水樹奈々さん初の自叙伝『深愛』や1月30日に最終回を迎えたばかりの「ハートキャッチプリキュア!」
紅白出場についてや、主人公の花咲つぼみを演じるにあたって。夢に向かって頑張る人へのメッセージも! 水樹さんファンじゃなくても必見です!
(前編はコチラ



正常な気持ちを保てた

〈そのうち、冗談ともつかない先生のセクハラは、少しずつだけれど日常生活にも及ぶようになった〉。
(『深愛』76P)

――読んでいて、えーっと……「先生」からの、セクハラを受けながらの生活は本当に大変だったのだろうなと。
水樹 今だったら、もう! って言って冗談でうまくかわせるかもしれないですけど、思春期のころは、心が敏感で繊細だったので、全部本気でとらえちゃうのでつらかったです。
――助けを求めることもできない。
水樹 恥ずかしくて周りにも言えなくて。お母さんにすら相談できなくて、20歳を過ぎて、実はこんなことがあってねーってはじめて話しました。
――作中にも〈えぇ!? そんな話、はじめて聞いたよ。
どうして言ってくれなかったの? ママに相談してくれればよかったのに〉とありました。
水樹 心配かけちゃうし、絶対すぐに愛媛に戻ってこいと言われるだろうし、言うわけにはいかなかったんです。
――この女の子は、このままじゃ潰れちゃう! って心配しながら読んでいました。
水樹 だからやけ食いもしちゃって。でも、大変なことがあって、つらいと思っても、おいしいものを食べて寝ればまた一日がんばれるという便利な性格のおかげで頑張ることができました(笑)。それに学校にいる時間が楽しくて、癒されていましたね。
親友と呼べる友だちに出会えたことがとても大きかったです。
――本にも出ていたSAYURIさんですね。SAYURIさんは転校生だったそうですけど、どちらから声をかけたんですか?
水樹 転校生って、まず最初に教壇のところで挨拶するじゃないですか。そのときに、この子とは合いそうだなと、お互いに想っていたみたいです(笑)。でも、ふたりとも人見知りでお互い出方を探り合っていたので、どちらからともなくでした(笑)。
――すぐ仲良くなったんですか?
水樹 あっという間に校内を腕を組んで歩く仲になりました。
どれだけラブラブなんだよ! ってみんなから突っ込まれるくらい(笑)。
――わー、仲の良い女子高生って感じがしますね。
水樹 SAYURIも中学生まで、私と同じような経験をしていたこともあって、仲良くなるまでに時間はかかりませんでした。言葉にしなくても、繋がっているような感覚。SAYURIの存在があったから、自分の正常な気持ちを保てたんだろうなと思います。
――相当救われていたんですね。
人見知りはもう克服を?
水樹 だいぶ(笑)。でもいきなり全開にさらけ出すことはできなくて。自分の中にラインがいくつもあって、徐々に心を開いていくタイプですね。
――そういうところは水樹さん演じる「ハートキャッチプリキュア!」のつぼみっぽいなあと思います。
水樹 つぼみには共感する点が多いので、感情移入しちゃいますね。


この人は超能力者なのか

――去年は紅白でプリキュアの着ぐるみと共演もしました。

水樹 そうなんです! まさか紅白の舞台にブロッサムたちと一緒に上がることができるなんて、本当に夢のようでした。放送中のアニメのキャラクターが、テレビ局の枠を超えて出演するなんて難しいことらしくて……。企画を通してくださったスタッフのみなさんには感謝の気持ちでいっぱいです。
――本当にびっくりでした。「ハートキャッチ」のオープニングを歌うことや、着ぐるみがいるのは、紅白の出場が決まったときに一緒に知らされたんですか?
水樹 直前まで知りませんでした。「『ハートキャッチプリキュア!』を歌ってください!」って聞いたときには本当にびっくりしました!!
――ライブで「ハートキャッチ」の曲を歌うことはあっても、まさか紅白でも! と。

水樹 ライブではエンディングの「ハートキャッチ☆パラダイス!」を踊りました。特別ゲストとしてキュアマリン役の水沢史絵ちゃんや、ブロッサムとマリンの着ぐるみさんにも来てもらって。
――それはぜひ見たい! サンシャインとムーンライトを交えて、プリキュア4人と踊るのは紅白が初めてだったんですね。
水樹 はい! とても貴重な体験でした。
――『深愛』で水樹さんが色々なことに耐えて頑張っているのを読んで、ふと「ハートキャッチ」でお父さんとお母さんが仕事でずっと家を空けていて、つぼみはその寂しさにずっと耐えているエピソードを思い出してしまいました。
水樹 長峯(達也)監督は現場での立ち居ふるまいや声のイメージから色々なことを汲んでくださる方で……。回を重ねるごとに、私に似た表現が多くなってきて、この方は超能力者なのか!? って思うことも(笑)。去年の12月24日が最終回のアフレコだったので(1月21日発売の)『深愛』は全く読まれていないはずだったのですが、偶然にもシンクロするところがたくさんあって、驚きの連続でした。
――どうしても『深愛』の水樹さんとつぼみが重なるので、ついつい後半はプリキュアの話が多くなってしまいました。いま、何かをやりたいけどやれない、無理だって諦めちゃう人も多いと思うんですけど、そういう人たちに対して、メッセージがありましたらお願いします。
水樹 やりたいことがあるというのは幸せなことだと思います。これだ! と思ったものがある方は、それを信じて諦めないで、まず夢に向かって行動することを始めて欲しいです。急に0から10になることは難しいけど、少しずつ前進することはできます。一歩でも踏み出すことで視界が広がっていくと思います。行動に移すことで新たな出会いが生まれたり、何かに繋がっていくこともあるので、まず始めてみるというのは、すごく大事だと思います!
――難しいことを考える前にまずは行動を。
水樹 そうです! 大人になればなるほど、現実的なことを考えて守りに入ってしまいがちだと思うんです。一度きりの人生ですし! 何事もチャレンジあるのみだと思います!!


過去のいじめやセクハラに我慢し、耐えぬいてきた水樹さん。
つぼみみたいに「堪忍袋の緒が切れました!」と、怒ることはなかったけど、俺には本当にふたりがだぶって見えたのだ。「何でも話せる友達がいれば、明日は今日よりずっと輝き出す」とつぼみは信じている。
SAYURIさんやお父さんの話をしている水樹さんは、ずっと笑顔だった。

「ハートキャッチプリキュア!」はもう終わってしまったけど、3月19日には「映画 プリキュアオールスターズDX3 未来にとどけ!世界をつなぐ☆虹色の花」が公開される。お話を聞いたあとに見るつぼみの姿は、きっと今までとはちがって見えるんだろうな。(加藤レイズナ)