『週刊ダイヤモンド』8月24日号の第1特集は「半導体 エヌビディアvsトヨタ 頂上決戦」です。生成AI(人工知能)の爆発的普及とともに半導体業界を席巻する米エヌビディア。
半導体のけん引役は自動車ではなかった!
生成AIの普及とともに時代の寵児となったエヌビディア。6月には時価総額が3兆3400億ドル(約527兆円。当時)となり、米マイクロソフトや米アップルを抜いて世界首位に躍り出た。
エヌビディアのGPUは17年頃から自動運転向けの半導体として期待を集め、トヨタ自動車など大手自動車メーカーが次々とエヌビディアと提携した。
だが足元では、エヌビディアの自動車向け事業の売上高は11億ドルと伸び悩む。米テスラもGPUの大量調達に乗り出しているが、その用途は自動運転向けではなく、自社のデータセンター向けだ。
産業構造を激変させる「生成AI革命」トヨタはGPUの巨額投資に乗り出すか
ChatGPTとともにはじまった生成AIの爆発的拡大で好機を掴んだ米エヌビディアは、半導体業界だけでなく、米ビッグテックを含めたAI業界全体でも“1人勝ち”の情勢だ。
だが、この「生成AI革命」は一過性のブームで終わるのではなく、世界の産業構造を激変させるほどのインパクトを持つ。その衝撃は、インターネットやスマートフォンが誕生して以来のものと言っても過言ではないだろう。
GPUの需給逼迫を受けて「エヌビディア経済圏」は急成長を遂げている。そこでは、GPUの顧客であるビッグテックは投資を急ぎ、GPUのサプライヤーである台湾積体電路製造(TSMC)や韓国SKハイニックスが増産体制を敷く。すでに世界のテック企業にとって、エヌビディア経済圏を攻略できるかどうかが生命線になってきた。
翻って、自動車世界首位のトヨタはどうか。トヨタが提唱する自動車会社からモビリティカンパニーへの変革は、言い換えればソフトウエア改革である。トヨタはGPUを使って自動運転システムの開発を続けているが、SDV(ソフトウエアが車の価値を決める車)の実現に向けてGPUの巨額投資に乗り出す動きは見えてこない。
トヨタグループの認証不正問題が尾を引き、企業統治のあり方にも疑問符がついている。
果たして、トヨタが引っ張る日本企業は、生成AI革命の荒波を乗り越えられるのだろうか。