日本の鉄道玩具の代名詞といえば「プラレール」。この国で育った男の子ならほぼ必ず!? 一度は遊んだ経験があるであろう「プラレール」が今年、発売から50周年を迎えた。
青いプラスチックのレールの上を2軸のかわいらしい電車がカタカタ走る姿は、この50年、基本的に変わっていない。しかし、よーくみていとこの半生記積み重ねてきた技術の結晶と、子どもたちを楽しませるための様々なアイデアが盛り込まれているのだ。

プラレールの原型となる「プラスチック汽車・レールセット」が発売されたのは1959年(昭和34年)。国産初のプラモデルが発売されたのがその前年だが、まだ当時のおもちゃといえばブリキか木製のものが主流。その中で、カラフルで軽いプラスチック製のおもちゃの登場はかなり画期的だったようだ。ちなみに当時の車両は電動式ではなく、積み木の汽車と同じように手でコロコロ押して楽しむかたちだった。


その5年後の1964年、東海道新幹線開通にあわせて発売した「ひかり号」がヒットしたあたりから売り上げは急速に伸び、1968年、正式に「プラレール」の名前を冠し、輝かしい歴史が花を咲かせ始める。そして1970年代から80年代にかけ、車両、レールの種類、駅や踏切といったバリエーションを増やしながら、鉄道おもちゃの王様として揺るぎない地位を確立していく。ちょうど今社会人としてバリバリに働いている「元・男の子」たちはこの頃、プラレールにハマった世代だ。ちなみに筆者の私はこの頃、蒸気機関車とセットになっていた雪かき車がお気に入りだった。

全盛期を迎えた中、国鉄がJRに変わった1990年代から、車両の「リアル化」が一気に進む。一昔前なら、山手線などの通勤電車は何となく全面が3枚窓で、横にドアが並んでいればよかったものが、車体の細かい凹凸を再現するなど、鉄道模型に匹敵するほどの精巧な作りになってきた。
ちょうど、鉄道会社に限らず、意匠に対する各企業の考え方が非常に敏感になり、おもちゃの電車といえども、より正確な表現を求めるようになった。一方で、まずプラレールで製品化することで、新型車両をより広く知ってもらおうという鉄道会社の思惑も、リアル化を加速させることになったといえるだろう。

で、最新のプラレールはどうなっているかというと、ICチップを組み込んで「シュッシュッ」といったSLの走行音や、新幹線の車内アナウンス(しかも本物と同じ声優さんを使っている)を響かせたり、機関車の煙突から煙に見立てたスチームを噴出させるなど、最新技術を取り入れたアトラクションが加わっているほか、電動車を電源を入れなくてもスムーズに転がして遊ぶできるといった子どもの遊び方にあわせた細かな工夫が施されている。

面白いことに、これだけ長い歴史がありながら、鉄道ジャンルにありがちの“濃いマニア”が意外と少ないのだそうだ。それについてタカラトミーの東宏幸さんは、「あくまで子どもの目線を維持してきた証」と指摘する。

少子化がいわれる中で、大人を市場に取り込もうと高年齢向け商品を投入する傾向がおもちゃ業界にはあるが、「ターゲットはあくまで子ども」であることを追求している点に、50年の歴史の重みを感じさせる。
そんな強い裏付けがあるからか、少子化による売り上げ減といったマイナス材料は今のところないそうだ。
(足立謙二/studio-woofoo)