今見てたでしょ、あたしのこと見てたでしょ?
見てない? そんなはずはないわ、ほら目が合ったもの。
見ないで、私のことを見ないで。やめて! 私の心を読むのをやめて!
自意識過剰な状態に一度陥ってしまうと、なかなか抜け出せないもの。
『空が灰色だから』は少年少女の狭窄した視野を描いた短編オムニバスです。
タイトルがいいですよね。
灰色だからなんなの。そう実際はどうでもいい。けれども曇天だから憂鬱で死にたくなる人だっているんです。
どうでもいいかもしれないと思うことでも、少年少女時代にはそれがとてつもなく重たい出来事になるもの。
そしてうまくいかない。
うまくいかないからある程度頑張ればいいよね! そうしたら世界は打開できるよね!
打開できますか?できないこともあるんじゃないかな?
ハッピーエンドを迎えられるかというと、現実そんなに甘くないんだ。
逆に「もうダメだ、私はだめだ、死ぬしか無い…」という状態だったのが、気づいたらなくて実は幸せだったり。
ままならねえなあ世の中。
たとえば「第6話『今日も私はこうしていつもつまらなさそうな顔してるあいつとつまらない話をして日を過ごしていくのだ』」(※これタイトルです)で、眼鏡をかけたヒロインはくされ幼馴染の少年に話しかけます。
ほら、ネクタイが曲がってる! 高校生にもなって私がいないとダメなんだから。
少年はぱっとしない表情で彼女の言うことを聞き流していますが、その様子はさながら世話焼き女房とくされ幼馴染の少年です。甘酸っぱいね。