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書評家・杉江松恋が第149回直木賞を完全予想、本命はあの女性作家?

『ジヴェルニーの食卓』原田マハ(2回目)
それまでは恋愛小説の書き手というイメージの強かった原田は、『楽園のカンヴァス』(第147回)で大学時代からの素養があり、一時はその業界に身を置いていたという美術の世界を始めて題材として採り上げた。本書はその系譜に連なる作品であり、マティス、ドガ、セザンヌ、モネをそれぞれ物語の中心に配した連作短篇集である。
マティスを除く3名は、1878年に開催された第1回印象派展の参加者であり(マティスはその印象派に影響を受けた野獣派の画家だ)、それまでのフランス美術界の権威に叛旗を翻したメンバーである。自身の感性と理念だけを信じ、新しい時代を開こうとした芸術家たちが活き活きと物語の中を動き回る。
パトロンを獲得しなければ生きていけない踊り子に自己を投影し、彼女たちの一人に幸福な未来を与えようとして他人に理解されない努力を続けたドガ(「エトワール」)、自身にだけ見える光を追い求め、やがて家族と終の棲家の二つをも手に入れることになったモネ(表題作)など、具体的に追い求める対象は異なるが、作品を制作するという行為が生きる手段と目的のすべてであったというありようは同じだ。
原田の美術小説の美点は、題材と作品の雰囲気の一致にある。たとえば、二度とめぐってこない瞬間を写し取ることに全精力を傾けたマティスの物語「うつくしい墓」は美しく調和した構造を持っており、それ自体が「瞬間」を切り取った画家の作品のようである。ミステリー的な趣向が雑音と感じられる個所もあった『楽園のカンヴァス』に比べ、本作には添加物がない。その純粋さは前作の弱点を克服したものと評価されるだろう。その分を加味すると、本命度は★★★★☆で今回1位。

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