびに絹のことを思い出さないようにしてほしいだなんて1ミリも思うわけないのに。

そして、この周辺のシーンは、『花束みたいな恋をした』の真意を喚起させるナレーションがやたらと多いことにお気付きだろうか。

“そのメイさんが書くブログのテーマはいつも同じで、「始まりは、終わりの始まり。出会いは常に別れを内在し、恋愛はパーティのようにいつか終わる。だから恋する者たちは、好きなものを持ち寄ってテーブルをはさみ、おしゃべりをし、その切なさを楽しむしかないのだ。”

もちろん、ナレーションの主は絹。最終的に別れることを促進するのは絹。…これ以上あまり深いことは考えたくない。

6.「一人の寂しさより二人の寂しさのほうがよっぽど寂しいって言うし」

『花束みたいな恋をした』ってタイトルそのものが、何よりもの名言説。


“現状維持”をするために就職をした麦と絹だったが、その就職という環境の変化から”現状維持”ができなくなる負のループから抜け出せなくなった。
そんな空気を察した絹の転職先の上司・加持さん(オダギリジョー)から言われたこの一言。

一人でいるときに寂しく感じるのはそれなりによくあること。でも、二人一緒にいるときに寂しいと思う相手となんて早く別れた方がいい、ろくなもんじゃない。一緒にいるのに、いないことにされているのと一緒。

なのに、当事者はその事実になかなか気付けなかったりする。だからこそ、他人が恐れずに伝えてあげる必要があるわけだ。オダジョーに言われたらそれはもう、誰でもハッと目が覚めるはず。

結局、「花束みたいな恋をした」って、どういう意味?

『花束みたいな恋をした』ってタイトルそのものが、何よりもの名言説。


劇中にこれでもかというほど登場するたくさんの名言をメモして、その中から「これだ!」というものを悩みに悩みながらも6つ選定した後に、ハッとした。

『花束みたいな恋をした』ってタイトルそのものが、何よりもの名言説、ある。

過去形で終わっているということは、もうすでに花束ではない。
ちまちまと水やりをしたり、日が当たる窓際に置いてみたり、「ただいま、今日も疲れたね~」などと話しかけてみたり。コツコツとコミュニケーションを重ねて小さな蕾が満開になったと思いきや、またたく間に枯れて、最後に色褪せたドライフラワーになる様が花の一生。

思い返してみると、こんな恋愛に心当たり、ありませんか?

消えてなくなってくれたら忘れられるかもしれないのに、花束は綺麗な思い出だけが残るドライフラワーとして残っちゃうんだからやっかいだ。



いま、花束みたいな恋をしている人がいたら、何も言わないから”今”を思う存分に楽しんでほしい。

すでに、花束みたいな恋をしてしまった人は、その経験を胸に前に進んでほしい。勿忘草の花言葉・「私を忘れないで」って心の中で思うくらいはきっと許されるのだから。

(文:桐本絵梨花)

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『花束みたいな恋をした』作品情報

【あらすじ】
東京・京王線の明大前駅で終電を逃したことから偶然に出会った大学生の山音麦(やまねむぎ)(菅田将暉)と八谷絹(はちやきぬ)(有村架純)。好きな音楽や映画が嘘みたいに一緒で、あっという間に恋に落ちた麦と絹は、大学を卒業してフリーターをしながら同棲を始める。拾った猫に二人で名前をつけて、渋谷パルコが閉店してもスマスマが最終回を迎えても、日々の現状維持を目標に二人は就職活動を続けるが──。

【予告編】


【基本情報】
キャスト:菅田将暉/有村架純/清原果耶/細田佳央太/古川琴音/押井守/佐藤寛太/オダギリジョー/戸田恵子/岩松了ほか

監督:土井裕泰

脚本:坂元裕二

公開日:2021年1月29日

製作国:日本

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