外食先でワインリストを開くと、フランス語や英語やイタリア語がびっしりで、とりあえずお店のおすすめを頼りにワインを適当に注文。ソムリエのワインの説明を聞くものの、肝心の内容が理解できず、なんとなく「おいしい」という感想を抱きながら飲む。


そのような経験をして「ワインって難しい飲み物だな」という印象を抱く人も多いのではないでしょうか?

もちろん、それがダメというわけではありません。ワインを知らなくても、ワインを楽しむことはできます。

でも、知ることでさらに何倍も何十倍も楽しめるようになる。それがワインという飲み物です。

本連載では、ワインを全く飲んだことがなかった人でも読むだけでワインの知識が身につき、ワインの基礎から、知っていればワイン通とも会話が弾む知識までを学べるコラムをお届けします。

第1回では、ワインの楽しみ方について。ワインの醍醐味が「味」ではなく、「香り」にある理由を実験を通して解説します。

ワインの「香り」はどう楽しめばいいのか

「ワインって、そもそもどうやって楽しめばいいの?」
「飲み慣れている人がグラスをくるくる回してるけど、あれは何? かっこつけてるの?」
「レストランだと毎回グラスにちょっとしか入れてくれないのはなぜ? あの形のグラスじゃないとダメ?」

……などなど。

ぶどう品種だ、産地だ、何年物がどうだこうだ言う前に、「まず飲み方がわからない!」というのがワイン初心者が初めにぶつかる壁です。

ワインは他の飲み物よりも、飲むときの「セレモニー」がやたらと多いお酒。だからややこしいイメージがある。

じゃあこれらのセレモニーに意味はないのかといったら……あるんですよね。


嗜好品であるワインの楽しみ方は自由なので、べつにマグカップに入れてゴクゴク飲んだって構いません。

ただ、ワインならではの飲み方もぜひ試してほしい。なぜならワインは、それだけでおいしくなるお酒だからです。
「ワインはワイングラスを使って飲むべき」その理由とは

とりあえず、コンビニでもスーパーでもワインショップでもいいので、ワインを調達してください。もちろん、家にワインがあるなら、ぜひそれを開けましょう。

次に、100円ショップかスーパーあたりでワイングラスを調達します。すでにお持ちなら、それで大丈夫。ワイングラスは透明で、グラスが上に向かってすぼまっている形ならOKです。

さらに、紙コップでもプラカップでもいいので、コップを用意してください。

準備ができたら、ワインをグラスに注いでください。そして、そのままグラスに入れたワインをコップに移し替えてください。

何をさせられているんだ? と思いますよね。
もうちょっとだけお付き合いください。

これで、「一度ワインは入れたけど、今は空の状態になったグラス」と「ワインが入ったコップ」が並びました。

では、グラスとコップをそれぞれ鼻に近づけて香りを確かめてみてください。

当然、今ワインが入っているコップの方が、ワインの香りが強く感じられると思いますよね。

……ところが、違うんです。

明らかに、空っぽのワイングラスの方がワインの香りが強く立ち上っていると思います。

これが、ワイングラスを使う意味なんです。

ワイングラスは下側が膨らんでいて、上がすぼまっています。ここにワインを膨らみのすぐ下くらいまで注ぐと、上部の空間にワインのアロマが溜まって強く香りを放つのです。

一方で、コップは上部がすぼまっていないので、ワインが入っていても香りがたまらず逃げ出してしまいます。だから空っぽのワイングラスの方が香りを感じるんですね。
ワインの楽しみは「味」だけじゃない!

この実験から、一つ言えることがあります。


それは、ワインは「香りも」楽しむお酒だということです。

味わいも大事ですが、同じくらい香りも大事です。むしろ、人によってはワインの楽しみの8割が香りだと言うかもしれません。

さらに、ワインはその宝石のような美しい色を楽しむお酒でもあります。見た目を楽しむという点では、カクテルにも通じますね。

ためしに、ワイン好きといっしょにワインを飲んでみてください。たぶん、ワイン好きはワインをいきなり飲まずに、まずはその液体の色を眺めて楽しむはずです。一流の料理やデザートが見た目でも客を楽しませるのと同じですね。

個人的に、ワインの楽しみ方を分類するなら次のようになります。

どうでしょうか。想像以上に「香り」の要素が多いと思ったのではないでしょうか。ワイン好きは、口にワインを入れる前に、たっぷり時間をかけて香りを楽しみます。
何なら、味を楽しむ時間よりも、香りを楽しむ時間の方が長いくらいです。実際、ワイン好きは、注がれたワインをなかなか飲まず、ずーっと香りを楽しんでいます。

それくらい、ワインは多様で魅惑的な香りを放つお酒なんです。

ソムリエがワインの香りを確かめながら「カシス、プラム、カカオ、ナツメグ、ミント……」みたいに謎の単語を羅列する光景を見たことがあるかもしれませんが、あれはワインの複雑な香りを分解して言語化しています。

ワインはぶどうから造られるお酒ですが、ぶどう以外のさまざまな芳しいアロマがあり、それらが複雑に混ざり合うことで、思わず息をのむほど感動的な香りを生み出します。

たとえば、とある超高級ワインの香りは「百の花の香りを集めた」と形容されるほど。

いったい、どんな香りなのか……ワインを飲み続けていれば、いつか出会えるかもしれません。

では、その日に備えてどんなふうにワインのことを知っていけばいいのか。次回は「結局のところ、ワインの香りや味の違いってどうやって決まるのか」ということを端的に説明します。

山田井ユウキ/ワインエキスパート ワインも含め興味のおもむくまま多ジャンルで執筆するフリーライター。ワインの物語を伝える“ワインストーリーテラー”として活動中。著書に『ワインの半分は物語でできている。
』など。[有資格]ワインエキスパート/WSET Level3/ドイツワインケナー/第8回J.S.A.ブラインドテイスティングコンテスト・ファイナリスト この著者の記事一覧はこちら
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