多田かおる原作の伝説的少女コミック「イタズラなKiss」は、天才イケメン入江直樹に恋をしたドジで落ちこぼれの女子高生・相原琴子の一途な片思いを描くラブコメディ。“イタキス”の愛称で知られ、1996年に佐藤藍子主演でドラマ化、さらに台湾版、韓国版と制作され、いずれも大ヒット。
そして今年、不朽の恋愛バイブルが日本で17年ぶりにドラマ化された。いよいよ8月28日(水)にDVDリリースとなる『イタズラなKiss~Love in TOKYO』で国境を越えて“イタキス”ファンをトリコにしてきた、絶大な人気を誇るキャラクター入江直樹を演じた古川雄輝に単独インタビューした。 

【関連】『イタズラなKiss』でのお気に入りキスシーンも教えてくれた、入江直樹役の古川雄輝フォトギャラリー

 「韓国版を観ている友達が周囲にいたので、“イタキス”のタイトルには馴染みがありましたが、オリジナルのコミックは読んだことがありませんでした」という古川。連載期間は1990年~1999年。25歳の男子で、かつ帰国子女の古川が、原作を読んでいないのはむしろ当然だろう。

 しかし「脚本を読み、ぜひやりたいと思った」と振り返る。当時、ロンドンにいたため、オーディションはインターネットを通じて行われた。受かったときは「もちろんスゴク嬉しかったです。でも日本に帰ってから、作品を好きな方が驚くほど大勢いらして、なかでも入江直樹という役が、特別皆さんに愛されていて期待値が高いということが分かったんです。そこで初めてプレッシャーに襲われました」と告白。「周囲からも、『え、あの“イタキス”? 入江直樹をやるの??』と言われたりして、『はい、やるんです…』みたいな感じでした」と苦笑い。

 だが古川には入江役に選ばれるのも納得のバックボーンがある。
7歳でカナダに渡り、高校からは単身NYで過ごした英語堪能な帰国子女。理工学部に入学し大学院へも受かっていた慶応大学では、ミスター慶応の称号に輝き、独学で学んだダンスではサークルの代表を務めていた。

 しかし本人は「入江くんは自分の弟にそっくりだなって思ってたんです。無愛想なところや、進む道も同じなので。だから、『これ、お前じゃん』って話してたんですけど、ドラマを観た弟は『お兄ちゃん、そのまんまだね』って。自分としてはちゃんとお芝居してるんですけど」と少々不満げ。だが、入江とリンクを感じた部分も。

 「自分の気持ちを伝えることに不器用だったり、自分探しをして悩んでいるところなどは、自分自身と重なりました。ボクも大学時代、オーディションに受かって俳優になるまでは、自分探しをしていましたから」。ただ、「でもボクはあそこまで冷たくないですよ! 最初に琴子からラブレターを渡されそうになるんですが、いらないと断って、しかも入江くんはそのラブレターを踏んづけちゃうんですよ。ボクだったら、喜んで受け取ります! あとIQ200なんてないですしね」と素顔を覗かせた。 さて、完璧な王子様(性格には難アリだが)の入江を演じるのは、実際、難しく、かなり研究した。
「入江くんは『……』のセリフが多いんです。微妙な表情が多いので、見ている人はどうにでも解釈できてしまう。手の動作だけでも色んな意味合いが出てくる。だから自分がそのときそのときで、どう映っているのか、相当意識しました。ほんの少し笑っただけで、笑った!みたいになっちゃう役ですからね(笑)。放送された映像を見て、監督はこういうところを使いたいんだとか、カメラの位置なんかもかなり勉強しましたよ。みんなが理想としている入江くんに、少しでも近づきたかったので」。

 個人的に工夫したのが“目”。入江くんといえば、切れ長の目がチャームポイントのひとつ。「実は入江くんを演じているときは、普段よりもちょっと目を細くしてるんです。冷たいときは特にそうですね。そういう点にも注意しました」。
苦労は伴ったものの、いや、だからこそだろう、「今までやってきた中でも一番好きな役」と語り、話は俳優業への意識の変化へ。

 「この作品でも勉強したと言いましたが、ボク、デビューは小劇場で、その後はオーディションで映画の役をもらってきたんですけど、どれも等身大に近い役だったんです。でも初めて等身大じゃない役に当たった時、できなかったんです。そのときから、かなり意識を変えて演技というものを勉強するようになりました。ドラマや映画もたくさん観て。現場を重ねることで、作品の観方も変わってきました。今も発見の連続で、やればやるほど難しさが分かってきています」と前を向く。

 ところで、本作では96年版の琴子役・佐藤藍子と入江役・柏原崇が特別出演していることも話題。「柏原さんとお会いしたときは、すごく不思議な感じでした。だって17年前ですよ。17年前にいま自分がやっている同じ役を演じられていた方が、目の前にいて、一緒の現場にいる……。どう言葉で表現すればいいのか分からない気持ちになりましたね。
何ともいえない緊張感を味わいました」と貴重な共演を振り返った。

 作品にちなんで、ファーストキスについても尋ねてみたが、答えは「秘密」だそうで、粘ってみたが聞けず仕舞い。だが、「作品の中で『ざまあみろ』と言ってキスするシーンがあるんですが、あのシーンは重要でもありますし、とても好きなシーンです」とのこと。実際、ドキドキシーンに仕上がっているのでお見逃しなく。(取材・文・写真:望月ふみ)

 『イタズラなKiss~Love in TOKYO <ディレクターズカット版>』(3000 セット初回限定版)は、DVD‐BOX1は8月28日、DVD‐BOX2は9月25日発売、価格は各1万2600円(税込)。また、9月4日にDVDvol.1~5、9月18日にDVDvol.6~10がレンタル開始。
編集部おすすめ