果たして、ネリは自身が掲げる井上からのKO勝ちを決められるか。(C)Getty Images、(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext

 刻一刻と決戦が迫るなかで、メキシコの“悪童”もヒートアップしてきている。

 来る5月6日に東京ドームで世界スーパーバンタム級4団体統一王者の井上尚弥(大橋)に挑む元世界2階級制覇王者のルイス・ネリ(メキシコ)。立ちはだかるのは、「史上最強」の呼び声も高い異次元の強敵だが、29歳のメキシコ人ファイターは野心をたぎらせる。

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 下馬評はお世辞にも高いわけではない。26戦無敗23KOと圧倒的戦績を誇る井上は、敵なしの強さを維持したまま、史上2人目となる2階級での4団体統一を達成。パウンド・フォー・パウンドでも常に上位にトップ3位内に位置付けられ、すでに多くの海外メディアでは井上勝利を推す声は強まっている。

 しかしながら、ネリとて、ただただ負けるために日本に向かうわけではない。

東京ドームという彼にとってもキャリア最大級の舞台で行われる大一番とあって、本人のやる気は十分だ。

 現地時間4月17日には、メキシコ・メディア『Izquierdazo』のインタビューで「負けるために日本へ行くつもりはない」と断言。そして、いまだ誰も成し得ていない「怪物撃破」の番狂わせを起こすためのキーポイントを大胆にも語った。

「イノウエを倒すには、あいつを軽視するようなファイターが必要なんだ。そして、それこそが俺みたいなファイターだ」

 いったいどういう意味なのか。これまでも歯に衣着せぬ言動で世間を騒がせてきた29歳は、計画の一端と思える言葉の意図を明かしている。

「ナオヤ・イノウエと対戦したファイターたちに欠けているものは、あいつを見下すことだと思っている。そうだ、ノニト(・ドネア)のように本当にあいつを軽視して、激しく殴りに出て、追い込むんだ。

 もしも、ノニトに、モンティエルをKOした時のような若さがあったなら、あの瞬間にイノウエを倒していただろう。だが、ノニトがそれをできなかったのは、対戦した時の彼の年齢ではイノウエを殴り続けるのができなかったからだ」

 ネリが言う「あの瞬間」とは、2019年11月に行われた『ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ』の決勝だ。当時37歳のドネアは日進月歩で飛躍を遂げていた井上に対して右眼窩底骨折の深手を負わせるなど一進一退の攻防を展開。結局、試合は互いに仕留めきれずにフルラウンドを戦い抜いた末、判定(3-0)で井上が勝利していた。

 この対戦以降、井上がフルラウンドまで戦い抜いた試合はない。ゆえに5年前のドネア戦は「イノウエを限界まで追い込んだ一戦」として海外メディアでクローズアップされもする。

 そんな激闘を引き合いに出したネリは、「俺はあの時のドネアと違って若い。サメのように血の匂いを嗅ぐと止まらなくなるんだ」と不気味に語り、こう続けている。

「相手を窮地に追い込んだらどこまで追いかける。そして何よりイノウエにとっても、俺みたいなファイターは欠けていたと思う。

俺はヤマナカ(山中慎介氏)を2回破った時と同じように日本での3度目の試合も勝つ。俺はそういうお世辞を言うような選手ではないが、イノウエには『歴史は繰り返すんだ。3-0(3戦全勝)を目指すぞ』と言わせてもらう」

 どこか挑発的に自信を覗かせているネリ。一連の言動を見るに、彼が井上との打ち合いに出る可能性は高そうだが、はたして……。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]