1976(昭和51)年の初代誕生からまもなく半世紀を迎えるアコード。シビックと並ぶホンダの金看板として国内外でブランドを堅持してきた。
ここ最近のモデルは大型化と価格の上昇により、おもな購入者層は50~60歳代と上昇気味だったという。11代目となる新型は先進安全性能とインターフェースを強化。グッと若々しくなったルックスで日本のホンダの牽引役を担う。

【画像】OKグーグルで操作可能な新型アコード

■さらに伸びやかになった

アコードは日本で新型導入を待つことなく、今年(2023年)1月で先代の販売が終了した。その後ホンダの国内ラインアップからは名前が消えたままだが、ついに新型の国内向けプロトタイプが公開された。今年12月の先行予約開始、来春の発売が予定されている。

11代目を数える新型アコードは、主力市場の北米で今年初めから発売されている。今回、国内仕様のスペックは公表されていないが、基本的には北米仕様と同じと考えていい。先々代、先代と同じく国内向けはハイブリッド車(HV)のみだ(先々代は前期型でプラグインハイブリッドも設定)。

エクステリアは先代のクーペライクな路線を踏襲しながら、現在のホンダデザインに則ったシンプルかつ上質な佇まいに一新。流麗さと精悍さを兼ね備えたスリークなスタイリングが特徴だ。チーフエンジニアの横山尚希さんによると、衝突安全性などの機能要件でフロントオーバーハングを伸ばす必要があり、それをデザインにも活用したという。


北米仕様のスペックを確認すると、全長は約4970㎜で先代よりさらに70㎜ほど拡大している。2830㎜のホイールベースは変更なし。リヤのトレッドが拡大したようだが、全幅は増えても5㎜程度だろう(1865㎜?)。3サイズは同じくFFラージセダンのレクサスESに肩を並べる。

低く抑えた水平基調のインパネも、ひと目で新世代のホンダ車とわかるデザインだ。大きく向上したのはやはり先進性で、メーターは10.2インチのフル液晶、センターディスプレイは12.3インチにそれぞれ進化。ヘッドアップディスプレイも11.5インチ相当と大型だ。

インパネ中央には国内ホンダ初の「エクスペリエンスセレクションダイヤル」を採用。1つのダイヤルで複数の機能を操作できる。エアコン/オーディオ/照明などの設定をユーザーごとに登録し、ワンタッチで車内をパーソナライズすることも可能だ。インパネラインやドアラインが光るマルチカラーのアンビエントライトもユニークかつ機能的。

そして、コネクテッドサービスには、これも国内ホンダ初の「Googleビルトイン」を搭載する。
Googleアシストタント/マップ/プレイなどをタブレットやスマホと同じようにセンターディスプレイで利用できる。「OKグーグル」でスタートする認識精度に優れた音声操作もうれしい。

コックピットまわりの設えも重厚な木目調パネルを使った先代と異なり、梨地調のような新感覚のシボや微細立体柄の金属調高輝度フィルムなどを採用。先進装備のハイテク感との調和を図ったものだろう。シートは上質な本革張りで、前席には骨盤をしっかり支えるボディスタビライジングシートを採用。先代レベルを踏襲した室内空間やトランクは、現在も圧倒的な広さである。

■フラッグシップに恥じぬ進化

シリーズ・パラレル切り換え式HVのe:HEVは、2Lエンジンを先代のポート噴射からシビック/ZR-Vと同じ直噴に一新。さらに、2モーター内蔵の電気式CVTが国内ホンダ初の最新型に進化している。これまで同軸配置だった走行用と発電用のモーターを平行に配置。空いたスペースにそれぞれギヤを持たせることで、モーターとエンジンの各レシオを最適に制御できるようになったという。モータートルクも強化され、加速性能と静粛性をともにレベルアップさせている。空力性能の進化と相まって燃費も向上しているはずだ。


ダイナミック性能についても抜かりない。プラットフォームや前ストラット/後マルチリンクのサスペンション、デュアルピニオンのVGR(可変ギヤレシオステアリング)といった基本構成はキャリーオーバーだが、もちろん入念にアップデートされている。

さらに、操舵に応じて瞬間的に駆動トルクを弱め、フロントへの荷重移動で旋回性を高めるマツダのGVCと同様の新機能を採用。また、減速セレクターは回生量を従来の2倍に増やし、パドル操作だけでコーナーを曲がれる走りの楽しさも実現しているというから楽しみだ。

そして、先進運転支援システムも大きく進化している。2021年秋に技術発表された「ホンダセンシング360」が、新型アコードでようやく日本にも導入されるのだ。約100度のフロントワイドカメラに加え、フロントと各コーナーに計5台のミリ波レーダーを装備し、文字どおり車両周囲の360度センシングを実現。従来のホンダセンシングに機能をさらに加え、安全性をいっそう高めている。2025年にはハンズオフ機能などの次世代技術も搭載予定だ。

国内販売2年11カ月と短命に終わった先代の無念をどこまで晴らすことができるか。スタイリングに目新しさはさほどないものの、アメリカンに大型化したここ数代のなかでは、日本のユーザーの感性にもっとも合うデザインではないだろうか。

今やアコードもすっかり高級車の部類だが、価格しだいではセダン市場に新しい風を吹き込むかもしれない。
勝ち目のなかったライバル、カムリが今年12下旬で国内生産終了となるツキもある。

〈文=戸田治宏 写真=山内潤也〉
編集部おすすめ