足を踏み入れた瞬間から言葉にならない熱気と興奮

韓国発のグローバルグループ・BTSのワールドツアー『BTS WORLD TOUR 'ARIRANG' IN JAPAN』の日本公演が4月17日・18日、東京ドームで開催された。2019年7月以来、実に約7年ぶりとなった日本公演は、2日間で約11万人を動員。公演初日の17日には、開場前から会場周辺にはARMYたちがひしめき合い、ドーム内に足を踏み入れた瞬間から、言葉にならないほどの熱気と興奮が押し寄せてきた。


○圧倒的な「360度ステージ」が生み出す没入感

本ツアー最大の見どころのひとつが「360度ステージ」だ。会場全体をひとつの巨大なセットとして捉え、どの席からでもメンバーの熱量をダイレクトに感じられる没入型の空間が広がる。

ステージ中央には、韓国でかつて国賓を迎える宴の場だった景福宮にある、慶会楼(キョンフェル)をモチーフにしたパビリオンが設置され、床面デザインには、韓国国旗「太極旗」に込められた、「乾坤坎離(けんこんかんり)」の哲学を反映。四方にはサブステージもあしらわれ、伝統と革新が交差する圧倒的なビジュアルがそこにあった。

○新旧ヒット曲が交差するセットリスト

場内が暗転し、開演を知らせる赤い旗が揺れると、悲鳴にも似たARMYの歓声がドームを轟かすように響き渡る中、メンバーが登場。BTSのルーツとアイデンティティが込められたThe 5th Album『ARIRANG』に収録された「Hooligan」で幕を開けると、ステージを取り囲むように炎が噴き上がり、観客をその世界へ引き込んだ。続く「Aliens」では場内一体が緑一色に輝き、「Run BTS」では、せり上がる円形ステージをメンバーが駆け巡るダイナミックな演出で、全方位へとエネルギーを放った。

オープニングMCでは「TOKYO~!」「久しぶりですね」「8年ぶりに東京ドームに帰ってきました」と、BTSのメンバーが再会の喜びをストレートに表現。Vが「本当にたくさんのARMYが来てくれましたね」と語れば、Jinも「ARMYのエネルギーがすごい」と応え、会場の熱は一気に高まった。

そして、「they don't know 'bout us」「Like Animals」とエネルギッシュなパフォーマンスが続いたのち、アルバムのタイトル曲「SWIM」へ。この楽曲が流れ出した瞬間、会場全体が大合唱となった。さらに「FAKE LOVE」「Merry Go Round」と畳みかける。


中盤のVCRでは、韓国の伝統音楽をBGMに、白・赤・青・黄の巨大な長い布を持ったダンサーたちが躍動する映像が展開。太極旗を想起させる俯瞰ショットが映し出されると、衣装チェンジしたメンバーが再びステージへ。「2.0」「NORMAL」と続き、「Not Today」では、客席から「BTS! BTS!」コールが。さらに、「MIC Drop」「FYA」「Burning Up (FIRE)」では会場中を炎が飲み込むような演出が重なり、熱量は最高潮に達した。

MCでは、ステージにへたり込むJiminに、メンバーが口々に「大丈夫か~?」「お水タイムか?」と声をかける一幕も。

韓国の民謡をサンプリングした「Body to Body」では、電飾の旗を持ったダンサーたちと韓国の伝統舞踊を思わせる圧巻のパフォーマンスを繰り広げ、続く「IDOL」ではBTSのメンバーがステージのまわりを練り歩き、より一層の盛り上がりを見せた。

久しぶりの「Crystal Snow」に感涙

その後、長い暗転の中、ARMY TIMEが訪れた。モニターにはARMYたちのメッセージボードが次々と映し出され、「BTSはARMYの光」「おかえり 私たちの青春」の言葉に、涙をぬぐうARMYの姿も。さらに、「3.2.1の合図で『おかえり』を届けませんか?」というメッセージボードに促されるように、会場全体が「おかえり~」と声をそろえた瞬間、BTSの帰還を待ちわびていたARMYたちの心も、一つになった。

そして再びボクサーのように入場したBTSの「Come Over」を挟んだ後、RMが「みなさんの隣の家のポチでも知ってるあの名曲です!」と紹介するやいなや、世界的大ヒットチューン「Butter」が流れると、ARMYの歓声と共に会場中が大合唱。さらに「ポチも知ってるあの曲です。ポチ Let's GO!」からの「Dynamite」に続き、「Save ME」を経て、日本オリジナル曲「Crystal Snow」のイントロが流れ出すと、思いもよらないサプライズに多くのARMYが心震わせているのが、会場の空気から伝わった。

○7人の言葉が刻んだ、再会の夜

公演終盤、センターステージに並んで腰掛けたBTSメンバーが、一人ひとり順番に、日本語や韓国語でARMYに言葉を届けた。

SUGAは「僕たちがグループで公演したのは7年前かな? あっという間に過ぎましたね。昔に戻ったようなそんな気分になりました。これからもっと頻繁に日本に来たいと思います」静かに語る。

Jung Kookは「会いたかったよ」と日本語で切り出し、「久しぶりに来ても変わらない歓声と変わらない笑顔で迎えてもらって、報われたような気持ちに。パフォーマンスしながら笑顔がこぼれてしまうような感じでした。今日は、むしろ僕の方が皆さんから力をたくさん頂いた感じがしました。会いたかったです」。

Jinは、投げキッスをゆっくりタメながら「ARMYの皆さんにこうやって僕の投げキッスをお届けできるなんて、本当に素晴らしい瞬間だと思います。もう一度受け取りたい人は、次の公演でまた会いましょう!」とウインクし、「I LOVE YOU」と告げた。

RMはすべて流暢な日本語で「東京ドーム。もう8年ぶりですよね」と目を細め、「旅行で来たことはなかったなと気づき、プライベートで東京に来るようになりました。
その時、ただ街を歩きながら、皆さんのことをたくさん考えました。皆さんはこういう景色を見ながら暮らしてるんだなって。そんな話を今日はただ皆さんにしたかったです。いままで待っていてくれて、本当にありがとうございます。日本の、そして東京の皆さん、心から本当に愛してます」と真剣な眼差しで言葉を紡いだ。

Vも日本語で「僕たちは友達だから、今からタメ口で話すね」と言い、昨日食べたラーメンや和牛の話を笑顔で披露。「日本で『このお店絶対行った方がいいよ』っていう場所があったら、僕にメッセージを送って。次は僕がそのお店の常連になると思う」と語りかける。さらに、日本のドラマを見て日本語を勉強していると明かし、「新しいドラマを探して日本語の勉強をしてくるね」と約束。そして、「断ってくださいね」と前置きした上で、「ARMY、僕と付き合って!」と“告白”し、ARMYから悲鳴が上がった。

Jiminは「日本語全部忘れました(笑)。なぜなら、僕たち軍隊に行って」と笑いながら、「昨夜の夜書いてきた」という手紙を、丁寧な日本語で読み上げた。
「8年ぶりに再び東京ドームに来ることができましたのも、皆さまのおかげです。本当に心から感謝します。これからはより多く、より素晴らしい舞台をもっとたびたび皆様にお見せできるよう、努めてまいります。心から愛してますよ」。さらにその末尾には、先述のVへのオマージュを込めた「付き合って!」を添え、会場に温かな笑いが広がった。

そして、j-hopeは韓国語でこう語り出した。「少し重い話かもしれないですが、今日の今の気持ちを表現したくてお話ししたいと思います。実は僕が日本に来てすぐ、祖母が亡くなったという知らせに触れました。すごく驚いて動揺したのですが、メンバーの皆とご飯を食べたり、リハーサルをしたりしながら、その心の揺れを落ち着かせたような気がします。日頃から僕の母方の祖母は、僕だけでなくメンバー皆のことも誇らしく思ってくれていたので、今日の公演を空から見てくれてたら、すごく喜んでくれていると思います。そして、その意味をさらに素敵なものにしてくださったARMYの皆さんに、『ありがとうございます』という言葉を伝えたいです」。最後に日本語で「めちゃ大好きです」と微笑んだ。


「Please」に続くアンコール最後の「Into the Sun」が鳴りやんだあと、「愛してます。また会いましょう!」とのメンバーの声がドームに響き、公演は幕を閉じた。

時折、会場を埋め尽くすARMYの光景を噛みしめるように見渡し、感極まった表情を見せるメンバーたちの姿が印象的だった。

プロフェッショナルでありながら、時に笑いを巻き起こし、そして涙を誘い、全力でARMYと向き合い続けた『BTS WORLD TOUR 'ARIRANG' IN JAPAN』初日公演。それは単なるコンサートを超えた、再会と感謝の夜だった。

(P)&(C)BIGHIT MUSIC

渡邊玲子 映画配給会社、新聞社、WEB編集部勤務を経て、フリーランスの編集・ライターとして活動中。国内外で活躍する俳優・映画監督・クリエイターのインタビュー記事やレビュー、コラムを中心に、WEB、雑誌、劇場パンフレットなどで執筆するほか、書家として、映画タイトルや商品ロゴの筆文字デザインを手掛けている。イベントMC、ラジオ出演なども。 この著者の記事一覧はこちら
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