北朝鮮軍第9軍団の幹部部所属の職員らが、軍官学校への推薦権限を利用して賄賂を受け取ったり、女性候補生に対する性的不正行為を行ったりした事実が内部資料で明らかになり、軍内外に波紋を広げている。
デイリーNKの複数の現地情報筋によれば、今月、総政治局が全軍に配布した指導資料や学習文献には「第9軍団幹部部の一部職員が推薦の過程で金品を要求し、さらに性的不祥事に関与している」との記述が含まれていた。
情報筋によれば、軍官学校入学を希望する候補者やその家族の間では「実力より金が優先される」との不満が広がり、「軍官学校入学は金額順」という皮肉が公然と語られてきた。幹部部は入学推薦だけでなく、卒業後の配置や除隊軍官の社会復帰にまで強い権限を持つため、構造的に賄賂や癒着が発生しやすいとされる。
さらに深刻なのは性的不正である。
幹部部職員の一部は「学習指導」などを口実に、外見の整った20代女性候補生を宿舎に呼び出し、性行為を強要する犯罪を繰り返してきたとされる。こうした場面は巡察将校に目撃され問題視されたが、軍内部では事件を隠蔽したり、逆に加害者を庇うケースも多いという。その結果、被害者は報復や不利益を恐れて声を上げられず、沈黙を余儀なくされている。
ちなみに、北朝鮮軍内でのこうした性上納の強要は、「マダラス(マットレス)」という隠語で知られている。
今回、総政治局が全軍規模で事例を公表したのは異例であり、汚職と性的不祥事が軍内部で深刻化していることを当局自身が認めた格好だ。資料は「軍革命化学習を徹底し、他の軍団で同様の事件が発生しないようにせよ」と強調し、幹部層への警告を発した。
一方、専門家の間では「総政治局の公表は内部の不満を抑え、軍規律を引き締める狙いだが、根深い腐敗構造を一掃できるかは不透明」との見方が強い。北朝鮮軍では、経済難や配給不足を背景に軍人や幹部の不正行為が常態化しており、今回の事件もその延長線上にあると指摘される。
総政治局の「粛正の意思表明」が一過性の措置にとどまるのか、それとも軍内部の体質改善に結びつくのか、今後の動向が注目される。