歴史小説と時代小説ってどう違うんだろうか?アマゾンの分類では歴史・時代小説となっているし、ネット上でもこれが正解という回答が見られない。

そこでこっそりと、フリーの文芸編集者・小手平走歌さんに話を伺ってみました。

「10年前くらいは明確に分かれていたんですよ。時代小説、歴史小説、大河小説と本の帯に必ずといっていいほど明記されていました」

ちなみに大河小説とは何代にも渡って、徳川家康、秀忠、家光と何代に渡って描かれる小説のことだそう。最近ではほとんど使われないジャンルだといいます。
「簡単に言うと、時代劇が時代小説です。今では変わってきていますが当初は大河ドラマも大河小説とイコールでした」

そうすると東山の金さんとか銭形平次とか鬼平犯科帳等が時代小説なんですね。つまり架空の人物を描いたものが時代小説なんでしょうか?
「いいえ、東山の金さんや鬼平犯科帳の主人公は実在しています。
史実に基づいているものが歴史小説で、架空の人物を創出して史実に基づかないのが時代小説ですが、時代小説でも実在の人物が出てくる場合もあります」

なんだかとっても曖昧ですが、たとえば時代小説で代表的な作家さんといえば、山本周五郎や藤沢周平、歴史小説では、司馬遼太郎が代表的です。数十年前にはどちらも区分けがはっきりしていましたが、編集さんでも現在でははっきりとした線引きができないよう。では分ける基準は何でしょうか?
「歴史小説といえば歴史的事実人物を、時代小説といえば架空の人物を描くのが基本ですが、歴史小説でも全員100%実在の人物で描かれているわけではないので、そういう意味ではフィクションの割合がどれくらいか分かれ目だとも言えます」

フィクションが多ければ、時代小説というわけですね。では歴史小説と時代小説では読み手が多いのはどちらなのでしょう?
「売れ行きでいえば、文庫描き下ろしの時代小説が売れています。それと一緒に歴史小説もジワリジワリと売れてきている。読者は時代小説か歴史小説かなんて意識していないでしょう。
編集側では帯にどちらかを書かなくても表紙を見ればなんとなくわかるように作っているので、読者も表紙を見て雰囲気で選んでいると思います」

表紙で判断ということですが、これも素人には難しいですね。現在はどちらも明確にわけられないということですが、当初はなぜ分けていたのでしょうか?
「歴史小説、時代小説という区分けも特徴づけるために作られたジャンルの可能性があります。音楽でもロックの中で、いろんな名前が増えたのと同じように、販売のために新しいジャンルを作るために付けたのだと思います」

どちらにしろ面白ければ、それでいいのが小説。ジャンルは関係ないっていうことでお後がよろしいようで。
(カシハラ@姐御)