今年のドラフト指名は123人
名門校から無名校までさまざま

 10月24日、今年もプロ野球ドラフト会議が開催された。

 今年指名されたのは本指名69人、育成指名54人の計123人で、本指名が3人減少した一方、育成指名には全球団が参加して4人増加した。

その出身校は多彩で、大阪桐蔭高や横浜高のように誰でも知っている名門校から、諫早農や大崎中央高、伊奈学園総合高のようにプロ入りすれば開校以来初という学校までさまざまだ。

 このうち、諫早農(中村優斗、ヤクルト1巡目)と大崎中央高(麦谷祐介、オリックス1巡目)は開校以来初のプロ入り選手がドラフト1巡目指名となった。

西武6巡目指名の龍山暖は、沖縄の通信制高校エナジックスポーツ高の捕手。同校は2021年の開校で、翌年に創部。龍山選手は野球部の1期生である。

 また、初ではないものの、広島3巡目指名の岡本駿選手の母校城南高からは、前身の徳島中から1950年に大映に入団した増田卓以来、75年振りのプロ選手となる見込みだ。

 本稿ではドラフト指名という枠を取り払って、36年のプロ野球誕生以来、最も多くの選手をプロ球界に送り込んだ学校を見てみたい。

 早速、第5位の学校から順に確認しよう。

 最初にお断りしておきたいのが、ここで集計されているのは筆者が独自に調査したものである。
名門・古豪といわれる歴史の古い学校には、途中で分離や合併などさまざまな変遷のある学校も多く、どの学校をもってどの学校の前身とするかの意見が分かれることもある。そのため、見解によって多少の誤差が生じることをご了解いただきたい。なお、学校名・人名の表記は新字体に統一している。

最も多くの選手を輩出した
「栄光の5校」とは?

 それではいよいよベスト5を確認していこう。

第5位 龍谷大平安高(京都府) 63人+今年2人指名

 戦前には平安中、昭和には平安高として活躍した同校は、龍谷大平安高と改称してからも14年選抜では優勝するなど、戦前から現在まで一定の人数をプロに輩出し続けている。
今年は西川史礁がロッテから1巡目指名を受けた他、田島光祐もオリックスから指名された(育成5巡目)。古くは衣笠祥雄(広島)、現役では高橋奎二(ヤクルト)らがOBだ。

第4位 広陵高(広島県) 71人+今年2人指名

 第4位は広陵高。同校もやはり戦前からの名門だが、プロ入りに関しては平成以降の方が勢いがある。

 今年楽天から1巡目指名された宗山塁も含めて、21世紀以降だけで8人がドラフト1巡目で指名されるなど、中井哲之監督の育成力には定評がある。OBは広島が多く、現役では野村祐輔(広島・24年引退)、上原健太(日本ハム)など。

 今年は渡部聖弥も西武から2巡目で指名されるなど、近年猛烈な勢いでプロ入り選手を増やしている。

第3位 横浜高(神奈川県) 78人+今年1人指名

 横浜高は戦後に創部した学校で、当然プロ入りしたのも全て戦後。しかも78人の多くは渡辺元智元監督が育てた選手で、渡辺監督はおそらく日本で最も多くのプロ野球選手を育てた監督であろう。愛甲猛(ロッテ他)、松坂大輔(西武他)など、高校野球史に名を残す選手も多い。

 渡辺監督辞任後は監督や部長の交代が続き動向が注目されていたが、その後も甲子園に出場してその地位を守っている。

 ドラフトでも昨年4人が指名され、今年は庄子雄大がソフトバンクから2巡目で指名された。いよいよ、第2位の座も射程圏内にはいりつつある。

第2位 PL学園高(大阪府) 82人

 第2位は80年代から90年代にかけて黄金時代を築いたPL学園高。PL学園高の創立は55年で、創部はその翌年。最後の年である16年までの61年間に82人というプロ入り人数は、1つの代から平均1.3人がプロ入りしているという極めて高い率だ。

 実際、80年代ごろには1つの学年から数人がプロ入りするのも珍しくなかった。

 しかも、ただ人数が多いだけではなく、清原和博(西武他)・桑田真澄(巨人)をはじめ、木戸克彦(阪神)、小早川毅彦(広島他)、立浪和義(中日)など多くの名選手をプロに供給してきたことで知られる。現役では去就が注目されている大リーグ・タイガースの前田健太がOB。

 平成期にプロ入り人数トップとなって以来1位を続けていたが、一昨年ついにトップから陥落した。というのも、13年秋に専任監督が不在となり、16年夏の府大会出場を最後に休部してしまったからだ。

 プロ入りしたのも、18年のドラフトで東洋大の中川圭太選手がオリックスに指名されたのが最後で、来年以降のドラフト候補にも同校のOBはみあたらない。

 野球部復活の動きもあるようだが、3位横浜高、4位広陵高の猛追もあり、2位の座も危うそうだ。

春夏合わせた優勝数が断トツ!
プロ選手数もトップの中京大中京高

第1位 中京大中京高(愛知県) 86人

 第1位は愛知県の名門、中京大中京高。戦前から戦後にかけては中京商、昭和後半は中京高、平成以降は中京大中京高と校名は変化しつつも、常に高校球界のトップに近い位置に存在し続けている。

 甲子園での春夏合わせた優勝11回や、通算137勝などは断トツの1位で、プロ入り人数でもしばらくトップを走っていたが、平成以降のプロ入りはあまり多くなく、トップの座をPL学園高に譲り渡してしまっていた。

 しかし、PL学園高を抜き返して再びトップに立つと、一昨年、昨年共に1人指名と、順調にその人数を増やしている。

 現役では沢井廉(ヤクルト)、高橋宏斗(中日)、中山礼都(巨人)らがOBだ。

 こうした多くのプロ選手を送り込んでいる学校がある一方、平成の強豪・智弁和歌山高(16人)や、昭和末の強豪池田高(8人)は、甲子園での活躍度に比べるとプロ入り選手が少ない。

 智弁和歌山高は基本的に有名進学校でもあるという事情もあるが、プロ入りするほどの能力の高い選手が少ないにもかかわらず甲子園で実績を残しているわけで、それはとりもなおさず監督の力量の高さを示しているともいえる。

 また、昨年のドラフトの目玉だった花巻東高の佐々木麟太郎選手はプロ志望届を提出せずに米国のスタンフォード大学に進学。一方、慶応高から米国の大学に進学した後に帰国して今年ヤクルト育成1巡目指名された根岸辰昇選手のように、海外大学へ進学後にプロ入りする選手も出てきている。

 現在までに1人でもOBをプロに送り込んだことがある高校は全国に1700校以上。今年も10校から開校以来初のプロ選手が出る見込み。

すでに、野球部のある高校のうち半分近くはOBにプロ入りした選手が出ており、野球部ができてまだ年数が浅い高校でなければ、母校OBにプロ選手がいる可能性は意外と高い。

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