納豆の主流が「小粒」になったのは、「中粒以上のものを、たたいて納豆汁にしていた」時代を経て、明治時代に水戸で収穫される早生の小粒納豆が人気となったという歴史的な経緯があるそうだ(コネタ参照)。

その一方で、「大粒納豆が好き」と言う声も、ときどき耳にする。
大粒の場合、一粒ずつ噛みしめて食べる満足感が大きいし、まさに「豆」という感じがするし、小鉢に盛って塩で食べたりするのも楽しい。
ところが、スーパーなどで売られている納豆には、大粒のものは非常に少なく、棚の隅のほうにあったり、値段も高かったりする。これは何故なのか。

一部では「小粒は輸入大豆で、大粒は国産大豆を使っているから」なんて説もあるようだが、「国産大豆」をうたっている小粒納豆は多いはず。
理由について、全国納豆協同組合連合会の担当者に聞いた。

「大粒の販売が少ない理由には諸説ありますが、いちばん大きなものは、やはり小粒ニーズが多いことだと思います」

全国納豆協同組合連合会による「納豆に関する調査」(2011年6月24日)によると、納豆の食べ方として最も多かったのは、「ご飯にかけて食べる」の計72.1%。
同調査によると、「最も好きな『豆の大きさ』」は、「小粒」が38.9%、「中粒」が24.1%という結果になり、なおかつ「女性は男性に比べやや小粒を好む傾向がある」ことや、「『極小粒』~『小粒』が55.2%を占める(男性では47.3%)」ことなどがわかったそうだ。
「大粒納豆が好き」と主張する人の声は耳にするが、割合としてはずいぶん少数派だったのか……。
「大粒納豆が少ない理由には、他に、発酵の問題もあると思います。大粒の場合、豆の芯まで均一に糸をひかせて発酵させるのが難しいんですよ」

もちろん豆が大きい分、発酵に手間もかかるし、豆自体の値段もかかる。
「大粒の場合は、均一の品質で量産するのが難しく、おまけにニーズも少ないので、メーカー側もあまり作りません。そのため市場のシェアが少ないんです」

ちなみに、近年ニーズが高まっているのは、逆に、「挽き割り」だそう。

「高齢者社会で、かみ砕くことができない人が増えていることが理由としてあります。また、『挽き割り』のほうが、表面積が広く、発酵が早いことから、『納豆菌の付着数が高い』などというふれこみから、整腸作用や納豆菌による発酵の栄養成分を積極的に取りたいという人が多くなったとも考えられます。実際には、納豆菌は時間とともにどんどん増殖するので、大きくは変わらないんですがね」

実際にはニーズは少なく、どちらかと言うと「マニア向け」のような大粒納豆。でも、均一の品質での量産が難しいと聞くと、そこもまた、グッとくるポイントだったりするかもしれない。
(田幸和歌子)
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