新型コロナウイルスのワクチン接種の進展で日本経済も21年度後半にかけて、経済活動正常化が期待できる。とはいえ、企業業績の回復には業種間格差、企業間格差が生じ、二極化している。

連載『ダイヤモンド決算報』では、3つのランキングで企業業績を分析する。予想純利益増加率ランキングと予想純利益改善額ランキングで勝ち組を取り上げ、純利益減少率ランキングで負け組を取り上げる。今回は、『純利益改善額ランキング』をお届けする(ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)

前期の不振から大きく業績を
改善させた企業を選び出す

 他の主要先進国に比べて、新型コロナウイルスのワクチン接種で後れをとっていた日本だが、ここにきて接種のスピードも上がってきた。21年度後半にかけては経済活動の正常化が進むことも期待できる。企業業績も回復に向かう。

 ただ、業種間格差、企業間格差が生じ、いわゆる二極化が進んでいる。6月23日までに本決算を発表し、今期の業績予想を公表している2月期、3月期、4月期の2515社中1590社が純損益を改善させ、892社は純損益を悪化させる見通しだ。

 前回は、予想純利益の増加率で業績を回復させる企業を拾い出した。ただ、これだと前期が赤字の企業が、損益を黒字化させたケースを捉えることができない。そこで、今回は純損益ベースで見た前期実績から今期予想までの改善額の大きさを基に『予想純利益改善額ランキング』を作成した。今期も赤字が続く企業は除外した。

 では、さっそくランキングの結果を見ていこう。

鉄道、エキナカ店舗、ホテル事業…
コロナ禍前の80%台に回復するJR東日本がトップ

 東日本旅客鉄道(JR東日本)がトップとなった。2022年3月期の改善幅はなんと6139億円に上る。主力の鉄道事業は、21年3月期はコロナ禍で大きく落ちこんだが、22年3月期の第3四半期時点において在来線の関東圏でコロナ禍前の85%、新幹線で同80%の回復を見込む。22年3月期末時点でエキナカ店舗の売り上げは同90%前後、ホテル事業は同8割前後の水準まで戻るとみている。2022年3月期の営業収益は、前期比31.8%増の2兆3260億円となり、純損益は360億円の黒字(21年3月期は5779億円の赤字)となる見通しだ。

 同じJR系では5位に東海旅客鉄道JR東海)が顔を出している。やはり鉄道事業の不振が響き、21年3月期の純損益は2015億円の赤字となった。東日本同様、22年3月期は純損益が黒字化する。

 JR系企業同様、乗客の大幅減少に苦しむANAホールディングスも、22年3月期の純損益は35億円とわずかではあるが黒字化する見通しだ。改善額は4081億円に上る。国際線の回復は望めないが、国内線は新型コロナウイルスのワクチン接種拡大もあり上向いてくる。貨物事業も収益を下支えする。

売上高は89.4%増の1兆3800億円となる見込みだ。なお、日本航空は会社としては22年3月期の業績予想を公表していないため、ランキングの対象となっていない。

 3位の住友商事は、21年3月期にマダガスカルニッケル事業、インドネシア自動車金融事業、欧州青果事業などで減損損失を計上したことなどから、純損益は1530億円の赤字となった。22年3月期はこうした減損がなくなる。加えて、鋼材事業、自動車製造事業が回復し資源価格上昇も追い風となり、純損益は2300億円の黒字となりそうだ。

 三菱自動車が4位。21年3月期は、自動車販売減少に加え、生産用資産、販売用資産の減損もあり、純損益は3123億円の赤字だった。22年3月期は、半導体不足による生産抑制の影響は残るものの、自動車販売は国内外ともに回復し、純損益は100億円の黒字を確保する見込みだ。

 なお、今回のランキングの完全版では、6位以下も含めた全143社それぞれの「予想純利益改善額・予想純利益増加率・予想純利益」を掲載している。ぜひ確認してみてほしい。

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