「同人で 初めて知った 原作を」
あー、あるある。
ほめられたことじゃ ないけどあるよ ポロロッカ(逆流)。


オタクのあるあるネタを575の川柳で読んだのが、この『オタ句集 もしオタク娘たちが川柳を詠んだら』
川柳と解説漫画で、オタクの生態をうまーく描いています。
ちなみに「オタク娘たちが」とありますが、男女両方のネタを盛り込んでいるのでご安心を。
まあ、とはいえ今までも無数の「オタクあるあるネタ本」はあるんですよ。オタクネタ・非モテネタ・引きこもりネタは、やっぱり面白いんです、いつの時代も。
ところが今回のこの本、面白いなと思ったのはちゃんと今の時流にそっているところです。

もちろん不変な鉄壁オタクネタもあります。
「リアルでも 会話にほしい 選択肢」
なんて説明の必要もなく「あるある」ですね。ゲームやらない人には何のことやらかもしれませんが、ゲーマーならわかるはず。選択肢次第でフラグがたつよ!
それに加えて、いかにも今らしいものをいくつか見てみます。

「(笑)(かっこわらい) これが煽りと 思い込む」
ちょっとわかりづらいですが、今の「笑っていますよ」表現の主流は「w」。
ところが最近は「(笑)」をつけると、まるで煽っているかのように思われてネットで喧嘩になることも。

……そんなんわかるかーい! と思うところですが、そのへんがオタク界隈の時流の変化によって生まれる文化だから仕方ない。
当然「w」の方を嫌がる世代の人もいます。

「ツイッター 話す相手は CPU」
分かる人だけわかればいい文化ですがあえて説明。
ツイッターは基本的に独り言をつぶやくか、人とコミュニケーションを「@」を飛ばしてとるツールですが、中には「bot」と読ばれるプログラムキャラアカウントもあります。これが、話しかけると自然に返事してきたりするからびっくり。
非常にbotとの会話は面白いんですが、傍から見ているととても恥ずかしい物で、虚しさでキュゥンとなる一句。


「抱き枕 カバーを外に 干す勇気」
干すなよ! と言いたいところですが、実質みんな抱き枕カバーってどうしているんでしょうね、ってくらいに抱き枕文化普及しました。びっくりです。ネタアイテムだと思ってたのに最近は雑誌の付録でついてくるんですよどういうこと!?
これに対しての解説がまた面白い。
「難しい問題に悩むオタクの心情を吐露した句ね」
せやな。難しいな。

「こっち見て 指さして笑う オンナども」
つまりモテないってことですね、と思いきや実はダブルミーニング。

ラノベの表紙などをよく見る人ならピンとくるかもしれませんが、二次元キャラは決めポーズに指さしがとんでもなく多い!
つまりリアルでは「指さして笑いやがって!」で、二次元では「指さして笑ってくれ!」という複雑なオタク心を詠んだ句です。

「コメントが ないとなんだか 物足りぬ」
そうだねー(ニコニコ動画のサイトを開きながら)。

わりかし古めのネタや不変ネタもフォローしながら、新しいネタをどんどん放り込んだ句集。漫画がソフトなのでキツめの内容も笑って済ませられます、便所飯ネタとかね。
自虐をしながらも「でもオタク生活楽しいよねー」とまとまっている一冊。ライトなネタから、ディープすぎてわからないネタまで幅広く載ってます。

「オタク」って言葉がどこからどこまでを指すのかわからなくなりつつある昨今ですが、こういうのを見ると、オタクの幅みたいなのが見えますね。なるほどね。
序文が非常にこの本の趣旨を物語っています。
「長引く不況の中、旺盛な消費欲で現在の日本経済を支えているのは、間違いなくオタクの人達。ある種の色めがねで見られながらも、時に己を自虐ネタにしてしまう強さ、逞しさを彼らは持っています」
自虐ネタ多めですが、それはたくましく人生を楽しんでいる証。

個人的に気にいったのはこれ。

「最終回 見るに見れない ファン心」
さっさと見ろよ、って言われるかもしれないですが、ちっがうんだよ! そうじゃないんだよ! ファン心なんだよ!(血の涙

『オタ句集 もしオタク娘たちが川柳を詠んだら』
邦藤 葛 (著), 皆川修二 (著), 松山紗夕 (イラスト)

(たまごまご)