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「宝塚は、自分が生きていく上での糧となっています。舞台人としても男役としても、そして人としても、いろいろと学ばせてもらいました」と、音楽学校も含めて約20年の宝塚生活を振り返る蘭寿。また、「お芝居に関しては、宝塚の“男役の美学”を大切にしていました。役によってそれぞれ違うので定義はありませんが、毎回、自分の理想みたいなものを目指して演じていましたね」と熱弁をふるった。
蘭寿は、宝塚音楽学校の過去最高受験倍率48.25倍を記録した82期に入団した屈指の実力派。気品溢れる容貌や堂々たる立ち振る舞い、キレのあるダンスでファンを魅了し続けてきた。話を聞いていても、ストイックな姿勢が垣間見える。「宝塚時代は、作品を作るという意味でかなり重責を感じていましたね」。蘭寿は唇を噛み締めながら述懐する。
本公演では、占い依存症の女を演じる。長年、男役を続けていたことによる弊害はないのだろうか。「男役が染み付いている部分があるので、つい癖で、足が外に出てしまったりすることはあります」と明かす蘭寿だが、「確かに実際は不安な部分もありましたが、やってみたら自然に表現することができました」と女優業の確信を得たようだ。
稽古中は「リアルな感情を動かせている。いい状態で挑戦できている」という蘭寿。加えて、男役と女役、違いはどこにあるかと質問を投げかけると、「元々が女性ですからね。今まではずっと自分があって、その上に男役を被せていたイメージなんです」と答えてくれた。 蘭寿にとって初めての経験となるのは、女性役を演じることだけではない。本公演では、AバージョンとBバージョンの2つの結末が存在する。ほかにも、世界のトップアーティストと共演するなど、蘭寿は宝塚時代ではありえない新しい試みに挑戦することになる。
本公演について蘭寿は「台詞や歌詞、衣装などもそれぞれ違います。稽古中は、『今の設定はどうなっているのか』というのを感じながらやっています。宝塚に限らず、どこの世界にいてもめったにできる経験ではないと思います。プロジェクションマッピングも使うので、独特な世界観を楽しんでもらえるような舞台になるんじゃないでしょうか」と見どころを語る。
現在の心境について蘭寿は「個になって解き放たれました。
最後に、今後の展望について聞くと、「どんな役をやりたいとか、そういうものは全くないです。どんな役でも魅力的であればトライしていきたい。男役ではなく1人の女性として何が表現できるのかが課題ですね」と答える蘭寿。さらに、「舞台にかける思いや気持ち、芯は変わりません」と断言。新しい蘭寿が見られると思うと、今後の活躍が楽しみだ。(取材・文・写真:梶原誠司)
『ifi(イフアイ)』は9月5日から9月21日まで東京・青山劇場(14日までAバージョン、17日からBバージョン)、9月26日から28日まで大阪・梅田芸術劇場で公演(Bバージョンのみ)。