9月21日に公開された映画『怪盗グルーのミニオン危機一発』が、前作『怪盗グルーの月泥棒 3D』(2010年公開)の興収12億円の記録を更新し、20億円を突破。現在も快進撃を続けている。
その事実を前に、映画関係者から聞こえてくるのは、「ここまでヒットするとは…」「予想外の出来事」「洋画の実写でも興収20億円は大きな壁で、CGアニメとなると、ピクサー以外は難しいのが現状。それなのに、なぜ?」など、意外にヒットしたという声だ。

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 関係者にしてみれば、“ミニオン”はノーマークの作品。しかし、作品は大ヒットしている。配給は東宝東和。最近では『レ・ミゼラブル』『テッド』などをヒットに導いたことで知られる映画会社だ。
では、どのようにしてヒットへと導いたのか。

 まずは、『テッド』でも活用したツイッターとフェイスブックを利用した宣伝である。そこに、YouTube公式チャンネルでの映像配信、期間限定でのLINE公式スタンプの無料配布(現在終了)、アメリカ本国が製作し、全世界で5000万ダウンロードを超えた公式ゲームアプリの日本語版「怪盗グルーのミニオンラッシュ」の無料配信などを加え、10~30代に向けてアピール。徹底的に、劇中に登場する黄色いキャラクター“ミニオン”で押したわけだ。

 「続編を全面に打ち出してしまうと、前作を観ていないから劇場へ行くのは止めようとなりがちですが、キャラクターを打ち出すことで、知っているキャラクターの映画だからと、劇場への間口はぐっと広がります。また、本作の原題には“2”という数字が入っているのですが、実は、日本では続編を示唆させる“2”をあえて使っていないんです。
これは続編を感じさせない戦略でもあります」と、同作の宣伝担当は明かす。 しかし、ここの層だけでは、20億円へは物足りない。欲しいのはファミリー層と、キャラクターのかわいさだけでは響きづらい男性層だ。

 「アンパンマンやドラえもんなど、子どもに人気のキャラクターであれば、子どものほうから見たいとなるのでしょうが、ミニオンの場合は“この作品なら見せても大丈夫”という安心感を親に抱いてもらって子どもへ、という流れを想定しているため、ウェブを充実させ、テレビのスポットは子どもが見る浅い時間に流しました。また、男性には、技術的にもすごい作品であることをアピールし、別の面白さがあることを知ってもらいました」。

 そして、最後の仕上げが9月14日~16日での先行上映。


 「今回は長期休暇の時期ではなかったため、どうしてもこの3連休でファミリー層を取り込むことが必須でした。ママ友間の口コミだけではなく、ここでの数字は21日の本公開時にプラスされ、ヒット感も出せますから。事実、3連休で約3億円、週末興収で約6億円と、ランキング1位でスタートを切れました。この大ヒット感があとに続いた感じです」。

 平日に空いてしまうファミリー層をメインではなく、万遍なくアピールした結果、子どもから大人まで幅広く来場し、20億円超えに成功した『怪盗グルーとミニオン危機一発』。どこまで記録を伸ばせるか楽しみだ。