海や湖などでぼんやり釣りをしているとき、「他にやることはないだろうか」と思うことがある。つまり、魚がかかるまでの時間のヒマつぶしだ。
そんなことを考えていたら、釣りをしながら楽しめる方法が意外なところから見つかった。それは……パチンコである。

釣りには、言うまでもなくエサが必要。で、そのエサには大きく2種類ある。ひとつは、針につけて魚を釣るためのエサ。もうひとつは、魚を集めるためのエサだ。
後者のことをふつう「まき餌」といい、名前の通り、まくことで魚を集めて、効率良く魚を釣れるようにする狙いがある。まき餌を使わなければ釣れないというわけではないが、使えば使っただけ効果はあるので、ぜひお勧めしたい。

さて、まき餌だが、オキアミのような生きたエサや練り餌を団子状にして投げ込むといったものではなく、今回はペレットタイプを使用することにした。魚粉をベースにつくられたもので、かなり強烈な臭いがする。ひと袋数百円で手に入るが、魚粉の臭さが苦手な人にはお勧めできない。

まき餌は、通常は手でつかんで投げるか、柄の長い小さなショベルですくって投げるのが一般的。
だがこれらの方法ではちっともおもしろくない。それよりももっと楽しくポイントに投げ入れる方法がある。それがパチンコなのだ。

よく駅前にあるパチンコではなく、ゴムで玉を飛ばすパチンコのこと。Y字型の本体にゴムをとりつけ、そのゴムに玉を乗せて、引っ張って飛ばす。筆者の子供のころはよくそれで遊んだものだが、現在はほとんど見かけなくなった。


近所のおもちゃ屋に行ってみると、辛うじてひとつ、懐かしのパチンコが数百円の値段で売っていた。いかにもおもちゃって感じのつくりをしており、試しにつかってみたら、すぐゴムが外れてしまった。何とか結び直して、海へと向かった。

選んだ場所は東京湾。平日昼間ということで、筆者以外には、真っ黒に日焼けしたおっさんが一人いただけだった。インドア派の青白い筆者と並ぶと、まぶしすぎるコントラストである。


早速、浮き仕掛けを投げ込む。すると、ぷかりぷかりとのどかに波間に揺れている姿が何とも愛らしい。とはいえ、浮きに見とれてばかりではダメ。はてさて、その下に魚はいるのやら……。

まず、手で投げ込んでみた。ペレット自体とても軽いものなので、なかなか浮きの周辺まで飛んでいかないし、コントロールも難しい(しかも、手に魚粉の臭いがついて困る)。


そこで、パチンコの出番。ペレットのサイズはパチンコの玉としてはピッタリで使いやすい。標準を合わせて、ゴムを離す。すると、「ぴょーーん」とエサが飛んで……いかずに手前にぽとんと落ちた。最初はこんなものだ。

何度か試行錯誤するうちに、パチンコを標的に向ける角度が大事なことが分かった。
やや上向きがいい。うまく飛ばすと、かなり飛距離が出る。しかも、赤い浮きが目印となって狙いが絞りやすくなる。これはなかなか集中できる。

浮きを見ながらやるので、釣りをおろそかにすることもなく、魚が釣れるまで遊べる。しかも、玉はまき餌なので、釣り自体にも貢献しているわけで、まさに一石二鳥だ。

独りで楽しむこともできるが、家族で、たとえばお父さんが釣りをして、その浮きを狙って子供たちがパチンコをするというのはどうだろうか。なかなか微笑ましい光景になるのでは。

釣りとパチンコ、意外な組み合わせだが簡単に楽しめるので、天気のいい釣り日和には釣り道具と一緒にパチンコを持っていってみてはどうか。
(羽石竜示)