1913年の創業時に刻まれた「そろばん(データ)主義」に基づき、ランキングを通して産業や企業の序列を浮き彫りにする連載「DIAMONDランキング&データ」。今回は、2年連続で大きな反響をいただいた、独自試算「40歳年収が高い企業ランキング・トップ10」の最新版を公開します。

(ダイヤモンド編集部副編集長 鈴木崇久)

年収2140万円のキーエンスが
2年連続王者のGCAを退けてトップ

「新卒年収1000万円」――。今年の夏にそんな見出しが踊りました。

 話題の主はNECでした。グローバルでトップレベルにある若手の研究者を獲得し続けるために、従来は管理職にしかなかった、報酬の上限を取っ払う制度を非管理職にも新設。新入社員であっても年収1000万円以上を支払う制度を10月から導入します。

 人工知能(AI)やデータサイエンスなどの分野をはじめとして、優秀な研究者を世界中の企業が奪い合う、熾烈な獲得競争が行われています。その中で日本企業が勝つためには、能力と相場に見合った報酬を支払わなければいけません。

 NECが世の中に与えた「新卒年収1000万円ショック」とは、日本に年功賃金が今も根付いている証拠である一方で、日本の報酬体系が大きく変わりつつある中での一つのマイルストーンともいえるニュースでした。

 そして、優秀な人材を獲得し、引き止めるためにしかるべき報酬を支払わなくてはならないのは、何も研究者だけではありません。

 そこで今回は、おととし、昨年に公開して2年連続で大きな反響をいただいた、独自試算「40歳年収が高い企業ランキング」の最新版をお届けしたいと思います。上場企業を対象に、40歳時点の推計年収を比較しました。

 では、早速ランキングの発表です。

 栄えある第1位に輝いたのは、主に工場の自動化(ファクトリーオートメーション、FA)用機器の制御に使うセンサー機器を扱う、キーエンスです。40歳推定年収で2140万円という数字をたたき出しました。

 キーエンスのすごさを端的に表しているのは、売上高に占める営業利益の割合を示す売上高営業利益率です。売上高に対していかに利益を稼ぎ出しているかを示す指標で、キーエンスの業種区分である「電気機器」の業界平均は5.9%。ところが、キーエンスの売上高営業利益率はなんと54.1%もあります。

 この高収益率こそ、高額報酬の源泉となっているのです。

 キーエンスに次ぐ2位となったのは、GCA(2076.6万円)でした。過去2回のランキングで連続して1位を獲得した、年収ランキングの常連企業です。

 GCAは、M&A(企業や事業の合併・買収)の助言を行う独立系専業会社。日本企業が関わるM&Aにおいて、アドバイザーとしての実績で十指に入る実力の持ち主です。日本やアジア、米国、欧州にまたがり世界に22拠点を置くグローバル企業でもあります。

 同じくM&Aを手掛ける企業として、7位に日本M&Aセンター(1446.1万円)がランクインしています。

こちらも年収ランキングでおなじみの顔。中小企業を主な顧客とするM&A仲介会社ですが、中小企業については経営者の高齢化に伴う廃業危機が国家的な喫緊の課題となっており、ここ数年はM&Aによる事業承継の件数が増加しています。そうした背景が日本M&Aセンターの高額年収にもつながっているとみられます。

 さらに、9位に目をやると、またもやM&Aの助言サービスを提供するフロンティア・マネジメント(1407.4万円)がランクイン。トップ10の中で3社をM&A関連企業が占めました。

 その他のトップ10企業を見渡すと、世間の「高年収」というイメージ通り、総合商社も負けていません。5位の三菱商事(1589.1万円)をはじめ、6位に伊藤忠商事(1507.9万円)、8位に三井物産(1413.5万円)、10位に丸紅(1375.0万円)と、4社がその名を連ねました。

 さて、ここで今回掲載したランキングの算出方法を解説したいと思います。

 まず今回のデータは、「有価証券報告書」(有報)で公開されている提出会社の平均年間給与(年収)を基にしています。対象期間は2018年7月~2019年6月期としました。

 ただし、この公開データは各社の従業員の平均年齢がばらばらであるため、本来は横並びで比較することができません。従業員の平均年齢が高いほど年収も高くなりがちだからです。

 そこで、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(2018年)を基に、8業種(建設、製造、情報・通信、運輸、商業、金融・保険業、サービス、その他)の賃金カーブを多項式モデルによって作成。それを各社のデータに当てはめて、40歳時点の推計年収を求めました。

 このようにして比較可能なデータとして整備してはいるものの、このデータにはやっかいな「クセ」がいくつかあります。持ち株会社(ホールディングス)と事業会社が混じっていることです。

 持ち株会社として上場している企業の中には、経営企画や人事系など、少数の幹部社員のみしか在籍していないところがあります。すると、その企業の実態よりも年収が高く出てしまう恐れが強いです。そのため、有報の提出会社が100人未満の会社はランキングで除外しています。

 一方で、公開年収が低い企業の中には、一般社員よりも年収が低い契約社員を含めている場合があります。他にも、定年退職者の雇用を積極的に進めているビル管理業系の企業や、地方に本社を構える企業も年収が低くなる場合があります。

 こうした事情を踏まえて、ランキングをご覧ください。参考までに決算期時点の従業員数も掲載しています。

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