夏真っ盛り。集中して勉強や仕事をしたい人には過酷な季節である。


ところで、四字熟語の辞典を眺めていると、暑くてダレた気持ちも引き締まりそうな「猛勉強」「努力」に関する言葉がかなりたくさんあることに驚かされる。
『漢検四字熟語辞典 第二版』より、いくつかをご紹介したい。

○懸頭刺股(けんとうしさつ) 
苦学のたとえ。/眠気をこらえて勉強に励むこと。「懸頭」は、夜勉強中、眠くなると頭を天井からさげた紐にかけ、机にうつぶせになるのを防ぐこと。「刺股」は、眠くなると自分の内股をキリで刺し、読書を続けたということ。凄絶な勉強ぶりだ。
しかも、眠いときに股を刺す系統の類義語だけでも「懸頭錐股」「懸梁刺股」「懸梁錐股」「刺股読書」などいくつもある!
○円木警枕(えんぼくけいちん)
苦労して一生懸命勉学に励むこと。/宋の司馬光が若いころ読書に熱中し、眠りすぎると枕が転がってすぐ目が覚めるように、丸木を枕にして寝て勉学に励んだという故事から。
股を刺すよりは、ライトな眠気覚まし方法。
○磨穿鉄硯(ませんてっけん)
猛烈に勉強すること。鉄でできた硯をすり減らして穴をあけるほど勉強するという意味。

○蛍雪之功(けいせつのこう)
苦労して勉学に励むこと。/夏は蛍を集めて薄い布袋に入れてその光で勉強し、冬は窓の雪明りで勉強したという故事から。
○鑿壁偸光(さくへきとうこう)
苦学のたとえ。壁に穴をあけて隣家の光をぬすんで学ぶという意味。
蛍を集めた光もなかなかだが、壁に穴をあけて隣家の光を盗んで勉強する執念は凄まじい。
○「高鳳漂麦(こうほうひょうばく)」
学問に熱心なたとえ。/後漢の高鳳は学問に励んでいるとき、妻が田に行くときから庭に干した麦を見てくれるよう頼んだ。だが、読書に熱中しすぎて、にわか雨に麦が流されたことに気付かなかったという故事から。
熱心なのは良いけど、これ、ダメじゃないの?
○愚公移山(ぐこういざん)
根気よくひたすら努力すれば、最後には必ず成功するということ。/老人愚公が二つの山の北側に住み、不便なので山を移そうとした。子や孫、その子の代までかかればできると思い、山を崩していたところ、その熱意に打たれた天帝が山を他に移してくれたという故事から。
○葦編三絶(いへんさんぜつ)書物を繰り返し読むこと。
読書や学問に熱心なたとえ。/孔子が『易経』を何度も読んで、その書を綴った紐が何度も断ち切れたという故事から。今で言うと、ボロボロに擦り切れるほど辞書を使っているとか、そんな感じか?
○孟母三遷(もうぼさんせん)
子どもの教育には環境が大切だということ。/孟子の母は環境の悪い影響が子どもに及ぶのを避けるために、墓地の近くから市場の近く、そして学習塾の近くへと、三回転居したという故事から。元祖教育ママ?
○点滴穿石(てんてきせんせき)
わずかな力でも積み重なると非常に大きな力を発揮すること。一滴一滴の水滴も、長い間には固い石に穴をあけることができるということ。類語に「水滴穿石」。
○一竜一猪(いちりゅういっちょ)
学ぶのと学ばないのとでは、著しく賢愚の差ができることのたとえ。
○刻苦勉励(こっくべんれい)
非常に苦労して、ひたすら仕事や勉学に励むこと。類義語に「刻苦精励」「精励恪勤」「精励勤勉」「刻苦勉励」「奮励努力」など。
○困知勉行(こんちべんこう)
苦しんで学び努力して物事を実行すること。才能の劣った者でも大いに努力すべきだということ。


他に、努力に関する言葉は「一意専心」「一所懸命」「一心不乱」「臥薪嘗胆」「昼夜兼行」「不眠不休」「読書百遍」などなど……。

ちなみに、学がない人を言う「行尸走肉(こうしそうにく)」(才能も学問もなく、なんの存在価値もない人)なんて言葉もある。

「頑張っている」つもりでも、こうした言葉を見ると、自分の努力なんてまだまだって気がしてきませんか?
(田幸和歌子)
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