為替が円安に動くと上昇、円高に動くと下落……。為替の動き次第で日経平均株価が大きく動く状況が続いている。

もちろん10年以上前からこうした為替と日本株の連動は見られていたが、なぜこんなことになってしまったのか。その大きな原因は「アベノミクス」の失敗にある。参議院選挙で自民党は勝利したが、これで単純に日経平均株価が上がるわけではない。過去約3年半のアベノミクスの失敗を検証しよう。これを読めば、株で儲けるためには「さらばアベノミクス」が必要な理由がわかるはずだ。

【ココが失敗1】
2013年4月上旬の黒田バズーカ第1弾の
金融緩和で株価は為替と過剰連動へ!

 2012年12月に発足した第2次安倍晋三内閣。アベノミクスという造語と3本の矢に注目が集まり、9000円近辺だった日本株はここから上昇を開始した。その約4カ月後の2013年4月上旬、日銀の黒田東彦総裁は、第1の矢の「大胆な金融政策」として、国債、ETF、Jリートの買い入れ拡大など、消費者物価の2%上昇の実現に向けた「異次元の金融緩和策」を発表。株価上昇中の「攻め」の追加策発表で株価はさらに上昇と成果を上げた。

 ただその裏では、黒田総裁は円安を狙ったものではないとコメントしたが、日本株が為替の影響で上下する構造はここから始まった。

【ココが失敗2】
「第2の矢」を放つ絶好の追い風だった
「東京五輪」の決定を活かせないまま!

 アベノミクスの3本の矢は、そもそも同時ではなく、順番に放たれるものだった。金融緩和に続く第2の矢とは「機動的な財政政策」。

この第2の矢を放つ強い追い風が2013年9月に吹いた。それが2020年の東京オリンピック開催の決定だ。これを受けて、オリンピックに向けた東京周辺の再開発からカジノなどまで様々な特区などが話題となった。

 しかし、そうした特区についても、結局規制の枠組みを取っ払えず、神風とも言える東京オリンピックの追い風を活かすこともできなかった。

【ココが失敗3】
黒田バズーカの第2弾と第3弾は
「攻め」ではなく「守り」の戦術に!

 黒田バズーカ第1弾で日本株は上昇、2013年12月に日経平均は1万6320円の高値をつける。

 しかし、安倍政権は第1の矢に次ぐ、第2、第3の矢を放てず、日銀は2014年10月に黒田バズーカ第2弾、2016年1月に第3弾を発表。ただ、第2弾と第3弾は、株価上昇中に発表されたまさに「攻め」だった第1弾とは異なり、株価が下落して重要な節目を割り込むのを防ぐ単なる「守り」の戦略にシフトしてしまった。

【ココが失敗4】
順番に放たれる3本の矢のうちの
第1の矢だけが繰り返される手詰まり感!

 アベノミクスがスタートして、2016年7月で約3年半が経過した。当然、第2、第3の矢が放たれていてもいい時期だが、そうした矢はどこにも見当たらない。かろうじて、黒田バズーカがアベノミクスを賑わしているだけだ。しかし、これでは第1の矢の繰り返しに過ぎない。

 そして第2、第3の矢が期待できない今、投資家はもはや黒田バズーカによる円安での日本株上昇に望みをつないでいるだけの状況だが、第1の矢をこれ以上放っても効果があるはずもない。

【ココが失敗5】
消費税の先送りも株価に効果なし
金融緩和も限界で円高リスクがつきまとう!

 2016年の4月下旬、日経平均は急落した。これは、株価上昇の頼みの綱となっていた黒田バズーカ第4弾が発表されなかったことによる期待はずれでの下落だ。

 ただ、2016年1月の黒田バズーカ第3弾で、日銀は預金をすると金利を払うことになるマイナス金利を導入しており、金融緩和策にも限界が来ている。さらに、2014年11月に続き、再び消費税率のアップを先送りすることを決定したが、これも株価への効果なし。

 結局、アベノミクスの約3年半で、日本株は円高で下落し、円安で上昇する先進国の中で最も値動きが荒い株となり、株価水準も黒田バズーカ第1弾での高値近辺まででの推移が続いている。

 こうした状況を顧みると、日本株で儲けるためにはそろそろアベノミクス頼みを止めて、アベノミクスがどうなろうとも自力で利益を稼いで行ける銘柄選びにシフトするタイミングが来ているようだ。

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