「お前……あの小山内先生の娘か!」
11日から始まった新ドラマ「アリスの棘」(TBS系、毎週金曜22時)。主人公・水野明日美(上野樹里)は医療ミスで亡くなった父のかたきを討つべく、名前を変え、新人医師として大学病院に潜り込む。復讐のターゲットを定めると、「不思議の国のアリス」になぞらえた予告状を送り、追い詰める。かと思うと、あっさり復讐であることを告げてしまう。
冒頭のやりとりが登場するのは、第一話スタートからわずか15分足らず。
最初のターゲットである蛭子雅人(六平直政)相手に、選手宣誓のごとく、復讐中であることを宣言する。
しかも、蛭子が「なんでもします」と懇願すると、殺害するのをやめる。
明日美ちゃん、けっこう手の内を明かしちゃってるけど、口封じしなくて大丈夫!?
大胆かつ不敵。上野樹里演じる主役に新たな女性像を見た。その女子力の正体をひもといていきたい。
明日美の次なる復讐のターゲットに選ばれたのは消化器外科の講師、伊達理沙(藤原紀香)。
明日美は「水をやると、煙が出るフラワーボックス」を上司の名前で贈るなど、やや回りくどい嫌がらせを展開。かと思うと、正々堂々と伊達のデータ改ざんをバラして見せたりもする。伊達の部屋に侵入したのを婚約者に見つかり、伊達が暴言を吐く姿の動画を見せる。準備の良さもさることながら、説得できると信じて疑ってない姿に胸を衝かれる。
私はひどいことをされた。
よって、復讐は正しい。
事実をつきつければ、
敵は反省し、
善意の第三者は協力してくれる。
そう信じこんでいるように見えるのだ。しかも、動画を見せる明日美の表情はいくばくかの媚を含む。
第二話では、明日美の正体を知る新聞記者・西門(オダギリジョー)が現れ、「名前代えてまでこの病院で、君は一体なにをするつもりなんだ」と問いただす。明日美は「勝手な妄想はやめてよ」と相手にしないが、西門が「15年前のことを謝らせてほしい」とかきくどくと、「だったら、私のことは黙っててそれしかあなたにできることはない」と告げる。威風堂々の“復讐なう”宣言。すがすがしいほどに正直だ。
「気づいてたよ、最初から。君も覚えてるでしょ、俺のこと」と臆面もなく言ってのける、西門のイケメンぶりにも圧倒される。ナンパか、これはナンパなのか。西門は小山内教授が急逝した際、薬剤を横領していたという情報をつかみ、大々的なスキャンダル記事として取り上げた過去がある。だからこその謝罪なのだが、明日美にすげなく扱われると「かわいくねえな」ともらす。
さて、明日美の復讐は着々と進む。次なるターゲットは、伊達の指導医だった千原淳一(田中直樹)。伊達は水野に麻酔を打たれて意識を失う直前、「悪いのは千原よ!」と訴えていた。蛭子が伊達を告発し、伊達が千原を告発する。このドラマでは毎回、「アイツが悪い!」のバトンが次々と手渡されていく。
伊達は患者のデータを改ざんしていたことを告発された挙句、明日美によって腹に「T.OSANAI」とタトゥーを刻まれ、放逐される。劇中で明確な解説はないが、「患者は名もなきマウスではない」というメッセージが込められているらしい。せっかくだから、女子力も下げとくか♪という女同士ならではの残忍さもにじむ。
一方、千原は溺愛する娘を誘拐され、動揺が高じてVIP患者の手術に失敗。また、謎の脅迫者(正体はもちろん、明日美)に脅されるままに、VIP患者に暴言をぶつけ、病院にいられなくなる。一通り復讐を終えると、明日美は正体を明かし、「医者をやめないと、あなたの娘がいじめられることになるわよ」と脅す。
今夜はいよいよ第三話。聖林大学付属病院の顧問弁護士を務める日向誠(尾美としのり)が復讐のターゲットに浮上する。今度はどんな復讐が行われるのか。愛妻家のやり手弁護士という設定から考えると、そろそろ嫁ネタが登場しそうだがどうだろう。そう来るか! と度肝を抜かれる準備はできてる。
(島影真奈美)
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