広島の竹原を舞台に、女子高生たちの日常や、夢を探していく姿が描かれてきた「たまゆら」シリーズ。主人公は、写真を撮るのが大好きな「ぽって」こと沢渡楓。2期で2年生へ進級した楓は、写真部を創部。先日放送された第3話では、3年生の三谷かなえが写真部最初の部員になりました。
注目の新キャラクターかなえを演じるのは、佐藤監督の「ARIA」を観て、声優を志したという茅野愛衣。2010年のデビュー後、数々のヒロインを好演してきましたが、ついに佐藤順一作品デビューを果たしたのです。
そこで、佐藤順一監督ファンかつ、茅野愛衣ファンでもある筆者は、二人の初めての対談を企画! 前後編の2回に分けて紹介します。
憧れの人に会えたような気持ち
――佐藤監督と茅野さんは、こういった形で、がっつりと話すのは初めてですか?
茅野 はい、初めてです。
佐藤 初めて会ったのは、4月のイベントのときですよね。
茅野 リハーサルの前にお会いしました。その日は、一緒に写真も撮って頂いたりして、ファンのような感じでしたね(笑)。アフレコが始まってからも、作品のことについてはお話ししますけど、こうやって改めてお話する機会は、なかなかないので。
佐藤 そうですよね。
――以前、茅野さんがパーソナリティをしているラジオ番組で、アニメ版「ARIA」が声優を目指したきっかけだと話されていましたが。実際、どのような経緯が?
茅野 私は声優になる前、別の仕事をやっていて。けっこう忙しい日々だったんです。それで、夜遅くに帰って「今日も疲れた~」ってテレビをつけたら、「ARIA」が流れていて。「なんて癒される作品なんだ~」と。アニメに興味を持ったのは、そこからですね。声優さんのことも、あまり詳しくなかったので。
佐藤 あ、そうなんですか?
――純粋に、ヒーリング系アニメと評されていた「ARIA」に惹かれたんですね。
茅野 私も人を癒すお仕事がしたくて、リラクゼーションとかの業種を選んだのですが。1対1でお客さんに施術するのではなく、たくさんの人に、こんなにも癒しを発信できることに、すごく興味が沸きました。それで、私もこういう作品を作ってみたいと思って。
佐藤 そうなんですよ、残念ながら(笑)。
茅野 どれも思い出に残っている作品ばっかりだったので、本当にビックリしました。だから、私の中での佐藤さんは、「この方がいなかったら、この業界に入ることはなかった」という存在。憧れの人に会えたような気持ちです。
――それなら、初めて会ったとき、一緒に写真も撮りますよね(笑)。
茅野 はい、打ち上げのときに(笑)。その写真、ありますよ。
――お二人とも、良い笑顔ですね。
佐藤 ホントだ。癒されてる(笑)。
茅野 私がすごく嬉しそうな顔をしてるんです。
茅野さんはどういう人か全然分からなかった
――佐藤監督は、茅野さんが「ARIA」のファンという話は、以前からご存じでしたか?
佐藤 「たまゆら」のラジオも担当してもらっているラジオディレクターの長田(宏)さんから、「今、一緒に仕事をしてる茅野さんは、『ARIA』を観て、声優を目指したって言ってますよ」と聞いて、「へ~」って。細かい事情は、今、初めて知りました。あまりいるタイプではないですよね。
――子供の頃に佐藤監督の作品を観ていて、という話はよく聞きますが。大人になってから、というのは初めて聞きました。
佐藤 ええ。
――「『ARIA』が声優になったきっかけって、本当?」とか疑ったりは?
佐藤 まあ、「他の作品でも、そういうことを言ってるんじゃないの~」って、うっすらとは(笑)。
茅野 えー(笑)。
佐藤 徐々に、そうじゃないらしいと分かりました。だからこそ、驚きですよね。本当にそういう人がいるんだって。
茅野 事務所のオーディションを受けるときも、すごく悩んだんです。簡単になれるお仕事ではないと分かっていたので。それでも、「ARIA」を好きだという気持ちに背中を押されて、こちら(アニメ業界)に来ました。
佐藤 まあ、「ARIA」は完結してしまいましたが。
茅野 でも、「たまゆら」のアフレコには、「ARIA」に出演されていた方もたくさんいらっしゃって。私にとっては、もう「わ~」って感じの現場です。
――スタッフ、キャストとも、つながりのある人は多いですね。
茅野 私が「ARIA」を好きだという話は、なぜか(業界内でも)広まっていたらしくて。アリシアさん役の大原さやかさん(「たまゆら」には塙さよみ役で出演)とかには、他の作品で共演したときに声をかけて頂きました。「『ARIA』好きなんだね! 私がアリシアって知ってた?」みたいな。
佐藤 大原さん、そんなアピールしてたんだ?
――ド直球ですね。
茅野 あ、いえ! 今のは、大原さんのお話を、私がかみ砕いて言っただけで(笑)。
――「私も出てたんだよ」みたいな内容の話だった?
茅野 そうです、そうです!
佐藤 さっきの言い方も、大原さんらしかったですけど(笑)
――確かに、言ってそうです(笑)。
嬉しさ以上に驚きの方が強かったかも
――茅野さんは、出演決定前までに「たまゆら」を観たことは?
茅野 1期(「たまゆら~hitotose~」)も普通にファンとして、テレビで観ていました。だから、お話を頂いたとき、あの「たまゆら」の世界観に私も入るんだって、不思議な感覚でしたね。
佐藤 (ニコニコと微笑みながら)ありがとうございます。
――かなえちゃんの設定やキャストは、どういった流れで決まったのですか?
佐藤 話題にもなるから、2期も新キャラクターは欲しいよねということになって。自然な形で写真部の部員になりました。茅野さんのお話は、それよりも前から聞いてはいたのですが、その段階では、茅野さんの声も知らなかったので。そのあたりも調べてみて。ぜひ、お願いしてみようと。そこから、(細かく)キャラクターを作っていった感じですね。
――佐藤監督は、以前のインタビューで、声優さんの出演しているラジオも、キャスティングの参考にすると仰ってましたが。今回も?
佐藤 今回、ラジオはちょうど見つからなかったんですよ。だから、(茅野さんの)出演している作品を観て。あとは、テレビ番組で作品紹介とかインタビューとかあるじゃないですか。それを観たと思います。
――茅野さんに対する印象は、かなえの設定にリンクしている部分はあるのですか? それとも、そこはまた別のものとして設定を?
佐藤 今回に関しては、別ですね。まず、かなえというキャラクターを組んでしまって。そこに、茅野さんがどんなアプローチをするのか。そうして重なったものがかなえというキャラクターになっている感じですね。
――茅野さんは、出演が決まってすぐに、かなえの設定画などを見たのですか?
茅野 いえ。最初は「たまゆら」への出演が決まりました、というお話だけで。どういうキャラクターなのかは、うかがってなかったんです。どんな風に「たまゆら」の世界に入れるのか、すごく楽しみでした。でも、別の作品のお仕事のときに長田さんから「茅野さんのキャラの絵、もう見たよ」って言われて。「なんで、私より先に見てるんですか~!」って(笑)。
佐藤 ははは、そうだったんですか。
茅野さんのことをキャラに盛り込むかも
茅野 初めてかなえちゃんを見たのは、4月の(進級)イベントのときでした。そのとき、キャラクターデザインをされている飯塚(晴子)さんと、お話をする機会があったんですけど。私の写真をいっぱい見て、絵を描かれたと聞いて、「え?」って。
佐藤 デザインを、キャストに当て描きする作品(笑)。
――1期の新キャラだった、三次ちひろ(CV:寿美菜子)と同じパターンですね。僕がかかわった 「コミック&イラスト クリエイターズ」というムックで、飯塚さんと「たまゆら」の特集を組んでいるのですが。その取材でも、かなえのデザインは「茅野さんリスペクトです」と仰ってました。
茅野 嬉しいですよね。ますます、頑張らなきゃ~って。本当にすごく可愛らしいですし。あと、私、口癖もかなえちゃんに似ているんです。重ね言葉が。
佐藤 「どうして、どうして」とか?
茅野 はい。ラジオやインタビューでは気を付けているんですけど。「ついつい」とか「でもでも」とか重ねる癖があって。
佐藤 本当ですか? 偶然ですね。
茅野 最初は、驚きましたし、嬉しかったです。かなえちゃんは、なかなか一歩踏み出せないところがあるんですけど。私も高校生の頃は、やりたいと思ったことを、素直にできなかったりしたことが多かったので。そこも、ちょっと近いですね。
佐藤 それも意外ですね。今日の話を聞いてると、そういう人とは、一番遠い人かと(笑)。
茅野 あまりアクティブではなかったですよ。たしかに、大きいことは「バン!」って決められたりするんですけど。小さい決断になると、優柔不断になったりして。って、こういうお話をするのも、今日が初めてですね。
――監督も、驚いてらっしゃいますね。
佐藤 ええ。以前から知っているキャストに関しては、こんな人だから、こんな芝居をしてくれるかなという感じで、役を振ってますけど。茅野さんのように初めての人は、全然知らないので。今後、いろいろ事情が分かったら、盛り込んでいくかも。
――かなえちゃんのキャラに変化が?
茅野 突然、変わるんですか?
佐藤 卒業したら、「カメラは止めます。癒しがやりたいです」って言い出す(笑)。
茅野 「私、美容系に行く!」って言うんですか? それだと、なんだか元に戻っちゃうみたい(笑)。私と逆になっちゃいます。
(丸本大輔)
後編に続く