筋疾患先天性ミオパチーによる症候性側弯症で、人工呼吸器と電動車いすを使用する市川氏は「私は広く訴えたいことがあって、去年の夏に初めて純文学を書きました。
一方で、「文學界新人賞の最終に残ったときから感情がなくて、今ならスゴ腕のスパイになれる思っています。なので今回もホッとしましたけど、ワーッ!とはならなかったです。私はエッセイを書くのが苦手なので、これから大変だなと思いました」と、冷静にとらえていることを話した。
受賞の報告は、すぐに7歳上の姉へしたのだそう。
また、重い本を2冊持った写真撮影を振り返り、「ちょっと(撮影時間が)長かったので、プルプルしてました」と本音も。この日は、華やかなオレンジのドレスを着用して登場したが、「ちょうど(『ハンチバック』の)表紙の色を見つけたので、すごく良かったと思います」とご満悦の様子だ。
執筆活動において、IT技術の進化が助けになったそうだが、「移り変わりが結構激しかったので、自分に合ったものを見つけるのを苦労した部分もあるけど、今はiPad miniが一番合ってます。
『ハンチバック』は、先天性の遺伝性筋疾患のために背骨が湾曲し、電動車いすと人工呼吸器を使うという主人公で、当事者性を意識した作品。「私はこれまでこういう作家がいなかったことを問題視してこの小説を書きました。芥川賞は、重度障害者の受賞者も作品も初だと(報道などで)書かれるんでしょうが、どうしてそれが2023年にもなって初めてなのか。
そして、「私が一番訴えたいのは、やはり読書バリアフリーが進んでいくことなので、環境整備を進めてほしいと思います。ちょっと生意気なことを言いますけど、学術界、学会誌でもなかなか電子化が進んでいません。障害者対応というのをもっと真剣に早く取り組んでいただきたいと思っています」と呼びかけ、今後の執筆活動については、「いろんなものをいろんな視点で、いろんな角度から書いていきたいと思います」と意欲を示した。