ドライバー不足が深刻化する中で、トラックやバスの「自動運転」実装は喫緊の課題となりつつある。実現に向けて、技術や実証はどの程度まで進んでいるのか。
「ジャパントラックショー2026」の特別講演でいすゞ自動車の佐藤浩至常務執行役員が語った現状と展望を紹介する。

2027年度にトラック・バスの自動運転を事業化

先日の「ジャパントラックショー2026」では、いすゞ自動車 常務執行役員の佐藤浩至氏が「“運ぶ”の課題解決に向けたいすゞの取り組み」と題して主催者特別講演を実施した。商用車のカーボンニュートラルや自動運転などに関する講演の中から、今回は自動運転にまつわる部分を紹介していく。

トラックやバスといった商用車における自動運転の実装は、乗用車よりも喫緊の課題だと言われている。ドライバー不足への対策として、自動運転が有効だからだ。

いわゆる「物流の2024年問題」により、ドライバーの労働時間に上限が設けられた。当然ながら、ひとりのドライバーが運転できる時間が減る。高齢化によって今後、離職者が増えていくことも予想される。こうした中で、ドライバーのなり手を増やしていくには、安全性や快適性を高めていくという環境整備が大切になる。

その一方で、走行経路や時間が限定され、運行事業者も特定しやすいトラックやバスは、乗用車に比べて自動化がしやすい。佐藤氏はこうした背景を説明したうえで、いすゞの自動運転への取り組みを解説した。

「いすゞ自動車では2027年度における自動運転レベル4のトラック・バスの事業化実現を目標に掲げています。
2024年度から技術やサービスの作り込みを行ってきており、今年度からは技術パートナーとの協働で事業化に向けた動きを始めています。そして2027年度には、日米を皮切りに、順次事業を開始していく想定です」(以下、カッコ内は佐藤氏の発言)

いすゞでは、日本の幹線輸送を担う大型トラック、米国でのミドルマイル(中距離輸送)を担当する中型トラック、我が国の路線バスという、3つの車型での実証開発を進めているとのこと。

具体的には、大型トラックは自動運転車両ソフトウェア開発の米国Applied Intuitionと提携し、レベル4自動運転トラックの共同開発を進行中。ミドルマイルはGatikという米国スタートアップと開発を進めている。路線バスについては神奈川中央交通と一緒に進めているとの説明があった。

AIベースの自動運転にも対応

ご存知の方もいるかもしれないが、自動運転レベル4とは、限定された条件下でシステムが運転主体となり、無人走行ができる状態のことを言う。物流分野では、深刻化するドライバー不足への対応もあり、高速道路など、走行条件を限定しやすい環境で無人走行を行う予定だ。

レベル4自動運転の実現に必要な技術としては、各種センサーからの情報をもとに認知・予測・判断・制御を行う「ADK」(オートノマス・ドライビング・キット)、この判断結果を走る・曲がる・止まるといった車両制御に反映する「ADシャシー」、システム異常や事故発生時に自動運転運行主任者に通知を行う遠隔監視システムなどがある。

いすゞではADシャシーを主体となって開発しつつ、ADKはスタートアップ、遠隔監視は通信事業者との共同開発を進めている。

ところで、自動運転における最近のトレンドとして、「ルールベース」から「E2E」(AIベース)への移行が挙げられる。

ルールベースでは、交通ルールをAIに読み込ませたうえで、走行環境を把握するために三次元の高精度地図を用意し、環境変化に合わせて絶え間なく地図を修正する必要があるのに対し、E2Eは高度化したAIがそのときの交通ルールや走行環境を自律的に判断して運転することになるので、高精度地図が不要になる。

いすゞはこうした流れに的確に対応すべく、これまで3つの世代の自動運転トラックを開発してきた。


「最初はルールベースの制御を採用していましたが、第2世代ではAIの活用範囲を拡大することで、さまざまなシーンに対応できるようになりました。そして現在開発中の第3世代では、認知から制御までをAIが一体的に担うE2Eへと進化しており、一般道にも対応できるようになっています」

より安全な自動運転のためにテストコースも用意

このうち第3世代については、プログラムを積み上げていくというより、AIをブラッシュアップしていくデータドリブン開発になると佐藤氏は述べた。

いすゞではApplied Intuitionと提携し、日米でデータ収集を進めている。31台のトラックを用いて、実走行データを使って学習させていく。AIが成長していけば、複雑な走り方もできるようになっていくが、稀なシーンや危険を伴うケースを検証するには専用設備が必要とのことで、北海道に大規模な自動運転専用テストコースを整備している。

「既存の高速周回路の内側に、高速道路や一般道路、市街地を再現した環境を備えており、さまざまな走り方を確認できます。今年の夏に一部が稼働開始予定で、2027年にすべて完成する予定です。テストコースというとクローズドなイメージですが、ここは自動運転のイノベーションハブとして、外部の方々にもお使いいただきたいと思っています」

一方で、実際の道路上では今年1月から、栃木県と愛知県のパーツセンターを結ぶトラックを使い、新東名高速道路で実証実験を行っているとのこと。来年度の事業化へ向けて、順調に走り続けているという印象を受けた。

最後に佐藤氏は、自動運転トラックの1日をまとめたアニメーションを披露した。東京にある会社の営業所を出発したドライバーは、高速道路に面した中継エリアへ。ここで自動運転に切り替えると、高速道路の本線への合流、故障車情報を受けての車線変更をこなし、目的地の中継エリアに到着。
現地のドライバーに車両を引き継いだ。

つまり、トラックの自動運転は、高速道路は無人自動運転を行い、発着地周辺のみをドライバーが運転するスタイルになるとの想定だ。

トラックショーは2年に一度の開催なので、次回は事業化した姿を見せることができるかもしれないという佐藤氏の言葉に、期待が高まった。

森口将之 1962年東京都出身。早稲田大学教育学部を卒業後、出版社編集部を経て、1993年にフリーランス・ジャーナリストとして独立。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。グッドデザイン賞審査委員を務める。著書に『これから始まる自動運転 社会はどうなる!?』『MaaS入門 まちづくりのためのスマートモビリティ戦略』など。 この著者の記事一覧はこちら
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