(この地球にいる)60億人のうち59億9千万人に嫌われても、1千万人と愛しあえたらもう十分 夢みたいでしょ

2月3日放送「失恋ショコラティエ」第4話(CX)で、爽太(松本潤)のライバル・ショコラティエ六道(佐藤隆太)が語った、ショコラティエとしての信条を表したセリフです。1話レビューはこちら

その後、59億9千人に嫌われることよりも、「自分自身のビジョンが消えてしまうことのほうが怖い」「どんなものがつくりたいかわからなくなって何もできなくなることが怖い」と続きます。


かっこいい。
六道、おねえキャラで、クネクネしているけれど、言うことはクネクネしてない。強固。
いや、そもそも、おねえという独自な生き方を選んでいること自体、強くてかっこいいんですよね。

爽太は六道に恋はできないけれど(それが六道には残念なところ)、「君臨している。だけど孤独じゃない。
媚びてない。でも愛を売ってる」と尊敬の念を抱きます。

さらに、ドラマ後半、爽太のお父さん(竹中直人)が、昔は「わかるひとだけわかってくれたらいい」なんて言っていたらすぐにつぶれてしまうところだったが、今は、たったひとりに死ぬほど愛してもらえたら、ちゃんと結果が出る時代だと、六道と似たようなことを言います。
人気女優が爽太のお店のことをブログに書いたことで、人気が上昇したのです。
ネットの時代、口コミの力を強大にしたわけですね。

お父さんもかっこいい考え方をしていて、爽太が六道と年齢が10歳離れていることを話すと「年は関係ないだろう」とチクリ。


爽太は、10歳も年上なら負けても仕方ないと安心したかったのかもしれない自分の弱さを反省します。
「その時点で勝負に負けているってことじゃないか」と。

こういうやりとりを見ていると、「失恋ショコラティエ」、文字通り、ラブストーリーですが、実のところ、恋にコーディングされた中に、硬派な人生ドラマが入っているなあと思えてしまいます。

「60億人うち59億9千万人に嫌われても、1千万人と愛しあえたら」という考え方は、ショコラティエとしての仕事の心得なだけでなく、テレビドラマを作る仕事にも当てはめられそうですね。

第4話まで来ても、爽太は相変わらず、人妻サエコ(石原さとみ)に振り回されています。
今回は、友達のプレゼントの買い物につきあうことになって、ドキドキの連続。
大胆、店内キスの妄想までする始末。
余談ですが、このときのマツジュンの首筋のほくろが色っぽい。なんでこのドラマ、ほくろが目立つのだろう。

話を戻しまして、爽太が、サエコの一挙一動にいちいち深読みをしているところがユーモラス。
松本潤は、王子様っぽい白マツジュン、悪な魅力の黒マツジュンのほか、恋愛慣れしてなくてとっちらかった面白マツジュンもこのドラマで演じています。

そこはたいてい、白爽太の見た目にずっこけナレーションがかぶるというパターンですが、このイントネーションと、白マツジュンとのギャップがいいのです。


結局、サエコと爽太は両思いなのだけれど、
お互いが、素直になれず、ヘンな戦略を駆使し合うものだから、一向に関係が進展しません。
女子としては、爽太のショップの店員で爽太に密かに思いを寄せる薫子(水川あさみ)のように「サエコなんてみるからにえげつない女だよ」と思っていますから、関係が進展しないで結構なんですが。
だって、いくら冷たいとはいっても夫がいる身ですから。

「失恋ショコラティエ」の旨味は、メインのふたりが、お互い好意をもっているにも関わらず、別にパートナーがいることです。
サエコには夫、爽太は爽太で、薫子曰く「ほかの女の子としっかりやることやっちゃってるの」。
チョコレートで言えば、わさびチョコみたいな感じでしょうか。
へんな取り合わせなんです。

サエコとの買い物デートで、サエコのお色気攻撃(いつもはヒールの低い靴でかわいさをアピールしていたが、今回は、ヒールの高い靴で顔と顔が急接近するように持ち込んだり、腕を組んで胸を押し付けたり。うわうわ。すごい)に負けそうになりながら、「家来る?」という誘いにはかたくなに断って、がっくりしてやって来た先は、セフレ・エレナ(水原希子)の家。そして・・・。

なんなんだろー、この人たち。
あとで、サエコとつきあえたとして、この関係をサエコが知ったら、ふたりの関係に確実にマイナスポイントだと思いますよー。

エレナはセックスに関しては奔放だけれど、本当に好きな人には、驚くほど純情です。
セックスと恋の感情はベツモノっていう考え方がちゃんとドラマで描かれているのは、案外新鮮かもしれません。
「東京ラブストーリー」は、互いの関係性がもう少し湿っていましたが、「失恋ショコラティエ」の爽太とエレナは、挨拶代わりのようにサヴァサヴァです。

で、そんなサヴァサヴァ関係を続けながら、
爽太はサエコを思い続け、サエコが喜ぶチョコレートを作ることに情念を注ぎます。

彼にとって、サエコとの痛い恋は、仕事のモチベーションになっています。
サエコに振り回されるたびに、爽太は新作チョコのインスピレーションが湧くのです。
「傷つけてくれていいよ
もっともっと苦しめてくれていい」
と完全にドMな爽太。
「あなたがおれをショコラティエにしてくれたんだ」
完全に強い思い込み。

もし身近にこういうヒトがいたら、こう思うことで、仕事に打ち込む集中力がアップするのでしょうから、オリヴィエ(溝端淳平)のようにあたたかく見守ってあげましょう。

サエコとのやりとりが「楽しい」とも言っている爽太。
簡単に手に入る恋なんてつまらない。
ずっと大好きなヒトのことを思って、ハートをギュウギュウ絞って、その結果、平凡な恋とは違う、スペシャルな恋の事件を起こしたい。そうなることが自分の想いの強さの表れなのだ、と思いたいのです。なんかわかる気がします。遠い目・・・。

恋をしたら、みんな、こんな気持ちになるでしょう。
ただ「失恋ショコラティエ」は、意外と危険な物語です。
恋だけでもない、仕事だけでもない。創作と恋における、手に余るほどの大きい欲望を描いていて、そのドロドロは、ちょっと毒に近い。

4話で爽太は、六道のショップに偵察に行き、いちじくの入ったボンボンショコラを食べます。
アダムとイブが禁断の果実を食べて、羞恥心を獲得した時に裸を隠したのが、いちじくの葉っぱです。
禁断の世界に苦悩することは、人間の成長の一歩なのでしょうか。(木俣冬)

第一話はコチラ
第五話へ