5月8日~10日の3日間、東京ビッグサイトで開催されている「観光DX・マーケティングEXPO」にインターネットイニシアティブ(IIJ)がブースを出展しています。観光・宿泊・旅行業界の課題解決をテーマにしたこの展示会、通信事業者のIIJが出展するのはそぐわないと思うかもしれませんが、実はIIJのサービスのひとつがこのテーマに密接にかかわっているのです。


そのサービスとは、訪日外国人向けのプリペイド型SIM「Japan Travel SIM」。今回、IIJはこの「Japan Travel SIM」の販売代理店獲得を主な目的としてブース出展を行っています。そんな「Japan Travel SIM」の現状を、この日ブースで来場者に対応していた同社MVNO事業部 営業企画部長の今井健氏にお聞きしました。

「Japan Travel SIM」は、2018年4月に提供を開始した、訪日外国人が日本への滞在中にモバイルデータ通信を行うためのプリペイド型SIMサービス。通信回線としてはドコモのLTE/3G網を利用します。これまで選べる通信容量は3GB/6GBの2通りでしたが、2024年1月17日からはラインアップを拡大して大容量のSIMも用意され、3GB/6GB/10GB/15GB/25GB/35GB/55GBの6段階で選べるようになっています。
またそれに前後して、利用開始手続きの簡素化などの仕様変更を行い、より簡単に利用できるようになっています。

日本国内では、空港構内、空港からの鉄道路線の駅構内など、ビックカメラなどの家電量販店で販売が行われているのを見かけることがあります。今井さんによると、販路別の比率は、空港5/鉄道3/量販店2というくらいの割合だとのこと。しかし実は最大の販路は国内ではなく国外にあり、国内販売分の約7倍ほどが国外で売れているのだそうです。国外販売の中心はAlibabaなどのECサイトだそうで、日本への旅行者がそういったECサイトであらかじめSIMを購入してから来日するのです。

日本政府観光局のデータによれば、訪日外国人数はすでにコロナ前の水準まで回復しているとのことで、「Japan Travel SIM」の販売も直近では好調だといいます。


直近の使われ方の変化としては、従来からある3GB/6GBといった小容量のSIMから、10GB~の中・大容量のSIMにシフトする動きが顕著だそうです。これにはサービスの多様化や質向上で通信データ量が増えるというのもさることながら、最近の円安傾向で小容量SIMと中・大容量SIMの価格差が小さく感じられ、あえて小容量を選ぶ意味を感じられなくなっているのでは……というのが今井さんの見立てでした。

では利用者が実際にその容量を使い切っているのかというと、これは必ずしもそうではないようで、あるていどデータ量を残している方が多いそうです。とはいえ、容量を使い切っているということはそれ以上通信ができなくなって困るわけですから、容量を余らせるくらいで適切といえるでしょう。

筆者が今井さんにお話をうかがっている間にも、説明員やスタッフをつかまえて質問をする来場者が多数見られました。円安が続く現在、訪日外国人の数は増えこそすれ、減ることは考えにくいところ。
ますます「Japan Travel SIM」のような訪日外国人向け通信サービスの需要は高まりそうです。