ハマスタにフォーゼ、キターーーーー!
先日、横浜スタジアムに仮面ライダーフォーゼが登場して始球式を行ったんですが、そのときの球速がなんと999キロ! さすがはフォーゼ、一体なんのスイッチ使ったのか是非とも知りたいところですが、フォーゼならずとも男の子なら、自分の投げるボールの球速が一体どれほどのものか、一度は計ってみたいものですよね。そんな野球ファンにオススメのアプリがあるんです。
その名も「鹿取ウオッチ」(iPhone&iPad対応)。

巨人、西武でリリーフとして活躍。引退後も巨人のヘッドコーチやWBC日本代表の投手コーチなどを務め、現在は野球解説者として活躍中の鹿取義隆氏。そんな鹿取氏が制作監修をつとめた野球専用ストップウオッチアプリが「鹿取ウオッチ」です。制作を雑誌『野球小僧』でおなじみの出版社・白夜書房が担当し、もうただただ野球のアレコレを計測することだけに特化させた、マニア(野球マニア?鹿取マニア?)必見のアプリです。具体的に何ができるのか、というと下記の5つが主な機能です。


1.「球速」の測定
⇒少年時代に憧れたスピードガンが手のひらに。未来だね! ピッチャーが投げた瞬間にスタート、キャッチャーが捕球する瞬間にストップを押すことで「球速」が表示されます。

2.「一塁かけ抜けタイム」の測定
⇒バットに当たった瞬間にスタート、ベース到達でストップ。打者走者がゴロを打ってから一塁ベースをかけ抜けるまでのタイムが計れます。

3.「ピッチャーのクイックモーションタイム」の測定
⇒ピッチャーがモーションを開始して(スタート)からキャッチャーがボールを捕球するまで(ストップ)のタイムが計れます。

4.「キャッチャーの二塁送球タイム」の測定
⇒二塁盗塁時にキャッチャーが捕球して(スタート)から二塁到達(ストップ)するまでの送球のタイムが計れます。


5. 「滞空時間」の測定
⇒バットに当たって(スタート)から捕球、もしくはスタンドイン(ストップ)するまでの滞空時間も計れます。

球速が計れるだけでもスゴいのに、解説者なんかがよく使う「塁間スピード」や「キャッチャーの肩」をお手軽に数値化できるって、なんて野球バカなストップウオッチ! 一体何を考えてこんなの作ったんだろう? という大いなる疑問を、このアプリの制作にも携わり、雑誌「野球小僧」の編集兼ライターとして活躍されているキビタキビオさんにぶつけてみました。


<球界随一のITマニア・鹿取義隆>
─── こんな「マニアック」で「野球バカ」なアプリを開発しようと思ったキッカケはなんでしょうか(笑)
キビタ 『野球小僧』の携帯サイトで鹿取さんには昔から連載を持っていただいていたんです。そのおつきあいを通して、鹿取さんがストップウオッチを使ってピッチャーの球速を計っているのを教えていただいたんです。

─── ストップウオッチで? スピードガンじゃなく。
キビタ 市販されているストップウオッチにも、過去に球速が計れるものがあったんです。
でも、距離を入力したり、計算したりとかが結構めんどくさいんですね。しかもあくまでも「理論値」で、鹿取さんのイメージとは違っていたみたいなんです。それで鹿取さん、ご自分で「球速早見表」を作成されていたんです。例えば、ピッチャーがリリース(ボールを離す)してからキャッチャーが捕球するまで理論値だとおよそ140キロ=0.47秒なんですけど、実際のスピードガンで140キロと表示されるときに計ると0.43秒になる、という風に。

─── そんなことわかるんですか! 
キビタ いや、でもこれが結構難しいんです。押すタイミングがコンマ1秒ずれただけで10km以上球速変わってきちゃうんで。
私も真似してやってみたんですが最初はなかなか上手くいかなくて。「ピッチャーの投球動作のクセがつかめれば簡単だよ」って鹿取さんは言うんですけどね。

─── さすがは鹿取さん、元プロでなきゃ言えないセリフですね。
キビタ でも、早見表を見比べたりとかが大変だったので、「一発で球速が表示できたらいいのに」という鹿取さんの願望を形にすることにしたんです。それと、鹿取さんって球界随一のITマニアなんですよ。球界で誰よりも早くパソコン使ってデータ分析をされたのも鹿取さんですし、ご自身でHTML書いてホームページ作ったり、今もiPhoneをバリバリ使いこなしていて。
で、「せっかくiPhone持ち歩いてるんだからこれで計測できればいいのにな」って仰っていたのがキッカケですね。

─── 開発にあたっての苦労は?
キビタ 苦労自体はあんまりないですね。実制作も2ヵ月くらいだったと思うので。以前に「魔球小僧」っていうアプリを開発したことがあって、そのときの有能なプログラマーさんにお願いしましたから。それと、ストップウォッチ機能のアプリっていうのは他にも色々あったので、その辺を参考にしながら。

─── 先ほども仰っていましたけど、押すタイミング難しいですよね。
投げた瞬間に「スタート」を押して、キャッチャーが捕った瞬間に止めればいいんですね。
キビタ 鹿取さんにそう聞いて開発してたんですけど、完成して実際に使ってもらったら、「バッターが打った瞬間に止めた方が正しい球速だね」って言うんですよ。

─── えーーーっ。
キビタ 「えー!?捕った瞬間って言ったじゃん!」って僕も思いました(笑)。だから、そこを気をつけてお使いいただけるとありがたいです。



<イチロー・青木は“3.9秒”、古田は常時“1.9秒”、おかわり君は“6秒”オーバー>
─── 球速だけじゃなく、ランナーの塁間スピードやキャッチャーのスローイングも計測できるのも特徴的ですよね。
キビタ はい。そういう数字がわかってくると野球ももっと奥深くなると思うんです。例えば、バッターランナーが打ってから一塁に到達するまで“4秒”切れるかどうかが俊足がどうかの境目なんです。例えば、イチロー選手はメジャーでプレーし始めた当初は“3.7秒”台を数多く出していましたが、今は“3.9秒”前後。今年からメジャーに挑戦するブリュワーズの青木選手もほぼ同じくらいです。

─── そういう数字を知ってると通っぽいですね。
キビタ 他にも色々なプレイの数値から選手の特徴を把握できます。例えば、ピッチャーがランナーを背負ってクイックモーションで投げるとき、足をあげ始めてからキャッチャーミットに届くまで“1.3秒”を切れる選手がプロレベルなんですね。一番速いと言われる阪神の久保投手が最速で“1.1秒”台です。
それと、キャッチャーが盗塁されたときにキャッチングしてから二塁に届くまで“2秒”を切れるかどうかも境目です。もう引退してますけどヤクルトにいた古田さんなんかは多くのケースで“1.9秒”台でした。で、この2つの数字を知っていると、ランナーは盗塁するのに何秒必要か、ということもわかってきます。

─── あー、なるほど。1.3秒+2秒で、”3.3秒”を切れる選手なら、盗塁成功率は高い、と。なんか専門家みたいです。
キビタ 実際、プロのスカウトの方なんかも、こういう数字をはじき出してチェックしてるみたいですよ。

─── さきほど挙げた数字は、プロレベル、ということですか?
キビタ この数字をコンスタントに出せるのがプロ、ということだと思います。高校生でも、MAX値で上記の数字をはじき出す選手はたまにいるんです。でも、さすがに継続してとなると難しいですよね。でも、ほとんどの高校生は上記の数字には達していないので、1回でも出せた選手はもう当然ドラフト候補です。

─── じゃあ、これから始まる高校野球予選を見る上でも役に立ちそうですね。あともうひとつお聞きしたい点が。「打球の滞空時間」も計測できますが、そんなの計ってどうするの? って正直思ったんですけど……
キビタ あぁ、ここからも選手の特徴が見えてくるんですよ。大きくは長距離バッターかどうかっていうのがわかるんです。

─── 田淵幸一さんは滞空時間の長いホームランを打っていた、とかああいう?
キビタ そうです。滞空時間が“6秒”越えるかどうかがホームランバッターかどうかの境目ですね。去年ホームラン王を取った西武のおかわり君って、以前は滞空時間が短い、5秒台のホームランが多かったんです。でも、去年計ってみたら、5秒台のホームランもあるんですけど、6秒を越える打球が多くなっていて。40本をコンスタントに打てるバッターっていうのは滞空時間の長い打球を打てることが条件と言ってもいいかもしれません。以前中日にいたタイロン・ウッズなんかも、5秒台のホームランと6秒を越えるホームラン、両方が打てるバッターでしたね。

─── そんなことまでわかるんですね。
キビタ 例えば、高校生ってなかなかスタンドインできないじゃないですか。でも、外野フライだとしても天性の長距離打者の場合、6秒越えるんですよ。だから僕なんかも、ドラフト候補の選手がホームランバッターかどうかっていうのは、通算本数じゃなくて、打球の滞空時間を見てチェックしていますね。

─── 野球、奥が深すぎ!


<こだわりの小数点以下5ケタ表示>
─── アプリを設計する上で特にこだわったポイントはあるんですか?
キビタ やっぱり小数点以下5ケタまで計測できるようにした点ですかね。

─── 普通、ストップウオッチって小数点以下2ケタですもんね。
キビタ 鹿取さんにもここは満足していただけたみたいです。微妙な違いにこそ選手の個性が出てくるから、と。

─── 計測した結果をツイートできたりもするんですよね。
キビタ そうですね。そこもアプリならではというか、球界初のソーシャルストップウオッチでというのも売りですので。Twitterだけじゃなく、Facebookで共有したりメールで送ることも出来ますので、お子さんの練習結果を教えてもらったり、という使い方もできるんじゃないでしょうか。

─── 毎日の練習とかはなかなか見に行けないですもんね。
キビタ 球場やテレビの観戦で、指導者が毎日の練習で、あとは友達同士・家族同士で共有していただいたりと、野球のあらゆる場面を想定して開発しましたので、是非ここで紹介している使い方だけじゃなく、オリジナルの使い方を開発していただきたいです。


さすがは雑誌『野球小僧』。お話を聞いているだけで野球への愛をバシバシ感じることが出来ました。実は今回の開発裏話をお聞きしたキビタキビオさん自身、野球のプレーにまつわる様々な「時間」をストップウオッチで測る記事を『野球小僧』で連載している、通称「炎のストップウオッチャー」。そのこだわり、しかと勉強させていただきました。(オグマナオト)