アイドル黄金期の1980年代において、“不作の83年組”と呼ばれた元アイドルたちが、たくましく復活。83年にレコードデビューした大沢逸美、桑田靖子、小林千絵、徳丸純子、木元ゆうこ、森尾由美松本明子からなるユニット“お神セブン”が、40周年記念イベントを開催する(徳丸はVTRのみの出演)。

森尾&松本を直撃すると、「私たちは本当に売れなかった!」と大笑い。アイドルとしては苦戦しながらも、その後タレントや女優として活躍の場を広げてますます輝き続けている2人だが、森尾は「アッコ(松本)は、83年組である私の自慢なんです。アッコが頑張っているから、私も頑張ろうと思う」、松本も「それは私も一緒!」と息ぴったりに告白。爆笑しっぱなしの対談から、83年組の固い絆が明らかとなった。

【写真】インタビュー中も笑い声が絶えず! 森尾由美&松本明子、インタビューショット

◆デビュー当時の衣装は恥ずかしい? 「今年もホットパンツ履きます!」(森尾)

――2018年秋に行われた“お神セブン”による35周年イベントに続いて、40周年イベントが開催されます。5年ぶりに実現するイベントとあって、メンバーの皆さんの喜びも大きかったのではないでしょうか。


森尾:前回のイベントの時に「また5年後にやろうね!」と話していたんですが、その後コロナ禍に突入し、「40周年イベントはちょっと難しいかな…」と思ったこともありました。そういった心配がありながらも、「やりたい!」という熱量はみんな一緒だったね。

松本:コロナ禍ではなかなか会うことができない時期もありましたが、そろそろ会えるかな…となってからは、定期的にランチ会やそれぞれの誕生日会をしたりと、しょっちゅうみんなで会っていたんです。そんな中で「40周年が近づいてきたけど、どうする?」という話になって。こうして実現することができて本当にうれしいです。

――前回のイベントでは、皆さんが当時の衣装を着てデビュー曲を歌ったり、息の合ったトークで会場を盛り上げていました。
「やれて良かったな」と思うのは、どのようなことでしょうか。


松本:みんなで集まって歌えたこともうれしかったですし、何よりイベントをやれたこと自体が奇跡だと思っています。木元ゆうこちゃんの熱烈な親衛隊の方がコールをしてくれたりと、来てくださったファンの方の熱量にもびっくりしました。ゆうこちゃんも、泣いていたよね。

森尾:あれは泣いちゃうよね。私たちのアイドルとしての歌手活動は、“お神セブン”のステージでしか見られないから…。
歌えるチャンスは、自分たちで作らないと!(笑)

――アイドル時代の衣装を着た感想はいかがでしたか?

松本:(森尾)由美ちゃんはすごく恥ずかしがるんですよ!

森尾:5年前でも恐ろしかったのに、また今年も着るなんて恐ろしすぎて。「今回は当時の衣装を着るのはやめようね」と条件を出したんです。そうしたらいっちゃん(大沢)が「何を言っているの。着るわよ!」って(笑)。そうですよね…いっちゃんの言うことが正しいです。今年もホットパンツ、履きます!

松本:レモンチックにね! ファンの方にとっては、由美ちゃんのそういった姿を見られるのもうれしいですよね。


――今回、新しく企画していることがあれば教えてください。

松本:ステージでくじ引きをして、引き当てた曲を歌うというコーナーもあります。だから、誰が何を歌うかわからない!

森尾:今回のイベントでは、80年代アイドルを振り返りながら「なぜ私たちは不作だったのか」を検証したいと思っていて(笑)。くじには、私たちの曲だけではなく、80年代を中心としたアイドルの皆さんのヒット曲が書いてあるんです。今はいろいろな曲の練習をしている最中ですが、「やっぱりヒットするだけあるなぁ」と思うような曲ばかりです。

松本:皆さんのヒット曲を歌いながら、「なぜ私たちは不作だったのか」という自虐と反省をしたいと思っています(笑)。


――自ら会場を確保したり、企画を練ったりと、“手作り感”満載のイベントになるようです。

松本:お稽古場所は小林千絵ちゃんの自宅ですし、なにせ予算がないのでめちゃめちゃ手作りです(笑)。物販としてクリアファイルを作ることになったんですが、それも千絵ちゃんが業者さんとの打ち合わせや発注をしてくれて、今は千絵ちゃんの家に集まって、みんなで袋詰め作業をしています。

――皆さんが袋詰めしたクリアファイルが、ファンの方々の手元に届くんですね!

森尾:そうなんです(笑)。会議室はいっちゃんの所属しているホリプロさんのお部屋をお借りしたりと、みんなの持っているルートやアイデアをフル活用しながら、イベントの準備をしています。いかにお金を使わずにやるのかが大事になりますから。


松本:音響さん、照明さん、演出部の予算など、必要となる予算の計算はすべて由美ちゃんがやってくれるんです。会計は、由美ちゃんにお任せです! 几帳面だし、ものすごく男前。頼りにしています!

森尾:アッコは告知担当! これだけ各方面への露出が多い方はいないので、こちらこそ頼りにしています。

◆売れなかった不作時代「さらに放送禁止用語を…」(松本)

――1983年にレコードデビューしたお二人ですが、当時のお互いの印象はどのようなものでしたか?

松本:「世の中にこんなにかわいい子がいたのか」と驚きました。しかも由美ちゃんは自分から「やりたい!」と言ったのではなく、スカウトで芸能界入りをしていますから。テレビに出ることに憧れて田舎から出てきて、オーディションを受けてきた私にとっては、衝撃でしたよ。「こんなに都会的な子がいるんだ!」と度肝を抜かれました。

森尾:埼玉育ちですけどね!(笑) アッコはすごくおとなしくて、静かな子だったんです。デビュー当時は楽屋も一緒だったりしたけれど、「あなたたちはライバルだから」と教わっていたこともあり、実は私たち、当時はほとんどおしゃべりをしていないんですよ。

松本:私は田舎者で、右も左もわからない状態。おとなしかったと思います(笑)。

――「花の82年組」といわれる中森明菜さん、早見優さん、小泉今日子さん、堀ちえみさんといった82年デビュー組と、菊池桃子さん、荻野目洋子さんなど84年組のスーパーアイドルたちの間に挟まれているのが、「83年組」の皆さんです。「不作」と言われることもありますが、「売れていないな」と実感することはありましたか?

森尾:オリコンの順位を見れば明らかでした!(笑) 当時は3ヵ月周期でレコードを出していたんですが、1発目で売れなかったら、次に出す曲はもっと期待できないわけですから…。厳しい世界ですよね。同期のメンバーとも、最初は「ライバルだから話しちゃダメ」といった雰囲気だったものが、だんだんと「売れていない」というチームワークを感じるようになって。デビューして1年くらい活動してきた頃に、アッコが「私たちは売れなかったけれど、これからも頑張っていこうね」とみんなに声をかけてくれたんです。

松本:私は(松田)聖子さんに憧れて、夢を持って田舎から出てきました。いろいろなオーディションを受けては落ち…というのを繰り返して、ようやくスター誕生で合格したことをきっかけにデビューできたんですが、それでもなかなか売れず。さらにデビュー翌年には、(『笑福亭鶴光のオールナイトニッポン』で)放送禁止用語を言ってしまって、謹慎生活を送ることになってしまって…。自分で歌手活動をダメにしてしまったんですね。本当に、鳴かず飛ばずでした。

――森尾さんのデビュー曲『お・ね・が・い』、松本さんのデビュー曲『♂×♀×Kiss(オス・メス・キス)』もとても良い曲で、売れなかったのが不思議です…。

森尾:みんな、素晴らしい先生に楽曲を書いてもらいました。アイドル研究家の中森明夫さんがおっしゃっていたんですが、80年~82年にたくさんのアイドルが誕生して、視聴者の皆さんもお腹いっぱいになっていたのが83年なんだそうです。そういう周期があるのかな、私たちのせいじゃないんだと、前向きに捉えています(笑)。

松本:アイドル水泳大会でも、私たちはメインステージでは歌えなかったですね。プールサイドの隅っこの方で歌って、放送の時はそれをワイプで流してもらう感じでした。

森尾:レコード会社対抗の運動会も居場所がなかったよね。リレーのアンカーや目玉の競技などは、やっぱり売れている方がやられるので…。明らかに私たちの方にはカメラが向いていない(笑)。転びでもしないと、カメラはこっちを向かないのよね。そこから「何かやらないと撮ってもらえないぞ」という精神が芽生えたのかもしれない。

松本:不作だったからこそ、芽生えたもの!(笑) でもそういった中でも、先輩方は本当にかわいがってくれたよね。

森尾:(松本)伊代さんも、「もうちょっとこっちにおいで」とかいつも気遣って声をかけてくれました。伊代さんは「当時は自分たちのことにいっぱいいっぱいで、83年組が売れていないとは気づいていなかった」とおっしゃっていました。

松本:いつも優しかったよね。(早見)優さんも伊代さんも、前回の“お神セブン”のイベントを観に来てくださったんです。「同期デビューで集まってイベントをやったり、仲良くしているのがうらやましい」と言ってくれることも多いよね。

森尾:そうそう! 優さんや伊代さんもそうだし、生稲(晃子)ちゃんも言っていた。「『おニャン子クラブ』でも、7人で集まって何かをやることはない」って。

◆『電波少年シリーズ』『千鳥の鬼レンチャン』松本明子の奮闘が励みに

――周囲の皆さんがうらやましく思うほど、83年組の皆さんの絆は固いのですね。

松本:私たちは、連絡を取りすぎ!(笑) それくらい仲が良いです。デビュー当時はこんなふうになれるなんて想像もできませんでした。同志としての絆もあるし、安心できるし、頼れるし。喧嘩もできる仲です。

森尾:裏表がないから、一緒にいてとても気持ちが良いです。素直に謝れるし、なんでも言い合える仲ですね。

――皆さんにとって、今年は40周年の節目の年になります。そんな中で転機と思えるような出来事はありますか?

松本:歌手としてデビューして売れなくてさまよっている時に、中山秀征さんから「一緒にバラエティ班で頑張ろうよ」と声をかけてもらったことは、一つの転機になりました。母親も「いただいたお仕事はどんどんやりなさい。一生懸命にやって、名前と顔を覚えていただいたら、その後はきっと好きな歌を歌えるようになる」と言ってくれて。売れなかったことや謹慎していた時期もバネになって、がむしゃらに走り続けてきました。

――『電波少年シリーズ』では数々の体当たり企画にも挑まれていました。

松本:アラファト議長に会いに行ったり!

森尾:あんなことができるのは、アッコだけだと思う。私はアッコのたくましさや頑張りを見て、ものすごく励みになったんです。いつも思うのは、アッコは、83年組である私の自慢だということ。アッコが頑張っているから、私も、そして同期のみんなも頑張っていこうと思える。本当にいつも刺激を受けています。先日放送された『千鳥の鬼レンチャンアイドルSP』もLINEで感想を言い合って、みんなで盛り上がりました!(笑) アッコにはやっぱり笑いの神がついているのよ!

――『千鳥の鬼レンチャンアイドルSP』では、チャレンジの前後に松本さんがオナラをしてしまった様子が放送され、お茶の間を笑いの渦に巻き込みました。

松本:もう緊張しちゃって! 出ちゃったんですね(笑)。ああいった姿も放送していただいて全然平気ですし、皆さんに笑ってもらえてうれしいです。でもその時ばかりは恥ずかしくて、“お神セブン”のLINEに事前に報告できなかったんです…。

森尾:いつもどういった番組に出るのか教えてくれるのにね! でも千絵ちゃんがアッコの出ている番組はいつもチェックしてくれているので、みんなに「この日、アッコが出るよ」と教えてくれていました。

松本:本当にありがたいです。同期のみんなが背中を押してくれたり、励ましてくれたり、感想を言ってくれたりすることが、私の元気の源になっています。

――森尾さんも、タレント、女優業と活躍の場を広げ、今年はレギュラー出演されているトークバラエティ『はやく起きた朝は...』も30年目の放送に突入しました。

松本:由美ちゃんは出産直後も働いていて、大変だろうなと思っていました。『大好き!五つ子』シリーズのような昼ドラもやられていて、育児をしながら撮影をするなんてすごいな!と思っていました。

森尾:気づけば40周年を迎えていたという感じなんですが、すべては良い縁に恵まれたからこそ、ここまで歩んでくることができたんだなと思っています。モットーとしてきたのは、気負いすぎないこと。私は「これは頑張らないといけない!」と構えると空回りをしてしまうタイプなので、何事も平常心で挑みたいなと思っています。

――ファンの方に向けて、今回のイベントでぜひ“お神セブン”の「こういったところを見てほしい」というポイントはありますか?

松本:“お神セブン”はベタであることが売りなので、包み隠さず、私たちのすべてを見ていただきたいです。私も本番で気合を入れすぎて、また(オナラが)出ちゃうかも!(笑)

森尾:お聞き逃しなく!(笑) 今回はデビュー当時にできなかったことだけではなく、コロナ禍でできなかったこともやれたらいいなと思っています。売れなかった私たちのことをめげずに応援してくれた方の声も聞きたいですし、ファンの方と交流するような企画もやれたらうれしいです。

――45周年、50周年記念イベントにも期待がかかります!

森尾:そうなったら、私は完全に裏方で…。

松本:いやいや! 由美ちゃんがステージにいないと始まらないから!

森尾:でもそれをモチベーションにこの先の5年、10年、頑張れるかなという気がしています。実はコロナ禍で少し気持ちが落ち込んでしまって、「もう隠居したいな…」と思った時期があって。でも久しぶりに会ったアッコから「何を言っているの! 70歳までロケに行くよ。そのためにも元気でいないとダメだよ!」と声をかけてもらって、「そうだな。アッコ、ありがとう!」と元気が出たことがあったんです。ただ“お神セブン”のイベントでは、『夜のヒットスタジオ』のように階段を下りながら出てくる場面があるんですが、70歳になった時に「階段を下りられるかな…」という心配があります(苦笑)。

松本:ステージをバリアフリーにしなきゃいけないね。みんなが「もう疲れた」と言っても、そこを引っ張って、45周年、50周年とどんどんやっていきたいです! 由美ちゃんは、もちろんホットパンツでね!(笑)

(取材・文:成田おり枝 写真:高野広美)

 『40周年イベント 83年組アイドル 不作と言われた私たち「お神セブン」再集結!』は、9月29日・30日東京・博品館劇場にて開催。