新NISAの普及をきっかけに、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」や「S&P500」連動型のインデックスファンドを資産運用の土台に据える人が増加している。

積み立てが軌道に乗り、少しずつ資産が増えてくると、多くの人が次の一手を考え始める。
「もう少しリターンを狙いたい」「何か1本足したほうがいいのではないか」――と。

そんなとき、候補に挙がりやすいのが、SNSなどで話題のレバレッジ型やテーマ型の投資信託。しかし、投資家でありFP(ファイナンシャルプランナー)の鳥海翔氏は、安易な追加投資を急ぐべきではないと見る。
○注意したい投信5本

「新NISAでベースをつくったからこそ、少し攻めた商品や話題の投信を足してみたくなる気持ちはよく分かります。ただ、注目されている商品が、必ずしもオルカンやS&P500と相性がいいとは限りません。むしろ組み合わせ方を間違えると、せっかく整えた土台を崩してしまうこともあります」(鳥海氏、以下同)

鳥海氏は、オルカンやS&P500を軸にしている人が追加購入する際、「組み合わせによっては注意が必要になる」投資信託として、以下の5本を挙げた。

iFreeレバレッジ NASDAQ100(レバナス)
iFreeNEXT FANG+インデックス
iシェアーズ ゴールドインデックス
Tracers NASDAQ100ゴールドプラス(ゴルナス)

○増やすはずが逆効果…組み合わせに注意が必要な投信の3つの特徴

これらのファンドは、一般には「高いリターンが狙える」「相場急変時の備えになる」といった文脈で語られることが多い。

だが、オルカンやS&P500をすでに持っている人が組み合わせるとなると、見方は変わってくる。鳥海氏は、注意すべきポイントを大きく3つに分けて説明する。

1つ目は、レバナスやFANG+、楽天日本株4.3倍ブルなど「攻めすぎ」て役割がかぶってしまう投信だ。

「すでにオルカンやS&P500で株式の成長は取りにいっているわけですから、そこにレバレッジや極端な集中投資を重ねると、上げを取りにいくというより、下げの傷を深くしやすい。長期で育てる資産というより、短期で勝負する商品に近づいてしまいます」

2つ目は、iシェアーズ ゴールドインデックスに代表されるタイプ。
たしかに有事には強さを発揮しやすいが、長く資産を増やしていく主役にはならない。

「オルカンやS&P500の代わりにはならず、持つとしてもあくまで補助的な位置づけです。そこを勘違いすると、思ったように資産が伸びないというズレが出てきます」

そして3つ目が、ゴルナスなどの「バランス型に見えるが、中身がつかみにくい」投信である。

「NASDAQの攻めとゴールドの守りを1本にまとめた商品ですが、そのぶん何が上昇要因で、何が下落要因なのかが見えにくい。自分で配分を考えなくていい手軽さはありますが、値動きの理由が分かりにくい商品は、結局、持ち続けるのが難しくなってしまいます」
○よさそうに見えて実は危ない。オルカン・S&P500との“本当の相性”

では、具体的にそれぞれのファンドのどこに注意が必要なのか。金利の高止まり、原油高、地政学リスクによる相場の荒さが目立つ2026年3月時点の環境を踏まえ、5本の特徴を見ていこう。
○iFreeレバレッジ NASDAQ100(レバナス):値動きに振り回されやすい

NASDAQの上昇を2倍で取りにいける商品だが、追加すると株式への偏りが一段と強くなる。

「2026年3月現在は、金利高や原油高を背景にNASDAQが下げやすい地合いです。明確な上昇トレンドというより上下に大きく振れる相場なので、指数が行ったり来たりするだけで資産が削られやすく、かなり扱いづらい商品と言えます」

○iFreeNEXT FANG+インデックス:集中しすぎるリスクがある

米国の大型ハイテク企業10社に絞って投資できる分かりやすい商品。だが、オルカンやS&P500の上位銘柄と重なりやすいため、分散どころか特定企業への依存が強まってしまう。

「10社に絞っている分、主役株が売られる局面では影響をまともに受けます。
もちろん、FANG+そのものが悪い商品というわけではありません。AIや米国ハイテク企業の成長に強く期待する人にとっては、魅力的に映る場面もあるでしょう。ただし、話題になっているから、なんとなく値上がりしそうだから、という興味本位で買ってしまうと、下落局面で値下がりだけをまともに受けて、途中で耐えられなくなる人も少なくありません。 AI関連の主役企業がこの先も勝ち続けると強く信じられ、大きな下落が来ても持ち続けられる人でなければ、値動きの大きさに耐えるのは難しいでしょう」

○iシェアーズ ゴールドインデックス:守りにはなるが、伸びしろは微妙

有事に強いイメージがある金(ゴールド)だが、期待の置き方を間違えやすい資産でもある。

「中東情勢などの不安から資金は入りやすいですが、金利上昇はマイナス要因になります。『安全資産』という言葉から、値動きが穏やかで安定している印象を持つ人もいますが、実際にはそう単純ではありません。2026年3月も値下がりする場面があり、安全資産と言われるイメージとは対照的に、値動きは意外と激しく、読みにくい面があります。金は株のように自ら利益を生み出す資産ではなく、長期リターンも高くありません。資産を大きく増やす主役として期待するよりも、相場が不安定なときの守りの補助として考えるほうが現実的です」

○Tracers NASDAQ100ゴールドプラス(ゴルナス):一見便利だが、中身が見えにくい

「攻め」と「守り」を同時に取り入れられる注目商品だが、実際の値動きは案外つかみにくいのが難点だ。

「今のようにNASDAQが弱くゴールドが強い局面では、結果として動きが中途半端になりがちです。何が効いて上がったのか・下がったのかが見えにくいため、自分で資産配分を理解しながら運用したい人にはやや不向きです」

○楽天日本株4.3倍ブル:長期保有向きではない

日本株が上がる場面で一気にリターンを狙えるが、コツコツ積み立てる投資とは性格がまったく異なる。

「たしかに短期の爆発力はありますが、反対に動けば下落も強烈です(指数が10%下がれば4割近い下落)。
外部要因で相場が急に崩れることもある今の環境では、方向を間違えたときのダメージが重すぎます。長期保有ではなく、あくまで短期売買向けと割り切るべきです」

○勝ちたければ足すな? 資産形成で大事な考え方

インデックス投資で土台ができてくると、次は何を足すべきかが気になってくるもの。しかし、そこで話題先行の商品に飛びつくと、かえって全体のバランスを崩しかねない。

「2026年3月の相場は、戦争、110~120ドルの原油高、金利動向の不透明さが重なり、かなり値動きの大きい状況です。この局面では、レバレッジや集中投資は下げの直撃を受けやすく、ゴールドも長く資産を育てる中心にはなりにくい。話題の投信は当たれば大きい半面、外したときの痛みも大きいのです」

オルカンやS&P500を軸にしている人にとって本当に大事なのは、人気投信を買い足すことではない。まずは「自分のポートフォリオ全体でどんなリスクを取っているのか」を把握すること。

世間で話題かどうかよりも、自分がすでに持っている資産とどう重なるのか。その視点を持てるかどうかで、運用の安定感は劇的に変わってくるのだ。

増やすつもりで加えた1本の商品が、かえって足を引っ張ることもある――。

話題性だけで判断する前に、自分の資産全体の中でその商品が「どんな役割を持つのか」、一度立ち止まって考えてみたい。重要なのは「良い商品かどうか」ではなく、「自分のポートフォリオの中で適切な位置にあるかどうか」だ。


※本記事は特定の投資信託の優劣を評価したり、購入を推奨・否定するものではありません。あくまで「オルカンやS&P500を軸にしたポートフォリオに追加する場合の組み合わせリスク」に着目した内容です。

西脇章太 にしわきしょうた 1992年生まれ。三重県出身。県内の大学を卒業後、証券会社に入社し、営業・FPとして従事。現在はフリーライターの傍ら、YouTubeにてゲーム系のチャンネルを複数運営。専門分野は、金融、不動産、ゲームなど。公式noteはこちら この著者の記事一覧はこちら
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