ところで、最近の長澤まさみが可愛い。いや、ずっと可愛いのだけど。
しかし、今は第二次全盛期を迎えていると思う。じゃあ、第一次全盛期ってのはいつなのか? やはり、“セカチュー”の頃ではないでしょうか。そして現在の脂の乗りっぷりは、恐らく『モテキ』以降に気付かされたわけで。

では『モテキ』で、あの子の一体何が良かった? それはもう、アレでしょう。「ドロンします!」という、名ゼリフ。あそこでハートをギュッと掴まれ、そこからはエンディングまでウイニング・ラン状態。
そして、そのまま今も走り続けているという。

いや、ちょっと革新的でした。時代錯誤なワードが一周回り、我々のハートに響いてしまったのだから。「流行ファッションは巡る」という常套句よろしく、言葉も時代の周期を巡っている。

ならば、たまには昔の言葉を見つめ直しましょうよ! その際、テキストとして活用したいのはこちら。ポプラ社が5月より発売している『昭和ことば辞典』(税別1,000円)が、あまりにも打ってつけなんです。
さて「昭和ことば」と聞いて、どんな言葉が思い浮かびますか? あまりに幅広いのだけど、同書には主に「昭和10~40年代の日本映画のセリフ」が収録されているらしい。

では一周回った新鮮な言葉たちを、列挙してみます。
■「大車輪で!」→「精一杯がんばります」の意味
■「今度の特売は関ヶ原だからな!」→山場の意味
■「あんたにパッションがないのやわ」→「やる気出せよ!」の意味
■「蹴っ飛ばして踏んづけたような不景気だ!」→努力に見合った稼ぎが得られない悔しさは、空にこう叫んで晴らす
どうですか。これらのセリフをビジネス時に駆使すれば、上司や取引先に「なかなか話のわかる奴」と一目置かれるはず!

他にも、まだまだあります。例えば恋愛時には、以下のようなセリフを使ってみたい。
■「きみがレモンスカッシュみたいな娘だとすると、彼女はハイボールのダブルかな」(増村保造『最高殊勲夫人』)→初々しい清純派と大人の女のたとえ
■「あの、電気消してもよろしくて?」(川島雄三『女は二度生まれる』)→まさにそのとき
■「温泉マーク」(大島渚『青春残酷物語』)→連れ込み宿、ラブホテル
■「唇を許してくれたじゃないか」(市川崑『人間模様』)→「あのときはOKだったのに、なぜ」の意味
どうですか、「奥ゆかしい人」「誠実な人」ってな感じがしませんでしょうか? 特にお酒の場で使用すれば、高確率で男女の仲になれること請け合い!

また“社交上手”になる目的で、いつかはこんなセリフを吐いてみたい。

■「平和な目をしているわね」(増村保造『巨人と玩具』)→おっとりしている人に。批判、ほめ言葉、どちらにも使える
■「吹くわね、坊やのくせに」(増村保造『氾濫』)→威勢のいい若者には、上から目線で
■「あんた、愚連隊ね」(増村保造『からっ風野郎』)→不良、チーマー
■「とんだ軽業をやってしまいまして」(清水宏『有りがたうさん』)→痴漢をやっつけたり、体を張って良い行いをしてほめられた時に
魅力的な文言ばかりである。単なる“知人”から“友人”へと距離を縮め、人間関係をスムーズにする潤滑油だな、これは。

言い難いことを相手に伝える場合は、以下のセリフをレコメンドします。
■「あなた、口が驕ってるからよ」(成瀬巳喜男『娘・妻・母』)→味に文句をつける人にはすかさずこう言おう。「口が驕っている」とはいいものを食べて舌が肥えているということ
■「美食すると体に悪い」(増村保造『くちづけ』)→腹八分目の推奨。
肥満気味な人の食べ過ぎに、遠回しなアドバイス
■「夢の中で豆腐踏んでるような顔して」(川島雄三『わが町』)→覇気のない人
■「おすがりしたいと思いまして」(溝口健二『祇園囃子』)→借金の申し込み

友人との宴席で使うと、いつしか人気者に。家庭内で駆使したら、祖父母と共通の話題ができて会話も弾みがちに。隣人とのさりげない挨拶や立ち話に使えば、「感じの良い人」と街の噂に。それが、「昭和ことば」の効用です!
「今は40~50代の方々に好評ですが、若い層やサブカル好きな人、映画の好きな人などにも使ってもらえたら嬉しいです」(同書・担当編集者)

しかし何故に「昭和ことば」は、こんなにも魅力的なのか。その辺り、同書から引用してみましょうか。
「昭和の人付き合いの流儀は、ばっさりと断罪したり、斬って捨てるような言い方はしない。
相手に恥をかかせるような言い方は野暮なのだ」
「狭い島国で肩を寄せ合って暮らしてきた先人たちが、もめごとを避け、争わずに済むよう自然に築きあげたマナーである」
なるほど。昭和のことばには、ストレスを溜め込まずスムーズに人間関係を築いていくための知恵とヒントが詰まっていた。

著者の大平一枝氏がビデオ・DVDのチェックに四年の歳月を費やし、ようやく出来上がったこの辞典。皆が活用すれば、今より随分と生きやすい社会になるはず。
では、そろそろおいとまします……。
(寺西ジャジューカ)