7オクターブの音域(実際には5オクターブ)を持つ奇跡の歌姫として、世界中にファンを持つマライア・キャリー。数多くのヒット曲を飛ばしてきた彼女の資産は、5億2,000万ドル(約625億円)と伝えられており、双子を抱えるシングルマザーになった今も大富豪ジェームズ・パッカーと交際したり、ラスベガスの定期公演を行ったりと華やかな話題を振りまいている。



 そんなマライアが、世界95カ国で展開されている人気RPGゲーム『ゲームオブウォー』のCMに出演すると報じられたのは今年6月のこと。CMは30秒になる予定で、『ターミネーター:新起動/ジェニシス』の監督が手がけ、撮影は2日間。契約金は日本円で億単位となり、『ゲームオブウォー』側はマライアの知名度に期待する以上にマライアのヒットソングを使用したがっており、契約には「楽曲の使用」も含まれていると報じられた。日本では俳優・伊勢谷友介が同CMに出演しているが、音楽はH Jungle with tの「WOW WAR TONIGHT ~時には起こせよムーヴメント」が使用されており、曲を聞くだけでCMを思い浮かべる人も多いだろう。アメリカでもCMの曲は重要で、その意味においてもマライアの需要は高いのだろう。

 そのマライアが登場する『ゲームオブウォー』のCMが9月14日、アメリカでお披露目された。
当初伝えられていた倍の1分間という長めのものだが、マライアが登場するのはわずか数秒。しかし、名曲「Hero」が繰り返し流れるなど、マライア色の強いものに仕上がっていた。

 CMは、戦い疲れた兵士が「あぁ、もうダメだ」と倒れ込むところからスタート。相棒らしきもう1人の兵士がスマートフォンを取り出し、画面上の「HELP」を押すと、「Hero」の「And Then A Hero Comes Along(そうすればヒーローがやって来るわ)」というコーラス部分が流れて、北から馬にまたがった兵士たちが、「MORE HELP」を押すと、再び同じコーラスが流れて、東から武器を持った兵士たちが登場する。

 続けて、「WTF(マジかよ!)」を押すと、西の方の海からボートに乗って兵士たちが登場。先頭を切るのは頼もしい巨人風の兵士で、男性たちは「助かった~」とホッとした表情を浮かべる。
が、その隙を突くかのように、頭上に火を吹くモンスターが飛来。大ピンチに面するのだが、横から大砲の弾が飛んできてモンスターは倒れる。弾が飛んできた方向を見ると、そこには兵士となったマライアが武器を持ち立っている。

 スーパースターの姿に驚く男たちに、マライアは「あなたたち、ヒーローになる時間よ!」とハッパをかけ、きびすを返して走りだす。男たちはマライアの言葉に奮い立ち、「Hero」のコーラス部分が流れる中、一緒に走りだす。最後にマライアが「今すぐアプリストアで『ゲームオブウォー』を無料ダウンロードし、プレイしましょう!」と呼びかけ、CMは終了。


 このCMに対するネット上のリアクションは微妙なもので、「たった2秒しか出てないじゃないか!」「マライアの走り方が、すごく滑稽」「ホットっていうより、爆笑って感じ」とちゃかす声が大半。「『Hero』大好きだったのに、これからこの曲を聞いたら、このゲームを連想しちゃう……」と残念がる声も多く上がっている。

 実は以前、誌「TIME」が、「多くの人が頻繁に出てくる『ゲームオブウォー』のモバイル広告を『めちゃくちゃウザい』と感じており、そのため(前バージョンに出演していた)ケイト・アプトンが嫌いになったという人も多い」と報道したばかり。マライアが『ゲームオブウォー』のCMに出ると報じられたときも、「もうあのCMを作るのはやめて」という声が上がっていた。このように、もともと『ゲームオブウォー』のCMを快く思っていない人は大勢いるのだ。

 今回は、加えて「なんでマライアが、こんなCMに出るんだ?」という声まで上がっている。
ディーヴァとして君臨するマライアだが、過去にもテレビショッピング番組に出演したり、悪名高きアンゴラの独裁者ジョゼ・ドス・サントス大統領の前で100万ドル(1億2,000万円)のギャラでコンサートを行ったりと、仕事を選ぶのが下手。ニューヨークでの貧しくつらい下積み生活からアメリカンドリームをつかんだため、ついついギャラ次第で微妙な仕事もこなしてしまうのかもしれない。

 アメリカのネットユーザーは「これから繰り返し、マライアの『ゲームオブウォー』のモバイル広告を見せられることになるのか」「マライアもそうだが、『Hero』も嫌いになりそうだ」と厳しい反応を見せている。マライアは大ヒットソング「All I Want For Christmas Is You」をもとにした子ども向けのクリスマス本を11月に発売する予定が入っているため、ぜひとも彼女本来のイメージを重視した仕事で名誉挽回してほしいものである。