ある日突然、たまたま乗り合わせた電車ごと荒廃した未来という極限下に置かれてしまった乗客たちが、元の世界に戻ろうと奮闘する姿を描く金曜ドラマ『ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と』(TBS系/毎週金曜22時)。早くもストーリーや人間模様の考察が過熱する本作で、周りの乗客への気配りを忘れない、心優しい体育教師・畑野紗枝を演じる上白石萌歌にインタビュー。

山田裕貴赤楚衛二との芝居を通じて感じたことや、チーム感が高まっているという共演陣との撮影エピソードを語ってもらった。

【写真】第3話では、紗枝(上白石萌歌)にトラブルが

◆大規模なセットやロケ地の臨場感からいろいろな感情が湧き起こる

 本作は、同じ電車に偶然乗り合わせた見ず知らずの乗客たちが突如、前代未聞の出来事に巻き込まれ、電波が通じないうえに水も食料もない極限下で懸命に生き、元の世界に戻ろうとする姿を完全オリジナルで描く、予測不能のサバイバルエンターテインメント。物語は第3話を迎え、荒廃した未来での新たな生活に向き合う乗客たちの姿が描かれる。

 ネットではさまざまな考察が展開されているが、そうした声はスタッフ経由で耳に入っているそう。「思った以上に皆さんいろんなことを考察してくださっていて、そんな細かいところまで見てくださっているんだ!という気づきがあります。こだわって1シーン1シーン毎日重ねているので、丁寧に作っているものが皆さんに届いているんだなって」と手ごたえを実感している。

 演じる紗枝については、撮影に入る前に脚本の金子ありさと話す機会があったそうで、「似ているなって思う部分が多く、自分の延長線上にある役」と捉えている。「ただ、あそこまでの正義感や、そこに居合わせただけの人にも気を配れたり、守ろうとするところはすごいなと。責任感や、どんな時も前向きでいようとするところなどは見習いたいなと思います」と語る。「乗客の皆さんの調和を保ったり、命を落とさず安全にいられるようにと意識してふるまう立ち位置なんですけど、紗枝は人のことを思いやれる人だと思っているので、誰かの言葉を受け取るときの視線など、なるべくその人に寄り添えるように、柔軟で新鮮な心で受け取れるように」と心がけて演じている。

 本作はTBSの緑山スタジオに組まれた大規模なセットや、遠方の自然豊かな土地でのロケで撮影された臨場感あふれるシーンも見どころの1つ。セットを初めて見た時には「本当にペンディングされてしまったなって思いましたね。
私はなんというところに来てしまったんだ、あんな電車に乗らなきゃよかったって」と笑う。また、「セットとか、遠いロケ地とか、見つけてくださった場所に救われている」とも。「そこに立つだけで、自然といろんな感情が湧き起こってくるんです。それは頑張って自発的に出そうと思っても出せないものだったりするので、スタッフの皆さんの愛情や、この作品をいいものにしようという心意気が伝わってきて、この場所に負けないお芝居や存在でいようといつも思っています」。

◆チーム感が増し雰囲気抜群 山田裕貴、赤楚衛二との芝居から刺激

 ハードな撮影が続くが、現場の雰囲気はとてもいいそう。

 「どんどんチーム感が出てきていて、3話の見どころの1つとして、乗客のみんなのチーム感というのがあるんですけど、現場でもみんなそれぞれのキャラクターにどんどん寄ってきているというか。米澤役を演じる藤原丈一郎さんは、ムードメーカーというか、場を和らげて盛り上げてくれているところがあったり、加藤役を演じている井之脇海くんも、普段から博識でいろんなことを教えてくれたり。あてがきなんじゃないかっていうくらい、その人の良さがキャラクターに反映されている気がして、登場人物が結束していくように、素の私たちもどんどん結束していくのが分かるので、みんなで一生懸命サバイブしてきたかいがあるなと思ってます」。

 撮影の空き時間には「本の貸し借りが流行っています。和真役の日向亘くんがすごく読書家なんです。本屋大賞を受賞した作品を教えてくれて、その本をたまたま藤原さんも読んでいて、みんなで同じ本を読むみたいになって。どこまで読んだ?とかあそこどう思った?とか。
弘子役の大西礼芳さんは漫画を貸してくださったり、学校みたいになってすごく楽しいですね」と笑顔。「クランクインする前に(本作は)学園物みたいだなって思っていたんですけど、どんどん学園物感が増してきたというか。大人になってから毎日同じ人と顔を合わせることってなかなかないので、その感じが楽しくなってきています」。

 「柔らかい方が多くて、年齢差も気にならない」という共演陣に恵まれていい緊張感と心地よさで撮影に臨んでいるという上白石。「乗客のみなさんと大勢でお芝居を作っているときは舞台を作っている気持ちなんですけど、3人のシーンはより丁寧に繊細にお互いの気持ちの受け渡しができている」と語り、山田裕貴、赤楚衛二との芝居からは大いに刺激を受けている。

 「山田さんはご自分のことだけじゃなくて、紗枝は本当はこうなんじゃないかと、山田さんから見た私の役について話してくださったりするんです。山田さんがずっとお芝居や作品のこと全体を考えてらっしゃる方なので、みんなで役や作品について意見の交換をし続けることで、関係性やシーンが深まっていく感じがあります」と感謝。さらに、「1話で山田さんが演じる直哉が崖から落ちそうになり、赤楚さん演じる優斗と紗枝が引き上げたあとの山田さんの表情が忘れられなくて。死ぬかもしれなかった自分と引き上げられて生きている自分…、“生きてる実感”みたいなものをものすごく体現されていて、山田さんのお芝居のすさまじさや熱量みたいなものを間近で感じることができて、最後まで山田さんについていきたいなと思いました」と振り返る。

 今回が初共演となる赤楚については、「すごく目で語る方だなと思います。言葉がなくとも、どういう目をしているかで何が言いたいか分かるというか」と印象を明かす。「赤楚さんの目の力に助けられたシーンがあって。
それぞれの過去について話すシーンがあったんですけど、紗枝が優斗の言葉に救われたって言った後の赤楚さんの目がすごく素敵で。これからのサバイバル生活でも紗枝は優斗に支えられていくんだなっていう先が見えたというか…」。一方で、「はっちゃけたりするイメージがなかったんですけど、ふざけることが好きな方で、毎日小ボケをかましてくださったり(笑)。あ、こんなお茶目な一面があるんだなって」とギャップも感じているそうだ。

 未来の世界での生活も日数が経ち、直哉、優斗、紗枝ら乗客たちの目の前には新たな局面が広がるが、「電車の中で過ごす時間も長くなり、1、2話にはなかった、ここで私たちはしばらく生きなきゃいけないんだっていう生活感が芽生え、チーム感も出てきます」と今夜放送の3話の見どころを語る。「そんな中、紗枝がちょっとしたトラブルを起こしてしまう回でもあります。そういうトラブルを通して、みんながどんどん結束していくのが分かる回にもなっているので、ぜひ見ていただければと思います!」。(取材・文:編集部)

 金曜ドラマ『ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と』は、TBS系にて毎週金曜22時放送。

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