近年、テレビ番組『ウルトラゾーン』(2011年~12年)の影響もあってか、ウルトラ怪獣は「キモカワイイ」ものとして、愛でられ、遊ばれている。

女性向け雑貨店などでは、ウルトラ怪獣の文具・雑貨が扱われるようになり、4月に新宿・高島屋で行われた『円谷英二 特撮の軌跡展』でも、こうした怪獣雑貨に、女性が群がっている姿が見られた。

商品化されている怪獣は、バルタン星人やダダ、ゼットン、ジャミラ、カネゴン、ピグモンなど、「キモカワイイ」系か、シュッとした「スマート系」が中心。

だが、こうしたウルトラ怪獣たちが女性にも受け入れられ、愛され、市民権を得てきている状況下で、女性には絶対に知られたくない、超みっともなく超強い怪獣もいる。
鳥型の怪獣「バードン」だ。
現在TOKYO MXで再放送中の『ウルトラマンタロウ』でも、17、18、19話(4月13、20、27日放送分)の3話にわたって登場したばかり。
通常1話完結が基本なのに、3話のボリュームになっている時点でスペシャルな存在だということはわかる。
また、宇宙人や突然変異ではなく、純粋な地球生まれの怪獣であり、「地球怪獣最強」とも言われる。
だったら、「ゼットン」のように、もう少しその名が知られていても良いはずなのに、なぜあまり語られないのか。
それは、スマートさやオシャレさのかけらもなく、愛嬌も哀愁もなく、ただただ野蛮で獰猛だからだ。

まずルックス。全体に重たそうな体型で、頬のあたりからだらしなくぶらぶらした袋が下がり、シュッとしたところがまるでない。
攻撃の仕方も粗野で、手足を乱暴に振り回してボカスカに殴る蹴る、嘴でめったざしにするなど、力任せだ。
肉食で、団地の人間でも家畜でも怪獣でも何でも食べてしまう。
毛虫の怪獣ケムジラの捕食シーンにいたっては、目玉をほじくって食べる描写があり、それを見たZAT隊員たちが「うわ、ないわ……」といった感じにドン引きしている表情がうつし出される。
それでいて、「ただ残虐なことが好き」「殺戮を楽しんでいる」といった純粋悪でもなければ、好戦的なところもなく、ただ暴れ、ただ食い散らかし、そこに「思い」は見られない。

実はバードンはウルトラマンタロウのカラータイマーをくちばしで突き破り、倒してしまううえ、助けに来たゾフィーの頭にも火炎放射し、頭に火がつくという惨めな状態にさせて殺害している。
ウルトラマン2人はかろうじて「マズそう」「堅そう」くらいの意識で食われなかったのかもしれないが、放っておいたら団地の建物や土くれくらいなら、フツウに食べてしまいそうな勢いだ。

単純な肉弾戦ならかなり上位の戦闘力がありそうだが、おそらくゼットンなどのスマートな怪獣にしてみたら、「一緒にしてほしくないのよねー」「ああいうのを怪獣だと思われると困っちゃう」感じだと思う。

せっかく女性などにも怪獣好感度(?)が上がってきている今、こうした怪獣の地位を貶めるようなバードンには、ぜひひっそりと隠れていてほしいと願ってやまない。

(田幸和歌子)