三菱商事と伊藤忠で首位が逆転
今回は、上場企業の有価証券報告書に記載された平均年収のデータを使って、全業種のうち卸売業のみを対象に、「年収が高い商社・卸売企業ランキング2023」を作成した。
本社所在地はダイヤモンド社企業情報部調べ。
早速、ランキングを確認していこう。
上位5位までを、大手商社が占める結果となった。
1位が三菱商事で、平均年収は1939.4万円。2位は三井物産で同1783.6万円だった。23年8月に公開した同様の趣旨の記事『年収が高い商社・卸売企業ランキング2022最新版』では、三菱商事は2位、三井物産は3位だったので、どちらも順位を一つ上げた。
一方、22年版で1位だった伊藤忠商事は、今回は3位に下がり平均年収は1730.1万円だった。同様に22年版で4位だった丸紅は、今回は5位に下がり平均年収は1593.9万円。代わって今回、4位にランクインしたのが住友商事で平均年収は1605.7万円だった(なお、22年版では5位)。このように、トップ5にならぶ顔触れは大きくは変わらないものの、逆転劇が起きている。
注目したいのは、伊藤忠商事と丸紅は順位が下がったといっても、年収は上がった点だ。
一般的に、大手総合商社は「高給取り」で知られる。業績が好調であれば賞与が上乗せされ、その年収はさらに伸びる。本ランキングの対象期間中の決算(23年3月期)では、商社は「資源バブル」に沸いた。三菱商事の純利益が1兆1806億円(前期比25.9%増)、三井物産は1兆1306億円(同23.6%増)と、初めて1兆円の大台を突破した。
他方、住友商事の純利益は5651億円(同21.9%増)、丸紅は5430億円(同28.0%増)だった。相対的に資源ビジネスの割合が少ない伊藤忠商事は8005億円(同2.4%減)で、5社のうち唯一、減益だった。これらの影響が、年収ランキングの順位の変化にも如実に表れていると言えるだろう。
商社の年収や働き方、最新の事業や業績の動向については、ダイヤモンド編集部が独自の視点で徹底取材した連載や特集を参考にしてほしい。
連載「クローズアップ商社」
日本の「エリート・ビジネスパーソン」の象徴だった総合商社が曲がり角を迎えている。脱炭素の世界的な潮流を受け、“ドル箱”だった化石燃料ビジネスが低収益化したり、中国や欧米の資源会社などとの競争が激化したりしているのだ。
特集「伊藤忠 三菱・三井超えの試練」
伊藤忠商事は、財閥系の三菱商事、三井物産の背中を追い続けてきた。2021年3月期には、株価、時価総額、純利益の三つで財閥系を上回りトップとなる「3冠」を初めて実現したが、その後、抜き返されている。再逆転に向けた秘策は何で、実現に向けた課題はどこにあるのか。岡藤正広会長をはじめとする重役4人を含む伊藤忠幹部らへの徹底取材で、同社が越えなければならない「試練」を明らかにする。
ランキング完全版では、6位以下を含めた全188社の順位と平均年収を掲載している。年収が1000万円を超えた企業は9社、900万円台が10社、800万円台が24社あった。卸売業ゆえ一般的な知名度はあまり高くない企業が多いものの、188社の中には、キャラクターグッズ販売のサンリオや、カー用品店チェーンのイエローハット、モスバーガーを展開するモスフードサービス、カラオケの第一興商など、B to Cビジネスを手掛ける企業もある。どんな企業が何位にランクインしているのか、ぜひチェックしてみてほしい。
(ダイヤモンド編集部 柳澤里佳)