Let's 修造チャレンジ!

「修造チャレンジ」とは、日本応援団長にしてくいしん坊・松岡修造が主催する、男子有望トップジュニアを対象としたテニス強化合宿。今や世界のトップ10に迫るあの錦織圭もこの卒業生の一人だ。
といっても私が今回オススメしたい「修造チャレンジ」はそれではない。修造流ポジティブシンキングを意識付けして、毎日をたのしく生きよう! というもの。心の中に小さな松岡修造を。という、文字面読んだだけで体温上がりそうな思考法が一冊の本にまとめられたのですよ。その名も『人生を変える 修造思考!』
ゴールデンウィークが終わって仕事モードになかなか戻れない人、五月病になりかけの新入社員なんかがチラホラ出てくる季節。
松岡修造化! まではいかずとも、ちょっとしたマインド転換のキッカケにオススメします。

松岡修造と言えば「熱血」の二文字が日本一似合う男。さぞかしその思考法も「熱血」まっしぐらだろう? と思った方……正解!
じゃあ、読む必要がないかと言うとそんなことはない。読み進めると彼の熱い血潮の源流がどこにあるのかが見えてきて、そこにこそ本書の価値があることがわかってくる。
私自身、普段からテレビやCMで松岡修造の熱血具合を面白がって見てはいたものの、時に「熱血」の言葉ではすまされない魅力を感じることがよくあった。特にそれを感じるのがレポーターや応援団長の姿ではなくインタビュアーとしての松岡修造。
数多い“アスリート上がり”のキャスターの中で、松岡修造のインタビュアーとしての能力は群を抜いている。アスリート自身も気づいていない、潜在下の言葉を引き出す力が全く違うのだ。その秘密がどこにあるのか前から気になっていたのだが、本書を読んでそれが明確になった。ただの熱血ではなし得ない、松岡修造を象る言葉は「準備」「集中」「感謝」だということに気づかされる。


~「準備」にこだわる松岡修造~
<勝利の瞬間までイメージできると、実現は近くなる>
アスリートの体験例を元に“イメージ”の重要性を説くのだが、ポイントは「ただイメージする」だけではダメだということ。結果だけでなく、そのプロセスまでもイメージする必要があり、イメージできない部分はまだ準備ができていないことに気がつくのだ。
この他にも、インタビューや国際大会でのキャスターの仕事においては<ひとりプレゼン、ひとりリハーサルでとことん準備する>など、ビジネスにも当てはあまりそうな心構えを何度も説く修造。そんな彼も今や日本テニス協会強化副本部長、立派な背広組です。

<「くいしん坊!万才」では台本を読まない>
本書の中で何度も「準備」の大切さを説いておきながらのこのフレーズ。思わずツッコミたくなるところだが、<「くいしん坊!万才」の場合、準備をしないことが、最高の準備だと僕は思っています>と悪びれもなく語る修造の気持ちもよくわかる。だって出来レースの「くいしん坊!万才」なんて面白くないもの。準備にも色々ある、ということを教えてくれているのだ。



~「集中」する松岡修造~
<「情熱大陸」を観るときは、主人公を自分に置き換える>
「自分ならどうする?」と置き換えながら疑似体験することで理解力が高まる。というのはアスリートならではの発想だけれど、それを「情熱大陸」でもやってしまうのがサスガの修造クオリティ。日常生活でも常に頭ん中で葉加瀬太郎のあの曲が流れてるような気もするけど……時間のない中でどうインプット力を高めるか、というのはテレビ番組に限らずどの分野でも当てはめられそうで参考にしたい。

<なんとなく食べない>
ラーメン屋では食べる前から割り箸を割り、麺をすする動きを繰り返す「エア・ラーメン」をする……これは松岡修造が日本テレビ「嵐にしやがれ」に出演したときにも披露されたエピソードなのでご存知の方もいるかもしれないが、この他にも食事時の最適な呼吸法、ファストフード店での座るべき場所、などなど、美味しく食べるためのこだわり・集中力の高め方はまさにくいしん坊万才だ。


~「感謝」する松岡修造~
<「ありがとう」は、語尾をやさしく・最後まではっきりと>
浅田真央の「ありがとう」を例に、感謝の言葉を発したときに生まれる「空気」がいかにみんなを幸せにするかを熱く語る修造。この他にも「感動」や「喜び」を与えてくれた対象をリスペクトする姿勢も徹底している。


<トイレでは出した後に便器に感謝する>
食べてから出すまで、全てにおいて極意があるのが修造流。<おいしく食べるためには、出し切ることが大切>というこだわりようは見習いたいもの。また、薬指と小指に力を入れるとすっきり排便できる! という修造流便秘解消法まで披露。常に身体に感謝し、モノにも感謝する姿勢は是非とも見習いたい。


思考法を変える、と堅苦しく考えるのではなく、松岡修造がなぜああなったのか面白おかしく読み解くぐらいのスタンスで読むくらいで自然とちょっと影響されるんじゃないだろうか。それほど松岡修造度の濃い一冊だ。

上記はほんの一例で、他にも<ヨーダさんの言葉には、生きるためのヒントがある>(ヨーダをさん付けするひと初めて見た!)とか<おしりの穴を締めると体中のエネルギーがひとつになる><いつも心に富士山をイメージする>などなど、修造名言の数々で埋めつくされている。それらを通して貫かれる「準備することで不安を解消し」「集中すること吸収力を高め」「感謝することで次につなげる」松岡修造は現役時代と変わらずやっぱり真面目だ。どれも当たり前のようなことだけれど、それを貫けるのが本当の強さであり、実力なんだと思う。

この本がタメになった方、そもそも松岡修造が気になっていた方にオススメの松岡修造情報を最後に2つ紹介したい。

ひとつには是非一度松岡修造オフィシャルサイトを見て欲しいということ。「応援メッセージ」という動画で、この本と同じようなありがたい説法が説かれていて非常に楽しい! やはり修造語録は修造が語ってこそ胸を打つ。

そして冒頭でも書いた「日本応援団長」。この夏のロンドン五輪に向けて各放送局が応援キャスターとして様々なタレントの起用を発表しているが、そこはさすがの松岡修造、そんなちっぽけな応援団では収まらない。日本オリンピック委員会が結成した「1億2500万人の大応援団」の団長に就任しているのだ。誰も頼んだ憶えはないがこれほどの適任者もいない。この夏、ロンドン五輪の映像で下手をすると選手の誰よりも長い時間画面に映りそうな修造。「うるさいよ!」ではなく「今日もしっかり準備できてるな、修造」「ありがとう、修造」という『修造思考』が出来れば、テレビ観戦がさらに楽しくなること間違いなしだ。
(オグマナオト)