そんなモヤモヤをグチったら、人生の先輩から「まだまだ若いじゃん!」なんて言われるに決まってるけど、その慰めに安心してるといつの間にか“おじさん”になってるって事も知っている。
ところで“おじさん”の定義とは、何ぞや? きっと色々あると思うんだけど、とりあえずはコレを参考にしてみたい。昨年の12月に小学館より発売されたのは、その名も『おじさん図鑑』(税込み1,050円)である。
この図鑑の著者は、イラストレーターのなかむらるみさん。彼女がおよそ5年間に渡り、おじさんを対象とした観察・取材を敢行。その結晶としてまとめられたのが、この一冊だそうだ。
ところで、そのモチベーションの源は? 何しろ、5年間である……。
実は作者には、おじさんに惹かれたきっかけがあるようだ。それは彼女の高校時代に遡る。ひょんなきっかけで、学校の教師とその仲間によるプチ宴会の輪の中に入ったなかむらさん。その際、おじさん達の持つ自由な雰囲気が彼女をワクワクさせた。
それからは、もう虜! 学生時代からおじさんの持つ奥深さ、面白さ、味などに着目し、イラストを描き溜めていたという。
そんな日々に満足していた作者だったが、同級生でもあった同書の担当編集者が「もっと踏み込んだ方がいい!」と彼女を連れ出し、おじさんとの直接交流を促した。
その取材先も、スゴい。ドヤ街の炊き出しに赴いたり、現在進行形で蒸発してるおじさんにインタビューしたり、ギャンブル場(競艇、競輪、オートレースなど)でおじさんの観戦スタイルを分析したり……。
「おじさんに恋愛感情を抱いたことはなくて、昆虫観察に似てるんだと思います」(なかむらさん)
アダルトな“おじさん好き”とは異なる層に向けられた本であり、なかむらさんは明らかにいやらしい意味での“おじさん好き”ではなかった。
そして、この図鑑の内容について。初心者にも見やすいよう、おじさんを48種に分類して解説してくれている(「偉いおじさん」、「何となく嫌なおじさん」、「缶ビール・缶チューハイおじさん」、「いやらしいおじさん」など)。
しかも、きめが細かい。「偉いおじさん」では、社長の初代と2代目以降の違いを分析。「いやらしいおじさん」では、どんなポイントが女性にいやらしさを感じさせるのかを解説している(例:風間杜夫似、Vネックなど)。
そして気になるのは、同書のオープニングだ。ここには「おじさん予想診断」と題したチェック表が設けられていた。
結果、私が行き着いたのは「男っぽいおじさん」。このタイプに対しては「仕事でも家庭でもどこかでしめることが大事。『早く禁煙しなよ』と言われる」といったアドバイスも記されていた。なるほど、気をつけたい。
ところで、この図鑑は主にどんな層にウケているんだろう? おじさん自身は、気を悪くしてたりして……。
「おばさん以外にウケてるみたいです。おばさんからは『なんか、リアルすぎる』という反響をいただきました」(なかむらさん)
生々しかったようだ。そして、意外にも小学生からのウケがいいという。それも道理だ。何しろ学校教師の物まねが一番ツボにハマるのは、まさにあの頃。「本の中に、担任の先生みたいな人いるかな?」という視点で、この図鑑を楽しんでいるという。
そして、おじさんからの反響も上々とのこと。嬉しい限りだが、実はこの『おじさん図鑑』は難産だった。
「本の企画がなかなか通りませんでした。偉い人は大体おじさんなので、自分で自分のどこが面白いのかわからなかったみたいです。初めは『女子高生図鑑にしない?』とか、そんなノリだったようで……」(なかむらさん)
それはもう、テイストが違い過ぎる。『おじさん図鑑』が大正解だ。
ただ、GOサインが出たからと言って無闇に作ればいいというモンじゃない。なかむらさんには、気を付けた点があるという。
「おじさんを笑ってたり、馬鹿にしてると思われないように心掛けました。でも逆に褒め過ぎるとそれはそれで違ってきてしまうので、加減が難しかったです」(なかむらさん)
確かに、おじさんの扱いはデリケート。いや、大丈夫です! 微妙なバランスの上に成り立っている、この一冊。想いが、そのまま形になっているんじゃないでしょうか?
「連日の取材をしていても、『おじさんらしくて、ダサカッコいいな』と思うことばかりでした」(なかむらさん)
私も、おじさんの魅力を満喫させていただきました。
(寺西ジャジューカ)