5月23日放送のTBSドラマ「アリスの棘」第7話に、再び登場した女医・伊達理沙(藤原紀香)。
ただし、刺されたのは明日美ではなく、盤台教授の息子の悠真(中村蒼)。つい先日、明日美にひどい振られ方をしたばかりなのに、身をていして彼女を守る。ナイフを突き立てられながらも、明日美が無事だということを確認し、にっこり笑う姿はやや狂気すら感じさせるほど。ボンクラ男子代表のような彼を何がそんなに突き動かしたのか。セリフをおさらいしながら探っていきたい。
■「初めてです。いえ、あの……名前を言って、あの教授の息子って言われなかったのは始めてでして」(第1話)
初対面でのやりとり。病院内で偶然話をする機会があり、「僕、盤台悠真っていいます」と自己紹介した悠真に対して、明日美が名前を名乗ると「初めてです」と嬉しそう。女子の立場からすると非常にオーソドックスなモテテクの一種。
■「いいんです。僕は僕です」
看護師の星野美羽(栗山千明)が病院内でカートから荷物をバラバラ落としてしまったとき、さっと手助けしてくれたのが悠真だった。「とんでもないです。教授に怒られます」と恐縮する美羽に「いいんです。僕は僕です」と爽やかスマイル。そりゃ、美羽ちゃんも惚れますわ。でも、「僕は僕です」の裏には、「あなたはあなたらしい医師を目指してほしいな」という明日美の励ましがあった。美羽はあくまでも悠真を“教授の息子”として、明日美は“一人の個”として扱う。その作戦の違いがのちの好意に大きく差をつけるのだ。
■「これ最高ですよ。
BBQパーティで美羽が作った焼きそばを食べての感想。「そんな! たいしたもんじゃないから」と言いながらも、美羽ちゃんガッツポーズ。なんと、罪作りな……とは思いつつも、「ホント尊敬します」はちっとも恋愛フラグではないことが、いまさらながら切ない。だいたい、その前に「水野先生から何か聞いてませんか? 何か悩み事があるとか……」と悠真は言っていたのだ。都合の悪いことは見たくないし、聞こえない。女のリアルがそこにある。
明日美はベテラン看護師・三浦直子(山本未来)が父親の死に関わっていたらしいという証拠をつかみ、問い詰める。直子にはエレベーター事故で15年間昏睡状態に陥った夫がいる。その夫を長期入院させてもらえるという約束のもとに、盤台教授のためにある薬を用意したという過去があった。スマートフォンを取り出し、「今すぐ盤台に電話する」と脅す直子に、「あなたは盤台に知らせない」と明日美は一蹴。結果、直子は過去に犯した罪を告白し始める。“知らせないで”とお願いするよりも、“あなたはそんな人ではない”と自意識に訴えかけたほうが効果的なことがあるという好例。
■「ダメ……じゃないです」(第5話)
弁護士・日向誠(尾美としのり)が医療ミスの証拠を別荘に隠し、別荘ごとを盤台教授に高値で売りつける。そのことを知った明日美はなんとか、盤台教授より先に別荘に行き、証拠を手に入れようと画策する。別荘の近くにグループ旅行にでかけ、隙を見て悠真と一緒に……という作戦だが、その“隙”がなかなか見つからない。業をにやした明日美は突然の無理チューという暴挙に出る。「今日はやめておきましょうよ。万が一、道に迷ったら大変です」「なんだか今日は変ですよ。水野先生」「今日でなきゃいけない理由があるんですか?」と抵抗していた悠真も戦意喪失。「ふたりきりで歩きたいの。それだけじゃダメ?」と言われ、「ダメ……じゃないです」と答えるのが精一杯。
■「明日美さん、僕はあなたを守れるぐらい強くなりたい。研修が終わり次第、家を出るつもりです。明日美さんも一緒に来てくれませんか」(第7話)
盤台教授の申し出で自宅に招かれるものの、食事の途中で「出て行け」と追い出された明日美。
■「明日美さんの言った言葉がどうしても本当の気持ちだとは思えないんです」(第7話)
ショックから立ち直れずにいる悠真。美羽は「あなたは明日美に利用されていたの」と告げ、明日美の正体を明かす。さらに、悠真に近づいたのは15年前の情報を手に入れたかっただけだという推理を披露。「明日美はあなたを好きだったわけじゃない」とダメ押し。それでも、悠真の心は動かない。そして、盤台教授の受賞パーティが始まり、事件が起きた。
新たな黒幕も姿を現し、復讐もいよいよクライマックス。うすぼんやりしているようでいて、案外打たれ強いボンクラぼっちゃんにはぜひ、九死に一生を得ていただきたいところですが、さて、どうなるか。
(島影真奈美)
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