50がらみの中年男があこがれだった電車の運転士になってしまうという中井貴一主演の映画『RAILWAYS』が好評だが、男子に生まれたからには、長い編成を連ねた電車の先頭に座って思いのままに動かしてみたいという夢に一度はあこがれるもの。もちろん、映画のような夢の展開がそうそう実際あるわけではないが、そこに少しでも近づけそうなアイテムが登場した。


その名は「鉄コレ式制御器」。“国電”という呼び方がもっとも似合う、かつて中央線や総武線などで活躍した国鉄101系の運転台を3分の1スケールで忠実に再現した代物だ。鉄道模型を動かすパワーパックやテレビゲーム「電車でGO」の専用コントローラーにも、実物の運転台を模したものはあるが、ここまで忠実に再現した市販品はおそらくこれが初めてだろう。

発売したのは、鉄道情景をモデル化した「ジオコレシリーズ」やフィギュア「鉄道むすめ」などを手がけるトミーテック。ここのコーナーでは以前、列車の行き先表示板を模型化した「ミニサボコレクション」を紹介したが、その際にも模型屋魂というべき再現へのこだわりに圧倒されたもの。今回の運転台模型にも、その精神は見事なまでに貫かれているようだ。


グリーンをベースにした全体の色合いやアナログでちょっと無骨な計器類の再現はもちろんのこと、ブレーキやマスコン(自動車でいうところのアクセル)の動き方も本物に近い感触。さらにこれらを動かすごとに、「プシュー」「カチカチ」といった音までちゃんと鳴るようになっている。

また運転台のとは別にドアの開閉器も同梱されており、これもボタンを押すと、ドアが開くときのあの「プシュー」という音がするのだ。何の他愛のない、というなかれ。かつて神田の交通博物館にあった実物のドア開閉器にやみつきになった覚えのある方も少なくないのでは? 男子というのはこの手のギミックに弱いんですよ、奥さん!

しかもこの運転台、なんと本当に電車を動かすことができてしまうのだ! といってもNゲージですが。いやいやこれも決してバカにしたものではない。
模型の動きと各装置のそれとが連動し、電車を加速させるに求めるにもマスコンとブレーキを巧みに操作させるという、ちょっとした技術が必要なのだ。もちろんそれらの動作に合わせて、効果音も細かく変化する。

商品開発を担当したトミーテックの古賀さんによると、「マスコンなどの動きと効果音のタイミング合わせるのが最も苦労した点」だそうで、まさにそこにこそ音と造形が融合した模型の新境地が見えたいえそうだ。その苦労が実った結果、日本おもちゃ大賞優秀賞(ハイターゲット部門)を受賞している。

ちなみに価格は1万7430円(税込み)。ちょっと贅沢なおもちゃだが、本当の運転士になる夢に少しでも近づけるなら、決して高い買い物ではない?
(足立謙二/studio woofoo)